激突ラクスVSゼフェル
ゼフェルの融合相手はオトハだった。
怒りに震えるリヒトは、ゼフェルの目的を聞き出そうと試みるも、ゼフェルは頑なに喋ろうとしない。
そのまま戦いに突入するラクスとゼフェル、その先にあるものは果たして?
その日のエクスレイドは全隊を挙げ、アーブ王国全てをひっくり返すかのような大規模な捜索が行われた。
それもたった一人の人間を探す為だけに。
「報告上がりました、イータブロックで姿が確認されたと」
「ありがとうウェンディ、イータブロック……確か児童養護施設があった場所だな。そこで何をしていたかも報告はあるか?」
「何か箱のようなものを持ち、山の中に入っていく姿が目撃されています」
箱、それはきっとゼフェルが使っていたモンスターの怨念を納める為に使っていたものだろう。
「青いルミナスはモンスターの怨念を集めてるのかな?」
「だとしたら目当てはズオーギランの怨念か」
集め損ねたメガボースの代わりとなる怨念を集めて回っているのだろうか。
「ん~、だいたいよォ、なぁんで青いルミナスはモンスターの怨念を集めて回ってんだ?」
「黒魔術的な観点から見ますと……何かを召喚、あるいは引き寄せる為でしょうか」
「そんな事、今はどうでもいい」
これまでずっと黙って情報を整理していたリヒトが平坦な口調で告げた。
「奴の目的は奴に直接聞けばいい、今大事なのは次どこに現れるか予測する事」
部屋の中によく響く極めて平坦で冷たい声色に、皆の顔が曇る。
「そして……何故彼女に憑依したかも聞き出さなくてはね」
リヒトの冷たい声色に、胸に秘めた怒りの熱がほんの少し顔を出した。
「すまない、もう少し情報をくれ、そしたら絞り込めそうだから」
そう言ってリヒトは顔の下半分を手で覆い、頬骨を親指で押し込みながら机の上の地図と睨み合いを再開する。
「あんなリヒト……初めて見た」
「無理もありませんよ。唯一の心残りにして、最も危険から遠ざけたい存在を戦いの渦へと引き摺られてしまったんですから」
「たしか元々リヒトってよ、あっちの世界じゃ地球防衛に関わってたんだろ? 婚約者相手だったら尚更そんな事明かしたくねぇし、ピンポイントで戦いに巻き込んだ青いルミナスには相当キレてるだろうな」
どんな時も余裕を崩さないで、時として飄々としている様子すら見せるリヒトが、行き過ぎた怒りを抱くとこうなるのかと、半年間共に過ごしていた探査隊は静かなショックを受けていた。
「隊長、ここ一年に渡ってのモンスターの詳細な出現記録って出せますか?」
「記録……分かった、少し待っていていくれ」
アイリスはクォーツシーバーでデータベースにアクセスし、パターンロックを解いてから一時的にアクセス権限をリヒトに譲渡する。
「これで見れるはずだ」
「どうも」
リヒトはクォーツシーバーのホログラムのデータを整理してアーブ王国の地図にマッピングすると、今自分が見ている地図と重ね合わせた。
「わかった」
「え?」
「次に奴がどこに出るかわかった」
クォーツシーバーのホログラムをスワイプすると、二つの地図がクォーツモニターに表示される。
「右はここ一年、アーブ王国内でモンスターが撃破された場所の地図、んで左が奴が現れた場所。重ねると……」
「おお!」
「ほぼ一致してる……けどこれだけじゃどこに出るかは分からないよ」
「いいや分かるよ、ここだ」
リヒトが指したのは、アーブの僻地にある森が広がる農村だった。
「ここは!」
「そう、以前バイオクローが出た所だよ。ここなら大量の怨念を仕込むことが出来る」
「ここにオトハさんは……」
ウェンディが漏らした一言に、リヒトが殺意にも似た鋭い視線を浴びせる。
「ごめんなさいリヒトさん、青いルミナスが現れる可能性が高いと」
「ごめん、君は悪くないよウェンディ。ちょっと頭を冷やすべきだな」
リヒトはぎこちなく笑いながらこめかみを親指でぐりぐりと押し、深呼吸をして皆の方へ向き直る。
