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ハイポリアの勇者 ~超空想綺譚~  作者: 南乃太陽
ゼフェル

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空に瞬くエトワール

因縁の敵、ゾヴガリンとの決戦が始まった!

様々な策を使って一進一退の攻防を続けるも、ゾヴガリンはあまりにも強大だった。

その戦いの最中、ゼフェルが見出した自分の役割とは、そしてラクスが取り戻した願いの力を秘めた鎧の力とは!

クライマックスを決して見逃すな!

 外宇宙から飛来した強大なモンスターゾヴガリンを倒すべく、エクスレイドとゼフェルは手を結び、ゾヴガリンを結界内部へ誘い込むことに成功した。

 結界内部でアバターを呼び出したリヒトとゼフェル、いま、地球の命運をかけた決戦が始まる。

 


 

「……マギル・ゾノ・ハロス……」

「ゼヤッ!」

「トワァーッ!」


 早速ラクスは両拳を胸の前で合わせて両腕を斜めに広げて複数のリダブライズサークルを展開し、ゼフェルも腕を交差して左右に大きく広げてエネルギーをチャージした。


「ウゥゥ……ゼィヤァァァアアアッ‼」

「ムゥンッ! ダァァァアアアッ‼」


 スパークルカノンとアストラルバリオンが同時に放たれ、空中で光線が螺旋状に交じり合ってゾヴガリンへと伸びていく。


「……マギル・ゾッ……」


 ゾヴガリンはテレポートで合体光線を回避しようとしたが、結界の効果が発動してテレポートが出来ず、合体光線が直撃して大きく吹き飛ばされる。


『よしッ!』

出出(でだ)しは成功か』


 リヒトの提案した作戦で、始めに強烈な一撃を叩き込むというものがあった。

 ゾヴガリンはスパークルカノンを吸収しきる事が出来なかったという事を学習しているため、確実に回避に動く事が予測された。

 リヒトの読みは見事に的中し、ゾヴガリンは光線の直撃を喰らったのである。


『まあ、この程度でくたばるような奴じゃないよな』


 ソルティアの言う通り、ゾヴガリンは逆再生の映像のように起き上がって全身を震わせて奇怪な電子音を響かせる。


「……マッ……マママママギル・ゾノ・ハロス……」


 復帰したゾヴガリン目掛けてラクスは構え、ゼフェルはアストラルアックスを取り出して走り出した。


「ダァーッ‼」

「フッ! ゼェアッ‼」


 アストラルアックスの重い一撃と、ソリッドレイを纏った鋭い回し蹴りを上体を逸らして回避したゾヴガリンは、両腕から光弾を放って弾幕を張る。


「フッ!」


 ラクスが左手を胸に当てて斜め上に振り抜くと姿がラディアンスからグランサンダーへと変わり、光弾の雨霰をその身に受けながらも悠然と歩きながらゾヴガリンへと近付いていく。


「ヌゥイアッ‼」


 グランサンダーのパワーを込めた渾身の突きをゾヴガリンへ叩き込むも、多少よろけただけで有効打にはなり得なかった。


「ゼッ!」

「……マギル・ゾノ・ハロス……」

「グオッ!」


 ゾヴガリンの突きがラクスを大きく揺らし、腹を狙った二撃目で体を丸め、トドメの一撃を背中に叩き込もうとする寸前、ゼフェルのアストラルアックスがそれを阻む。


「ドゥワッ!」

「ゼヤッ!」


 アストラルアックスがゾヴガリンの腕を跳ね上げ、がら空きの胴体にラクスが腕から放つ竜巻ハンディストームを浴びせ、続け様にマグメーザーを放つも、ゾヴガリンは姿を消していた。