「ここに急ぎましょう、奴を待ち伏せるんです」
「少し待て……キャプテン・バーンズ」
クォーツモニターにバーンズとラウンドナイツの一団が映り、アイリスはリヒトが青いルミナスの出現場所を予想した事を伝えた。
『そうですか、バイオクロー事件の……ベースの位置を考えるとラウンドナイツとは現地合流が望ましいでしょう』
「派遣してくれるんですか!」
割って入ったリヒトにバーンズは大きく頷いて続ける。
『ああ、我々としても青いルミナスは脅威になり得ると考えている、どんな対策を取るにしても早い所手を打っておかなくてはならないと思ってね。それに事情を聞いていると、あながち他人事とも思えなくてね』
バーンズの快い協力に、リヒトの冷たい決意に温かいものが宿る。
『必ず婚約者を取り戻せるよう、心から祈っているぞ』
リヒトは襟を正して指貫グローブを直し、探査隊の方を向く。
「行こう、僕の戦いに協力してくれるかい?」
至極当然といった風に全員が頷き、リヒトはガッツポーズをして見せた。
数時間後、ボロボロのローブを纏った女がアーブの農村に現れ、微かな風に裾を揺らしながら森の中へと入っていく。
「……ここか」
女の不自然に青い目が宙空を向き、手の中の正四面体の箱を取り出し、周囲に漂う怨念の残滓を取り込み始めた。
「最初からここに行けばよかったな。新鮮ではないとはいえ無数の怨念が渦巻いている、メガボースの分を取り戻せるな」
怨念を取り込んでいると、背後で落ち葉を踏む音がする。
「ん?」
女が振り向くと、そこには異様な雰囲気を纏ったリヒトが立っていた。
「またお前か」
ゼフェルは振りかえりながら目深に被っていたフードを取り、オトハの顔をリヒトに晒す。
「よく場所が分かったな」
「最初に言っておくことがある」
リヒトは指貫グローブをはめた手を限界まで握り締めながら言った。
「僕は今努めて冷静にお前と話そうとしているが、その忍耐がいつまで保つかわからない。それ程までに僕は怒っている。それを理解した上で僕が今からする質問に答えてもらおう」
微かに葉とローブを揺らしていた風が、ほんの少し強くなる。
「お前の目的は何だ?」
「答える必要はない」
「なぜ頑なに目的を隠す?」
「ずっと言っている筈だ、お前には関係ないと」
リヒトは大きく息を吐くと、次の質問に移った。
「お前確か星の戦士である資格もソルティアの友である資格もないと言っていたな」
「それがどうした?」
リヒトは冷たい目をしたまま不気味な笑みを浮かべ、相変わらず平坦な口調で告げる。
「お前、この星に害を与えようとしてるんじゃないのか?」
「なんだと?」
オトハの顔に眉根が寄り、リヒトは言いようもない気持ち悪さに襲われる。
「僕達に何も言わないのはそういう事なんじゃないのか? 怨念を集めて回るのも怪しいな」
「言葉には気を付けろよ人間」
「それはこっちのセリフだ星の戦士、さっさとお前の目的を言え」
「お前に……何が分かる!」
ゼフェルがアバター召喚に使う次元干渉器を取り出すも、それと同時にリヒトがフィンガースナップを鳴らした。
「……チィ」
透明魔法が剥がれて三機のランスロットとケイが空中に姿を現し、リヒトとゼフェルを取り囲むような配置となった。
「僕の質問に答えないのならお前を拘束し、無理矢理にでもついて来てもらう」
「出来るとでも?」
リヒトはワンドブラスターをゼフェルに向け、ゼフェルはそれを見て鼻で笑う。
「脅しのつもりか?」
「ああ、このワンドブラスターには憑依を強制分離する魔術式が組み込まれてる」
先程から一転オトハの顔が歪み、リヒトの不快感と苛立ちが増した。
「質問に答えるか、大人しくついて来るか、あるいは強制分離か。どうする?」
リヒトの目は本気であるとゼフェルは悟り、どうやってこの場を切り抜けるか必死に頭を巡らす。
「まだこの体を手放すわけにはいかない……俺にはやる事がある」