『テレポートしただと⁉』

『違う! 目にも留まらぬ速さで動い……ドゥオワッ!』


 ゼフェルは高速で動くゾヴガリンに吹き飛ばされ、ラクスも四方八方から光波を喰らって地面に膝をつかされる。



「テレポート出来なくなってもスピードは健在か!」

「それに耐久も上がっている……私達のスパークルカノンを喰らったからだ」


 リヒトの焦りを反映してか、精神空間内では強風と稲光が舞い踊っている。


「動きを止めねば、手出しできないぞ」


 しかしラクスの目でも捉えられない程素早く動くゾヴガリンを捉えるのは困難を極める。

 

「……いい方法を思いついた、やってみよう!」



 ラクスは膝をついたまま拳の第二関節を曲げて地面に乗せ、耳の辺りに指を置いて感覚を研ぎ澄ます。


「……マギル・ゾノ・ハロス……」


 ゾヴガリンの残像が不気味な宇宙語を残すのも気にせず、ラクスはひたすら感覚を集中させ、ついに糸口を見出した。


「ゼェッ‼」


 そのまま第三関節を曲げて地面へ衝撃を送り、こちらに向かって来ようとしたゾヴガリンの足元の地面を隆起させる。


「フッ!」

「オォッ!」


 立ち上がったゼフェルはアストラルアックスへエネルギーを送り、ラクスはそのままの体勢で自分の前に硬質の結晶体を作り出す。


「ムゥッ……トァァァァアアアアアッ‼」

「ヌィ……ゼィヤァァァアアアッ‼」


 アストラルアックスの剣閃とビートプレッシャーウェイブが怯んだゾヴガリンへ直撃するも、ゾヴガリンは両手から光の鞭を作り出して振り回してきた。


「フッ!」

「ハァッ!」


 ラクスはエーテルバーストに姿を変え、ゼフェルはアックスをダガーに変えてゾヴガリンへと近付いていく。


「フッ! ゼヤッ!」

「オオッ! イヨワッ!」


 クラッシャーエッジとダガーの斬撃を回避し、ゾヴガリンは顔面から超冷凍光線を放った。


「フオッ‼」


 ラクスは複数のパイロブレードを空中で展開すると高速で旋回させて超冷凍光線を防御し、その隙にエレキブレードを生成して、ゼフェルのアストラルダガーと刀身を交えて雷のエネルギーを分け与える。


『後ろから行くぞ!』

『了解した!』


 ラクスとゼフェルは跳躍して超冷凍光線を放ち続けるゾヴガリンの後ろに回り込むと、背中へ刃を突き立てる。


「……ママッ……マギギギギギギル……ゾノノノノ……」


 雷の刃の一撃により挙動がおかしくなったゾヴガリンは、顔を真上に向けた事で超冷凍光線が天へと向かい、天井に跳ね返って結界内部へ冷凍光弾が降り注ぐ。



「またあれだ! アレを喰らうと」

「デルゴラス! 力借りるぞ!」


 リヒトがスパークルトランサーにデルゴラスジェムを装填して力を開放し、黄金のオーラが空間を包み込んだ。



「フハッ! ゼェイヤッ‼」


 黄金のオーラを発したラクスが天へ手を翳すと、降り注ぐ冷凍光弾が一斉に静止し、ラクスが手を動かすと冷凍光弾が全てゾヴガリンへと向かって行く。


「……マギル・ゾノ・ハロス……」


 ゾヴガリンはラクスが自分へ投げつけた冷凍光弾を吸収すると、右手から巨大な光の剣を展開してこちらへ走って来た。


「ゼヤッ!」


 ラクスは両手から空刀を取り出すと、刀身にデルゴラビティを纏わせてゼフェルと共に斬りかかる。


「ムゥン!」

「ゼッ!」

「……マギル・ゾノ・ハロス……」


 神獣デルゴラスの力を宿した二刀を以てしてもゾヴガリンの光の剣を破る事は出来ず、数度打ち合っているうちに両方とも手折られ、ゼフェルは振り向きざまの斬撃に吹き飛ばされてしまう。