「いい加減にしろ、僕が最初に言った事を忘れたか!」
ワンドブラスターの引き金に指が掛けられ、オトハの顔が焦りに歪む。
「ウウッ! クゥッ!」
リヒトは自分の頭を平手で叩いて無理矢理に苛立ちを抑えるとゼフェルの方へ一歩踏み出す。
「さあ言え! お前の目的は! どうして彼女の体を使った!」
「お前には関係ないと……言ってるだろう‼」
ゼフェルが手を翳すと同時にリヒトの足元が爆ぜ、リヒトは回避しながらワンドブラスターを放つ。
「ハッ!」
ゼフェルは回避しながらワンドブラスターから放たれた光条に向けて次元干渉器を突き出すと、装飾部分が九十度回転して眩い光を放ち始めた。
「しまった!」
オトハの身体が光に包まれるより早く、四機のチャリオッツから拘束光縄を放つも、それを引き千切りながらオトハの身体は大きく強く変わっていき、鎧を纏った青い巨躯が出現していた。
「ムゥンッ!」
リヒトは咄嗟に跳躍して距離を取り、クォーツシーバーを起動して通信する。
「すみません、拘束は失敗しました」
『大丈夫だ、あとはこちらでリカバリーする、そっちは適宜援護を頼む!』
「了解」
木の陰に隠れたリヒトはクォーツシーバーの転送魔術式を起動してワンドライフルを取り出し、アタッチメントを装着しながらゼフェルの方を見た。
「オトハ……必ず助けるからな!」
「標的設定、周囲を撹乱しながら一斉射撃!」
ルシアンの宣言と共に三機のランスロットとケイが広く展開し、ゼフェルの巨躯に魔術砲を一斉に叩き込む。
「ムアアァァッ!」
雨霰の如く降り注ぐ魔術砲を、ゼフェルはまるでハエを払うかのように腕を振るい、アストラルアックスを生成して盾代わりにする。
「もう観念しろ! エルム・ショット!」
「我が意の儘に! ヴェルクさん!」
「おう! 喰らいな!」
強烈な攻撃がゼフェルのアストラルアックスに突き刺さり、それを弾き返して頭部から放つブライトスラッシュでチャリオッツを攻撃しようと試みる。
「うおっ!」
「くっ! さすがラクスの同族……ちょっとやそっとじゃ怯みもしないし、余波だけでもすごい衝撃が来るじゃない!」
「最終魔術砲を叩き込む、なにがなんでも命中させるぞ!」
小隊長ラファエロの言葉にコレットとルシアンは頷いて、各々の機体の最終魔術砲を解禁する。
「ヴェルク君! 僕達も同時に叩き込みましょう!」
「ああ! サンライトパワー! 充填‼」
ランスロット三機が並んだ上にケイがスタンバイし、それを見たゼフェルはアストラルアックスをハルバードに変化させる。
「アロンダイトスラァァァァアアアッシュッ‼」
「プロミネンスバァァァァアアアアアアンッ‼」
三つの剣の形をした紫色の光弾が強力な熱線に押し出されてゼフェルへ向かって行き、ゼフェルはそれをアストラルハルバードを旋回して防御した。
「ムゥ……ゥゥゥウウウウンッ‼」
ゼフェルはアストラルハルバードを旋回速度を加速させると、穂先にエネルギーを収束させる。
「何ッ!」
「私達の攻撃をエネルギーに転換したのね!」
ゼフェルは紫色のエネルギーと炎に包まれた穂先をぐるりと回すと、アストラルハルバードを突き出してアロンダイトスラッシュを撃ち返してきた。
「くっ!」
「マズい!」
「ケイが!」
撃ち返されたアロンダイトスラッシュがケイに直撃する直前、真横から別の光弾が飛んで来てそれを相殺した。
「ムッ!」
「ゼェェォォオオオオオオオオオオアアアアアアアァァァァァッ‼」
炎と大波に包まれながらブリザニングのラクスが現れ、ゼフェルに組みついて互いに吹き飛びながら地面を転がる。
「ドゥオワッ!」
「ゼェィヤッ!」
精神空間内部の猛る炎に包まれながらリヒトが次の攻撃を加えようと拳を振り上げた時、ソルティアの声がして制止が掛かる。
「リヒト、君の気持ちは分かるし、オトハの事は私もよく知ってる。だがどうか……ゼフェルは殺さないでくれ」
「……」
「私の友人なんだ、私は彼を諦めたくない」
「僕も彼を手に掛けたくはない、だけど……今の僕はどうにも気分が収まらないんだ。だからもしもの時は……君が止めてくれ、それが出来るのは君だけだから」
「わかった、行こう」
マウントポジションを取ったラクスは拳をゼフェルに叩き込もうとするも、アストラルハルバードで首を抑えつけられ、揉み合いの後振り落とされてしまった。
「ムウアッ‼」
「ゼヤッ!」
ラクスは戦いの構えを取った後、グリッドスパークランスを取り出して構え、ゼフェルもアストラルハルバードを構えて走り出す。
「ルウゥアッ!」
「ゼフワッ!」
グリッドスパークランスとアストラルハルバードが激しい火花を散らしてぶつかり合い、しばらく打ち合っていると技量の差からか徐々にゼフェルが優勢になっていく。
「トワァァァアアアアアアアアアアッ!」
ゼフェルが渾身の突きを繰り出そうとしたその時、ラクスは高速で真横に回り込み、グリッドスパークランスでゼフェルの足を掬って転ばせ、炎を纏った蹴りを叩き込んで地面に倒してしまった。
「イヨワッ!」
「ヌゥッ!」
倒れたゼフェルに向かってミサイルマイトの冷凍ミサイルを浴びせるも、ゼフェルは間一髪転がって避けてグロウエッジを放ってくる。
「ハッ!」
氷の防壁でグロウエッジを防ぐも、ゼフェルはアストラルハルバードで防壁を破壊しながらラクスへ斬りかかって来た。
「フッ! ゼッ!」
アストラルハルバードの刃がラクスに向かって振り下ろされそうになった直前、ブリザニングからグランサンダーに変わり、分厚い装甲でハルバードを弾き返してしまった。
「ムッ!」
「オオオッ! ゼヤッ!」
ゼフェルの腹部目掛けた強烈なアッパーカットを食らわせたラクスは、吹き飛んだゼフェルに向けて電撃交じりの岩石流を浴びせかける。
「ドゥオォワアアアアアッ!」
「イイイイイヤアアアアアッ‼」
電撃を纏った拳を振いながら、ラクスは転がったゼフェルへ拳を叩き付けようとするも、ゼフェルは寸での所でアストラルアックスを生成して拳を防いだ。
「ムィワァッ‼」
「フゥゥッ!」
アストラルアックスと大地の力で超硬質化したラクスの拳がぶつかり合い、凄まじい衝撃波が周囲を駆け抜ける。
「フン!」
「ドゥアッ!」
両者衝撃を利用して距離を取り、ラクスは頭部の鶏冠に、ゼフェルは斧刃にエネルギーを収束して思い切り前方へ振り抜いた。
「ゼアッ! シャァアアッ!」
「ムウン! ハアアアァッ!」
トライスラッガーとアストラルスラッシャーが空中で何度も何度もぶつかり合い、ラクスはトライスラッガーをひとまとめにして光輪状に変えると、電撃を加えてもう一度ゼフェルへ投げつける。
「ンンッ……トワァァァアアアアッ! ダァラッ‼」
ゼフェルはトライスラッガーサーキュラーをアストラルアックスで叩き壊すと、そのエネルギーを刃に乗せてアストラルアックスごと投擲してきた。
「リヒト! これは受け止めきれないぞ!」
「考えがある、ジェムチェンジだ!」
真珠色の光に包まれたラクスは、屈みながら腕を頭上で交差させ、前屈しながら頭を突き出すとストラングルストリームが発射され、空を切り裂いて進む二振りの斧を縮小させてしまった。
「ムウ?」
「ンン……ゼヤッ!」
真珠色の光が散るとエーテルバーストとなったラクスが現れ、ゼフェルへ向かってスクリューバーンを放つ。
「トワッ!」
スクリューバーンを生成したつるはし型武器のアストラルハーケンで引き裂くと、ゼフェルは助走をつけながら跳躍してラクスへ鋭い一撃を叩き込もうとするも、火と風を纏ったボルテクスフィアを腹部に食らって空中へ吹き飛ばされる。
「ムアッ! シィッ!」
空中へ吹き飛ばされたゼフェルはアストラルハーケンでボルテクスフィアを打ち消すと、そのまま空中からグロウエッジとブライトスラッシュを放ってきた。