「滅茶苦茶な奴だ!」

「リヒト、ブリザニングだ! ブリザニングならスピードと攻撃力で奴に対抗できるかもしれない!」


 ソルティアに従ってジェムをブリザニングに変え、リヒトは猛る炎と荒れ狂う波の力をその身に宿した。



「オオオオッ! ゼイヤッ!」


 ブリザニングとなったラクスは両腕のグリッドスパークを投擲するも、ゾヴガリンは両方とも弾き返し、戻って来たグリッドスパークをランスに変えて構える。


『うぅ……そっちがそれを使うなら……俺はこいつだ!』


 ゼフェルはアストラルハルバードを生成して構え、ラクスの横に並び立つ。


『行くぞ!』

『ああ!』


 ラクスとゼフェルは長柄武器を振り回しながらゾヴガリンへと迫り、リーチの差を活かして徐々に追い詰めていく。


「ダッ! ムゥンッ!」

「ハッ! フオッ!」


 ゼフェルはハルバードの刀身にエネルギーを込め、ラクスはグリッドスパークランスを十文字槍に変形させる。


「トワァァァアアアアアアアアアアッ!」

「ゼェイラァァァアアアアアアアアッ!」


 ゼフェルが的確に斬撃を浴びせる中、ラクスは目にも留まらぬ速さで灼熱と寒冷の斬撃を矢継ぎ早に浴びせ、ゾヴガリンを翻弄する。


「ゼラァァァァアアアッ!」

「トォウワァァァアアッ!」


 両者渾身の斬撃をゾヴガリンに浴びせた後、跳躍して距離を取って各々武器を置いて準備を整える。


『アストラル……』

『オメガバニッシュ……』

『バリオォォォォォォオオオオオオオオオオオオンッ‼』

『マァイトォォォォォォオオオオオオオオオオオオッ‼』


 アストラルバリオンとオメガバニッシュマイトが手負いのゾヴガリンへと降り注ぎ、まるでガラスを引っ搔くような音を発してゾヴガリンの身体が大爆発を起こした。


「ムゥ……」

「フッ……」


 立ち込める爆炎の中、しばらく警戒を解かなかったラクスとゼフェルだが、爆炎の中から恐ろしい速度で肉薄してきた黒い影には対応する事が出来なかった。


「ギヨワァッ!」

「ドゥオワッ!」


 ゾヴガリンはそのまま空中へ向かうと、倒れた二人目掛けて光線や光弾の雨霰を浴びせかける。


「ズアアアアアアッ‼」

「グアアアアアアッ‼」

「……マギル・ゾノ・ハロス……マギル・ゾノ・ハロス……マギル・ゾノ・ハロス……マギル・ゾノ・ハロス‼」


 リヒトは今、ハッキリと理解した。

 この訳の分からない「マギル・ゾノ・ハロス」という言葉の意味を。


(マギル・ゾノ・ハロス……これは〝全生命体の抹殺〟って意味だ! そして今……ゾヴガリンは冷徹な虐殺兵器としてではなく……明確に僕達への殺意を持って攻撃してる!)

 

 どこか機械音声じみた声色に、明らかに感情が、それも激情が乗っている。


『どうやら……今までの攻撃の効果は……ただ怒らせただけらしい!』

『それにきっと……耐久も上がっている!』


 それでもなんとか攻撃の雨を掻い潜ってラクスとゼフェルは立ち上がると、ラピッドバレットとグロウエッジを放って牽制してから、もう一度武器を構える。


「マギル・ゾノ・ハロス!」


 ラクスはグリッドスパークランスにデルゴラスの力を乗せてからゼフェルにも分け与えると、二人がかりで重力波を放って空を飛び回るゾヴガリンを吹き飛ばし、ゾヴガリンは結界の壁に叩き付けられて地面を転がった。


「ゼヤッ!」


 ここがチャンスとばかりにラクスはグリッドスパークランスの刀身を炎に包み、デルゴラスの重力波でゾヴガリンを包み込んでその中へ炎を叩き込む。


「トワァーッ!」


 デルゴラスの重力波に包まれて中で蒸し焼きになっているゾヴガリンへ、ゼフェルが関節や発光体を狙ってアストラルハルバードで切りつける。


「マギル・ゾノ……ハロス‼」


 だがゾヴガリンは全身の発光体から火炎と重力波を吸収すると、顔面の発光体からそれを解き放って逆にラクスとゼフェルを吹き飛ばしてしまった。


「ギヨワッ!」

「ガァッ!」


 吹き飛ばされて地面を転がりながらも、必死で立ち上がろうとしているゼフェルのメテオシンボルが赤く染まった。


「フッ!」


 このままではまずい、メテオシンボルの色の変化は活動限界時間が近い事を示し、これを超えると融合者の魂が焼尽してしまう。

 つまりもうすぐオトハの魂が燃え尽きてしまうかもしれないのだ。


「ゼッ……オオオオオッ!」

「ムゥッ!」


 ゼフェルの制止を振り切りながらラクスはラディアンスになりながらゾヴガリンへと向かい、アストロイドボムを持ちながら、首筋目掛けて思い切り腕を振り上げる。


「ゼヤァッ!」


 首筋へアストロイドボムを叩き付けるも、ゾヴガリンはラクスの腕を掴んで吊り上げると、左腕を腹へと押し付けた。


「フッ⁉」

「マギル! ゾノ! ハロス‼」


 ゾヴガリンの腕から複数の光の剣が剣山のように伸縮し、ラクスの身体を何度も突き刺して大ダメージを負わせる。


「ギヨワアアアアアアァァァァッ! ヌアアアアアアアッ‼」


 最後に特大の刺突を喰らい、ラクスは吹き飛んで崩れ落ちてしまった。


「クオ……アア……ウウッ!」


 体を押えながらも立ち上がり、ラクスは肩で息をしつつも再び戦いの構えを取る。


『おい! 大丈夫か!』

『まだやれるよ……まだまだこの戦いは……やりかけだ!』


 ゼフェルは再びアストラルハルバードを取り、ラクスは腕をソリッドレイで包み、再びゾヴガリンへと向かって行く。


「ゼヤッ!」

「ドゥオオオオッ!」

「マギル・ゾノ・ハロス!」


 振り下ろされたアストラルハルバードをゾヴガリンは剣で弾いて突きを入れてゼフェルを吹き飛ばし、ソリッドレイで強化されたラクスの突きも高速で背後へ回り込んで回避した上で背中を蹴りつけた。


「ギヨワッ! ヌゥッ!」


 蹴り飛ばされて倒れそうになりながらラクスは指からチェインレイを放ってゾヴガリンを拘束し、ゾヴガリンは拘束から脱しようと電子音を発しながら身を捩らせる。


「オオオッ……フッ?」


 ゾヴガリンの暴れぶりに手を焼いていたラクスだが、ゼフェルがチェインレイを握って拘束を手伝い始めた。


「ムウンッ!」


 ゼフェルとラクスは頷き合うと二人して渾身の力でゾヴガリンを引っ張り、結界の反対側へ投げつけることに成功した。


『もう一発行けるか!』

『ああ、これが最後になりそうだがな!』



 リヒトは三度(みたび)デルゴラスジェムをスパークルトランサーに装填し、全身にその力を行き渡らせる。


「ソルティアァ! この状態でスパークルカノンだ!」

「わかった! 行くぞリヒトォッ!」



 ラクスは腕を斜めに広げてデルゴラスの力によって強化されたリダブライズサークルを複数個展開し、ゼフェルも腕を広げて稲妻状のエネルギーをチャージする。


『アストラル……ギガ! ショットォォォオオオッ‼』

『デルゴラスパークル! カノォォォオオオオオオン‼』


 全身から放たれる光線と、黄金のオーラを纏ったエメラルドグリーンとスカイブルーの光線が起き上がったゾヴガリンに直撃し、バリアと吸収能力を駆使してしばらく耐えていたものの、気合を入れて威力をより増した二人の光線には敵わずゾヴガリンはまたもや大爆発を起こした。