「ゼワッチ!」
グロウエッジとブライトスラッシュが直撃する寸前にラクスは空へと舞い上がり、光線抜刀術・桜花を放ってゼフェルを牽制した後、そのまま空中戦へと移行する。
「空でバチバチやり出したな」
「追いかけるぞ!」
ランスロットとケイが空中で光線の撃ち合いをするラクスとゼフェルを追いかけるも、あまりにも素早く、そして激しい戦いにラクスの援護が出来ずにいた。
「どうやっても私達が入る間が無さそうね」
「周囲に被害が及ばぬように二人を追跡するぞ、もしも光線やその余波で被害が出たら我々がそれを食い止める!」
ゼフェルと撃ち合っていたラクスは、パイロブレードを生成すると鋒を振り、自分の背後に無数のパイロブレードを生成し、ゼフェル目掛けて射出する。
「ムッ! トワッ!」
アストラルハーケンを投擲するもパイロブレードの弾幕には到底敵わず、ゼフェルはアストラルハルバードを生成してパイロブレードを弾いていたが、一瞬で肉薄してきたラクスへ反応が遅れ、ハイドロブレードで胴に一撃喰らってしまう。
「イヨワッ!」
「ゼッ!」
そのまま至近距離からハイドロブレードの乱撃をゼフェルへ浴びせるも、ゼフェルは何とかアストラルハルバードでそれらすべてを弾き、逆にハイドロブレードを折ってしまった。
「トワァァァアアアッ!」
トドメの一撃と言わんばかりにゼフェルは渾身の力でアストラルハルバードを突き出すも、ラクスは距離を取りながらラディアンスとなってアストロイドボムを放つ。
「ムゥン!」
ゼフェルは真正面からそれを迎え撃つも、間合いへ入る直前にアストロイドボムが五個に分裂して複雑な軌道を描きながらゼフェルへ襲い掛かる。
「ドゥワッ⁉ ムウンッ! トワッ! イヨワァッ!」
自分の周囲を舞うボムのうち四個はなんとか叩き落とせたゼフェルだが、残り一個が腕に直撃してアストラルハルバードを取り落してしまった。
「ムゥ……」
「フッ……」
空中で互いに得物を無くしたラクスとゼフェルは、示し合わせたかのように必殺光線の構えを取ると、コンマのズレなく両者同時に全力で光線を放った。
「トワァァァアアアアアアアアアッ‼」
「ゼヤアアアアアアアアアアアアッ‼」
スパークルシュートとアストラルバリオンがぶつかり合い、足元の街が太陽以上の眩い光に煌々と照らされる。
「またバリア張りますか?」
「いや大丈夫だ、余剰光波は地面へ届く前に霧散している」
暫くの間両者の光線は拮抗していたが、ゼフェルは腕の間隔を広げてアストラルバリオンの威力をより増し、徐々にスパークルシュートが劣勢になっていく。
「リヒト、いくら我々とはいえあの威力のアストラルバリオンが直撃したら……」
「あるだろ」
「え?」
「あの威力の攻撃を耐え抜き、あまつさえ押し返すだけの光線が」
ソルティアはリヒトの意図を即座に理解し、焦りが乗った声色で止める。
「よせリヒト! それを放てばゼフェルでも!」
「スパークル……カノォォォォオオオオオオンッ‼」
「ウゥゥゥ……フッ!」
ラクスは光線発射の構えを解くと左腕を斜め上、右腕を斜め下に伸ばしてリダブライズサークルを追加で展開し、更に右腕を前にして十字を組み、威力が爆発的に増加したスパークルカノンを放った。
「ゼェィヤァァアアアアアアアッ‼」
「ムウッ⁉ ヌィアッ!」
ゼフェルは腕の間隔を更に広げるも、もはやスパークルカノンは目の前まで迫っており、ゼフェルは全身からエネルギーを放出するアストラルギガショットを放つ事でようやく対抗する事が出来た。
「あれはボムスキングを消滅させた技!」
「これは少し……いや、かなりマズいんじゃないか?」
このまま二体のルミナス・ギガントが撃ち合いを続けていては、なんだか洒落にならない結果を招きそうな予感がするが、両者とも下手に刺激すると更に事態が悪化しそうな予感がする。
そうしてエクスレイドが手をこまねいていると、この場に居る誰もが予想だにしなかった出来事が起こった。