『今度こそ……頼むぞ』

『コレで終わってくれないと……』


 構えを解かず警戒していると徐々に爆炎が晴れ、焼け焦げた地面には何の影も形も無くなっていた。


『おお!』

『やったぞ!』


 勝利への歓喜はあの奇怪な電子音により一瞬で塗りつぶされた。


「マママママママママママママ」


 まるで映像の逆再生のように爆心地へ黒い粒子が集まり、ゾヴガリンの姿を形成する。


「ママママ……マギル……」


 ゾヴガリンの肩から二本の巨大な棘がせり出し、尻の辺りからは三つの刃のついた触手が伸びてそれぞれが意思のあるような挙動をする。


「ゾノ……」


 更に全身の発光体がライラック(うすむらさき)からバーミリオン(しゅいろ)に変化し、角の色も黒から銀色に変化した。


「ハロォォォォォオオオオオスッ‼」


 ゾヴガリンの肩の棘から光弾が放たれてラクスとゼフェルへ降り注ぎ、更に光の刃を備えた触手が二人を何度も斬りつける。


「ギヨワッ!」

「グオオオッ!」


 ゾヴガリンは止まらず、顔面の発光体からオレンジ色のオーラを纏った超冷凍光線を放ち、ラクスは咄嗟にハニカムシャッターでこれを防御する。

 

『話が違う! あいつは最終段階じゃなかったのか!』

『一度体を爆散させることで……自己進化のリミッターを外したらしい! いわばこれは究極段階だ!』


 ゾヴガリンは全身の発光体からも光弾を放ち、ハニカムシャッターが徐々にひび割れていく。


『クソッ……おおっ!』


 ラクスはまだ残っていたデルゴラスの力でハニカムシャッターを補強修復するが、所詮付け焼刃に過ぎず、依然ピンチなのは変わりない。


『もう……持たない!』


 ゼフェルはゾヴガリンとラクスを何度か見た後、何か意を決したようにアストラルハルバードを持ってラクスへとテレパシーを飛ばした。


『ソルティア、君と出会ったのは……サバイバル実技のペアになった事が切っ掛けだったよな』

『何を言って……』

『あの時から俺は君の事を一目置いていた、こうなった俺を最後まで友として見捨てなかった君に……唯々感謝してる。そしてタツガミ・リヒト、君は時と体力と運命の許す限り、ソルティアと共にいてくれ。彼女には君が必要だ……そして』


 ゼフェルは赤くなったメテオシンボルから一つの光をラクスに譲渡して続けた。


『オトハに全てを話して幸せにしてやれ』



 ラクスの精神空間内に人型の光が発生し、徐々にオトハの姿となってリヒトの腕に収まる。


「オトハ⁉ ……まさか!」


 ゼフェルの意図を理解したリヒトは、必死の形相を浮かべて止めに掛かった。


「やめろ! 一人で突っ込む気だろ!」

「今際の際のつもりか! 最後までみんなで戦うんだろ!」



 リヒトとソルティアの制止にも関わらず、ゼフェルはアバターを捨ててセレストブルーの光の炎を纏った巨大な人型に変化していく。


『俺が……時間を稼ぐ!』


 ゼフェルはアストラルハルバードが変化した光の槍を構えると、跳躍してゾヴガリンに斬りかかる。


「ウオオオオオオオアアアアアアアアアッ‼」


 ゾヴガリンの攻撃が一瞬止むも、ラクスから標的を変えて生身のゼフェルへ全て降り注ぐ。


『やめろ! やめてくれゼフェル!』

『いいか! じきにオトハは目覚め、最も会いたかった人間と再会する! そしたらオトハの願いが叶ったことになる! そうなれば……綺羅星インテリジェンススターの力が復活するだろう?』


 ゼフェルはラクスが持つ失われた最強の力に賭けたのだ、自分の命を代償にして。


『で……でも! そしたらヤツの敵討ちにはならないだろ!』

『俺が奴の撃破の切っ掛けを作るんだ……これ以上に満足な事があるか!』


 ゾヴガリンの苛烈な攻撃を受け続けたゼフェルの身体が徐々に星雲状になって分解を始め、光の槍もヒビが入っていく。


『ソルティア! リヒト! 地球と宇宙の未来を掴め!』


 しぶとく耐え続けたゼフェルの身体を触手が貫き、ついに全身の力を失って膝をついて倒れ、ゼフェルの身体は大爆発を起こした。


「頼ん……だぞ……」


 爆炎の中で、そんな声を聞いた気がした。


 

「ゼフェルゥゥゥゥゥウウウウウウッ‼ うわあああああっ!」


 精神空間内でソルティアの慟哭が響き、リヒトは悲痛に歯を食いしばってオトハを抱きしめたまま拳を握り締める。


「……う」

「オトハ?」

「リ……ヒト?」


 光に包まれた空間で、オトハはリヒトの顔を認識した。


「オトハ!」

「リヒト……リヒトだ……やっと……会えた」

「ああ、僕だ……僕だよ! その、今までごめん」

「ゼフェルが……約束を守ってくれたんだ……ありがとう……ゼフェル……」


 オトハが微笑んだ瞬間、腰のジェムホルダーから眩い光が発せられ、リヒトはそこから強烈な光を放つスパークルジェムを取り出す。


「エトワールが……使える!」

「ゼフェルが繋いでくれたんだ、願いの力を!」


 リヒトはエトワールジェムを握り締めると、抱き締めたオトハの方を見て言った。


「そこで見ててくれないか? 僕が……いや、僕達が何をしていたのかを」

「わかった、私信じてるから……勝って」

「ああ……行くぞソルティア!」

「ゼフェルの光を、私達が繋ぐんだ!」


 リヒトは頷くとエトワールジェムを高く掲げ、その輝きにより精神空間が小宇宙を思わせる景色に変化する。


「無限に続く宇宙の闇、それは歩みの可能性」

 

 エトワールジェムを装填し、リヒトは詠唱を続ける。


「歩みの導となるものは、天に瞬く星の光!」


 レバーを押し込んで右手を左拳に翳すと、リヒトの左腕に手甲型強化装置のエトワールレットが出現する。


「光と闇を繋ぐのは、希望と祈りと願いの力!」


 エトワールレットのスイッチを押すと、小宇宙に瞬く星がリヒトの左腕に集まってくる。


「星を我が手に! エトワァァァァアアアアルッ‼」



 

 ゼフェルの爆散により標的の一つを仕留めたと満足していたゾヴガリンだが、突如何かが爆炎を吹き飛ばし、強烈な光と共にそれが一点に収束しているのを認めた。


「?」


 ゾヴガリンが光の方を振り返ると、そこに立っていたのは装甲を全身に纏ったラクスであった。


「ホォォォ……」


 紫紺をベースとした偏光色に白金のラインが走っている、そんな宇宙そのものを思わせる美しい鎧。

 これぞラクスが取り戻した最強の力、エトワールギアである。


「ゾアッ!」


 ラクスは気合を入れるとその場から姿を消し、ゾヴガリンを吹き飛ばしながら結界の反対側に再出現して構えを取る。


「マギル・ゾノ・ハロス‼」


 ゾヴガリンは起き上がって先程のように全身の発光体から光弾や光線を一斉発射するも、ラクスは普段の二倍近い大きさのアストロイドボムを分裂させて弾幕にし、なんとゾヴガリンの攻撃を全て押し返してしまった。