「……フッ?」
スパークルカノンとアストラルギガショットの拮抗点に、小さなブラックホールを思わせる黒と橙色の光球が発生し、ある程度の大きさになった所で二つの光線のエネルギーを吸収し始める。
「ムウッ⁉」
「フッ?」
ラクスとゼフェルは同時に光線の照射を止めると、光球は不気味な蠕動を始めた。
『ついに……現れたな‼』
『なんだって? ゼフェル、君が求めていたのは……』
ソルティアの問いに答えることなくゼフェルは着地すると、赤くなったメテオシンボルを気にする事なく地面に刺さったアストラルハルバードを引き抜き、光球へ向けて半ば慟哭にも似た宣戦布告を行う。
『この瞬間をずっと待ち侘びた……今日こそ! そしてここで! お前を討滅する‼』
ラクスもゼフェルの背後に着地して光球の様子を伺っていると、やがてそれは地上へ降りてきて橙色の禍々しい光を放ち、謎の電子音と共に黒い影に姿を変えた。
「……マギル・ゾノ・ハロス……」
黒い影が発した〝マギル・ゾノ・ハロス〟という謎の言語を聞いた途端、ソルティアはかつてない程の驚愕の色を見せた。
「マギル・ゾノ・ハロスだと⁉ まさか!」
「どうしたんだ? おい、ソルティア!」
光球から姿を現した黒い影は全体的に五十メートル程の二足歩行のヒューマノイドだったが、顔には中央を横断するギリシャ文字のψを思わせるモーヴに輝く発光器官と、本来目のある場所についたパラボラアンテナのような器官があるのみであり、更に頭部には独特の形状をした角が二本存在する異形そのものであった。
更に体は黒と灰の配色の外骨格に覆われており、体の各所にライラックの発光体が不気味に輝いており、どこかから怪奇的な電子音めいた音と、時折深淵から幽かに響いてくるかのような〝マギル・ゾノ・ハロス〟という謎の言語を発している。
『ここで会うとは思わなかったが……丁度いい! お前を倒す!』
ゼフェルは黒いヒューマノイドモンスターへアストラルハルバードを振りかざしたが、モンスターはその場から消えてラクスの近くへとテレポートする。
「ゼヤッ!」
咄嗟にラクスはモンスターへアストロイドボムを放つも、ライラックの発光体から放たれたバリアで防がれ、腕で殴り飛ばされて吹き飛ばされた。
「ギヨワッ!」
何とか立ち上がってラクスはゼフェルに並び立ち、ソルティアがゼフェルへテレパシーを送る。
『驚いたな……ゾヴガリンがまだ存在していたとは。テレポートまで身に着けているとなると、第三段階か』
『第三? 違う。奴は最終段階だ』
『最終段階だと⁉ 一体何を喰らったんだ……』
ゾヴガリンだの最終段階だの、マギル・ゾノ・ハロスだのと訳の分からないワードが飛び交っている事に、リヒトはもう我慢ならなくなった。
「なあソルティア! さっきからなんなんだよ! だいたいゾヴガリンって何だ? あいつの名前⁉」
「そうだ、奴の名はゾヴガリン、エリシア大戦争時代の生物兵器だ。いいかリヒト、逃げろと言っても聞かないだろうから言っておく……奴は桁も格も違う、心して挑むぞ」
「お……おう、わかった。行くぞ!」
ラクスとゼフェルは構えながらゾヴガリンへ突進して蹴りとハルバードの一閃を同時に叩き込むも、ゾヴガリンは再びテレポートして回避し、手から刃型の光波を放ってきた。
「ゼッ!」
「……マギル・ゾノ・ハロス……マギル・ゾノ・ハロス……」
ハニカムシャッターで光波を防いだラクスの横を通り過ぎ、ゼフェルはゾヴガリンへソリッドレイを纏ったアストラルハルバードの一撃を叩き込むも、全身に張られたシールドにより阻まれてしまう。
「フゥオッ! ゼヤッ!」
ゼフェルに気を取られている隙にラクスがハニカムシャッターで吸収した光波を撃ち返すと、ゾヴガリンは即座にテレポートしてその場から消え失せる。
「ゼォラッ‼」