「!」

「フオオオオオオッ!」


 倒れたゾヴガリンへラクスは肉薄すると、ゼロ距離でビートプレッシャーウェイブを放って吹き飛ばし、続け様にスクリューバーンを放って結界の天井まで打ち上げる。


「マママママ……」


 ゾヴガリンが地面に叩き付けられるタイミングを見計らってラクスがスパークルシュートを放つも、咄嗟にゾヴガリンが反応して光線を吸収したため、大ダメージを負うのは免れる。


「マギル! ゾノ! ハロォスッ‼」


 起き上がったゾヴガリンは全身のエネルギーを顔の発光体に移し、超冷凍光線をラクスに向けて放った。


「エトワールアイギス!」


 ラクスが右腕を上げると円形の盾が出現し、ゾヴガリンの超冷凍光線をいともたやすく防いでしまう。

 

「フッ! ゼヤァッ‼」


 超冷凍光線をエトワールアイギスで受け止めながら、ラクスは右腕にオメガバニッシュマイトを装着し、そこから五大元素の力が籠められたミサイルを雨霰の如く射出した。


「ズオオオオオオオオッ‼」


 全身にあらゆる攻撃を喰らったゾヴガリンは超冷凍光線の射出を止め、全身を何層ものシールドで覆って完全防御の姿勢に入る。



「フン、守りに入ったか、そうは行かねぇぞ!」


 リヒトはエトワールアイギスのカバーを開くと、ラディアンス、ブリザニング、グランサンダー、エーテルバーストの四つのジェムを装填し、カバーを閉じてジェム同士を共鳴させた。


「スパークルバスタァァアアアッ‼」



 メテオシンボルから出た四つの小さい光がエトワールアイギスに宿り、ラクスは溜めの姿勢を取ってからエトワールアイギスを掲げると、盾全体から螺旋状の光線が放たれ、ゾヴガリンのシールドを全てぶち破って光線が直撃する。


「マギギギギギギギギギギギギギギギ!」


 もはや形勢は逆転している、ラクスは最後の仕上げに掛かると決意した。



「決めよう、ソルティア」

「ああ……我らが友の為に!」

「この一撃は、ゼフェルに捧げる!」


 リヒトはエトワールレットにコメットジェムを装填し、スイッチを押して力を開放する。



「ゼッ!」


 ラクスは左腕を天に掲げて掌をスパークさせると、左腕を腰溜めに、右腕を水平に伸ばして周囲のエネルギーを全身で吸収する。


「ファイナル!」

「コメットォッ!」


 両手をTの字に組みながら、リヒトとソルティアの声が重なる。

 

「|ノヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!《ノヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!》」


 ラクスの腕全体から眩い光の奔流が放たれ、ゾヴガリンは先程以上にシールドを重ねて防御するも、ファイナルコメットノヴァはシールドを突き破るどころか体を貫通してしまった。


「アビル……キ……ドーフ……」

 

 今度こそ大爆発を起こし、宇宙の彼方から飛来した過去の亡霊はついに完全消滅したのだった。




 多大なる代償を払った苦い勝利の余韻に浸っていると、徐々に結界が消え始め、それを見たラクスは消えた結界の隙間から飛び去り、空中で分離してリヒトとオトハの姿に戻る。


「……オトハ、立てる?」

「うん、大丈夫……ゼフェルが体を治してくれたから」

「そっか、その……」

「うん、全部見させてもらったよ。リヒトはずっとこうして秘かに戦っていてくれたんだ……」


 オトハがそう言って微笑んだことで、今までの全てが報われたような気がして、リヒトは下を向いて小さく笑う。


「おぉい! リヒト!」


 探査たちの仲間達がリヒトの元へ一斉に集まり、オトハは少し困惑する。


「彼女は?」

「えっと……初めまして、シノザキ・オトハです」

「そうか……ではゼフェルはもう……」

「はい、彼は逝ってしまいました。オトハを託して」

 

 全員悔しさと悲しみが入り混じった表情を浮かべ、アイリスが一息おいて告げた。


「結界内部に残ったゼフェルの痕跡を回収するぞ。帰ったら全員正装に着替えて〝戦士の閨〟に向かう……いいな?」

「了解……」



 

 すっかり夜も更けた頃、アーブトピアの閑静な場所に、正装に着替えた探査隊とオトハが集合していた。

 ここは〝戦士の閨〟アーブにおいて、平和のために戦って命を散らした者達が眠る場所である。


「墓石を」


 最上級の魔鉱石を削り出して作られた石板が、イーライによって文字が刻み込まれていく。


「今日ここに眠るは、遥か彼方の星からやって来た戦士である」


 墓石と共に霧散しかけたゼフェルの粒子が入った筒と、ブロンズ化したアストラルリアライザーが殿堂の中へ納められる。


「彼は我々の仲間の愛する者の命を救い、自らの命を犠牲にこの星、そしてこの宇宙を救った」


 箱を納めたオトハが列に戻ってから、全員が休めの姿勢から直立になり、胸に拳を当てる。


「勇敢なる戦士の魂に最上級の敬意を払い、黙祷!」


 三分間の黙祷の後、ゼフェルの葬送は完了した。


「すみません隊長、少し……オトハと二人にしてくれませんか?」

「……わかった、先に皆とケイで待っているぞ」

「ありがとうございます」


 皆が去ったのを見て、リヒトはオトハの方を向く。


「どこから話すべきかな?」

「いつからこんな仕事やってたの?」

「……三年前」

「二十一から⁉」


 大声を出したオトハは反射的に口を塞いだ。


「スカウトされたんだ、ウィルマース財団から」

「ウィルマース財団……あの世界的大企業から……」

「宇宙飛行士にはなれないから少し迷ったけど、地球の危機って聞いたら放っておけなくてさ」

「その中でリヒトは、ソルティア……さんと会ったんだね」


 リヒトの左目がエメラルドグリーンに輝き、リヒトの口から美しい女声がする。


「こうして話すのは初めてかな、改めて自己紹介を。私はソルティア、君達地球人類がベテルギウスと呼ぶ星からやって来た星の戦士だ。一方的にだが、私は君の事を知っている……婚約者を戦いに巻き込んでしまい、申し訳ないと思っていた」


 オトハは伏せ気味に笑うと、首を振ってソルティアに言った。


「リヒトなら私が止めても、多分お義父さんお義母さんが止めても行ってたと思う、そういう人だし……そういう所に惹かれたから」


 ソルティアはニヤリと笑ってからリヒトに体を返還し、リヒトは照れ臭そうに頬を掻く。


「まあその……心配かけてごめんな」

「もういいよ、そのかわり、今度はすぐ傍で応援させて」


 湿った空気の中、しばらく過去を振り返っての思い出話をしていると、ゼフェルの話題になった。


「ゼフェル……あいつとはもっと話しておきたかったな」

『私もそう思うよ、もっと友として出来ることはなかったか……悔やむばかりだ。出来ることならまた共に戦いたい』

「……できるよ」

「ん?」


 オトハはゼフェルの遺品が収められた殿堂の扉に手を触れ、少し寂しさを湛えた笑みを浮かべて続ける。


「ゼフェルは……まだ死んでない、そしてきっと帰ってくる。そんな気がするんだ」

「帰ってくる?」

「私には分かるよ、短い間だけど一緒に戦ったんだし」


 リヒトは右腕を見ながら深く息を吐き、星空を仰いだ。


「帰ってくるそれまでは……僕達がゼフェルの分まで頑張らないとな」


 リヒトの決意に応えるように、空では(エトワール)が瞬いていた。




To Be Continued.

手にした最強の力を取り戻し、恋人も戻って来た、しかし苦い結果となってしまいました。

リヒトはきっと、ゼフェルに恥じない戦いをこれからも続けていくでしょう。

さて、ゼフェル編はこれにて終了、来週から次章が幕を開けます。

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では来週、新しい章でお会いしましょう!

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