それを待っていたと言わんばかりにラクスは八時の方向を向いて、目から放つバリア破壊光線であるヴァルネラアイを放ちながらアストロイドボムを投擲すると、そこにゾヴガリンが着地してアストロイドボムの直撃を喰らう。
「……マギル・ゾノ・ハロス……」
「フッ……」
しかしバリア無しでもゾヴガリンの外骨格は硬く、アストロイドボムはほぼ無効化されてしまった。
「……マギル・ゾノ・ハロス……」
奇怪な電子音を響かせるゾヴガリンを前に、ラクスとゼフェルは頭をフル回転させる。
『私のスパークルシュートと君のアストラルバリオンを同時に放てば、討滅とまでは行かずとも追い払う事は可能なのではないか?』
『第四段階までの奴ならそれも出来ただろうが、今の奴にはただの餌だ。それにこっちも限界が近い、撃てて一度が限界か』
次の出方を伺っていると、ゾヴガリンの姿が突如消失して空中に再出現し、肩の発光器官から光弾を放ってきた。
「ギヨワァッ!」
「ドゥワアアアアアッ!」
短い間隔でテレポートを繰り返し、ゾヴガリンはラクスとゼフェルへ次々と光弾を叩き込む。
「……マギル・ゾノ・ハロス……」
「ああもう! なんなんだよアイツ!」
急に現れて圧倒的な力を見せつけていたゾヴガリンは、エクスレイドの方にも混乱を齎していた。
「分かりません……外宇宙から来たという事だけは確信しているんですが、何もかもが全く未知数の相手です」
「マジゾノナントカってのも不気味だし、変な音も出すわそれに強いわ! なんなのよ全く!」
「一つ言えるのは」
アイリスが窓からゾヴガリンと戦う二人の巨人を見ながら静かに続ける。
「敵対していたラクスと青いルミナスが一時休戦する程には、とんでもない存在という事だ」
暫く光弾の乱射に耐えていたラクスとゼフェルだったが、ラクスは腕を交差して指先にエネルギーを収束させると、何もない場所にチェインレイを放つ。
「……マギル・ゾノ……」
「ゼヤッ!」
ラクスが予測した場所にゾヴガリンは現れ、チェインレイに拘束されて地面へ引き摺り倒される。
「フッ、オオッ! ゼアッ!」
ゾヴガリンが起き上がるまでに胸の前で両拳を合わせ、左腕を斜め上に、右腕を斜め下に伸ばし、リダブライズサークルを十個展開する。
「ゼェオォォォオオオオルァァアアアアアアッ‼」
莫大な威力と化したスパークルカノンが降り注ぐも、ゾヴガリンは全身の発光器官からそのエネルギーを吸収して対抗した。
『何をしている! 今の奴にとってソリッドレイはただの餌だ!』
『でも限界はあるだろ……スパークルカノンならあるいは!』
ラクスの活動限界が近い事を示すメテオシンボルが赤くなるのも構わず、普段の何十倍もの威力でスパークルカノンを照射し続けた甲斐あってか、ついにゾヴガリンのエネルギー吸収閾値を超えて光線が直撃し、大爆発を起こしてしまった。
『おお!』
『やった……のか?』
一種の高揚の熱狂も束の間、上がった爆炎が人型に収束し、全く無傷のゾヴガリンが現れる。
『なにっ⁉』
『さすがにこれでくたばるとは思わなかったが……無傷だと⁉』
ゾヴガリンは炎と煙を全て吸い込むと、奇怪な電子音を響かせながら全身の発光体を順番に輝かせた。
「……マギル・ゾノ・ハロス……」
最後に輝いた頭部の発光体にエネルギーが収縮し、白濁した紫色をした強烈な光線を放ってきた。
「ゼィヤアアアアアアァァァァッ‼」
「ドゥオワアアアアアアァァァッ‼」
突如出現したゾヴガリン、果たしてこの強敵を倒すことは出来るのか?
To Be Continued.
本章ゼフェル編の核となる存在「ゾヴガリン」が登場です。
果たしてこの強大な敵に、ラクスとゼフェルは打ち勝つことが出来るのか。
そして和解はあるのか?
気になる事ばかりでしょうが、ここで今週はお別れです。
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では来週またお会いしましょう!




