表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハイポリアの勇者 ~超空想綺譚~  作者: 南乃太陽
ゼフェル

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/18

決裂

アーブ王国の主要輸出品目である食肉用家畜を守る為、エクスレイドは護衛を任された。

誰もが何事もなく上手く行くと思っていた所、なんと一行の前にゼフェルが立ち塞がる!

まさかの敵に激震するエクスレイド、そして現れたラクスはゼフェルを止めるべく戦いを始める。

果たしてこの勝負、どちらに軍配が上がるのか!

 その史上最悪の事態の始まりは、何気ない日々から始まった。


「もっと我々はルミナス・ギガントについて知るべきだと思います」


 イーライの一言に皆が頷き、リヒトは近くで朝食を食べているピースをちらりと見る。


「知らなければならないって言ってもさぁ、まだ研究結果とか出揃ってないんじゃない?」

「そう思うでしょ?」

「え?」

「え?」


 まさか何か分かったとでもいうのか。

 リヒトに緊張が走る。


「全部は……分かりませんが、ある程度分かった事があります」

「この前センパイと私でエクスレイド委託の研究機関に行ったり、アマティスタの大図書館で古い文献や分野外の論文を漁ったりして色々調べてきたんですよ!」

「そしたらある程度見えてきた事があります」


 イーライがフィンガースナップを鳴らすとクォーツモニターが点灯して、スパークルシュートを撃っている時の映像が流れた。


「ラクスの必殺光線スパークルシュート。事後処理班が付近の空気を調べた所、面白い事が分かりました」


 警戒している様子を(おくび)にも出さず、リヒトは顎に手を乗せてイーライの話に聞き入る。


「スパークルシュートを構成していたのはソリッドレイである……というのが僕含めた機関の主な見解です」

(すごい……よくわかるもんだな)


 見解は正しい、これは油断できないとリヒトは腕を組んで背もたれに身を預ける。


「すまない、ソリッドレイとはなにか私は知らない。教えてくれないか?」

「ええ、ソリッドレイについて説明するには、サイコエネルギーの事も知らなくてはなりません。サイコエネルギーは知的生命体に流れる、宇宙に降り注ぐ未知のエネルギーとよく似た性質を持つものなのです」


 アイリスは自分の腕を見ながら感心したように呟いた。

 

「そんなものが……私にも流れてるのか?」

「ええ、魔術を通してそれを操って外界に影響を与えることが出来るので、魔術を使ったことがあるのなら無意識とはいえ使った事はあると思います。ヴェルク君にもヒオさんにもね」


 いつの間にか朝食を食べ終えたピースがリヒトの膝の上にやって来て、イーライの講義に加わる。


「まあ魔術などを使わずとも、普通ならば四次元宇宙に存在している魂の次元を様々な方法で上昇させることによってサイコエネルギーを操る事が出来ると言います」

「それがいわゆる()()()()ってやつね」

「鋭いですねヒオさん、そういう事です」


 まさかここで超能力者の話を聞くとは思わず、リヒトはほんの少しの動揺を逃す為に興味深そうに皆の様子を観察しているピースの角の間を撫でてやる。


「話を戻しますと、そのサイコエネルギーを極限まで凝縮する事で出来る、硬質化した光エネルギーがソリッドレイなんです。未だ魔術ではソリッドレイを作り出すことは出来ていません」

 

 幾層にも重なった薄いヴェールが一枚一枚捲られていく感覚に、リヒトのピースを撫でる指が少しだけ早くなる。


「ソリッドレイを扱う事が出来るのは中層次元を突破し、アバター使いであるか、あるいはそのレベルに達している超能力者です」

「つまりラクスはアバター使いの超能力者って事?」

「ええ、そして僕はあの姿がラクスの真の姿ではなく、戦闘用のアバターである可能性が高いと見ています」


 超能力者に関する事に全く明るくないアイリスが首を傾げたのを見たウェンディは、補足説明を始めた。


「隊長はアバターって分かりますか?」

「ああ、それは聞いた事がある。神々が使う力だと聞いている」

「そうですね。自分の魂に複数の別の肉体を紐付け、状況に応じて三次元宇宙に呼び出すという高度な超能力の事です。この地球と契約して神となった者達の多くがアバター使いですね」

「代表的なのはヴィシュヌ神です、隊長も聞いた事あるでしょ?」


 話が()れたとイーライが話題を戻す。


「とにかく、僕達がルミナス・ギガントと呼んでいる存在は、アバター使いの超能力者である可能性が高いという事です。分かった事は……とりあえずそれだけ」


 ヴェールが完全に剥がれる前で止まった事に、リヒトはホッとしてピースを抱き寄せる。


「でもよぉ、なんか変じゃねぇか?」

「変とは?」

「だってよ、リヒトは確かラクスは宇宙から来たって言ってたよな? んでお前と隊長は人間が青いルミナスになるのを見た……なんか色々おかしくないか?」

「いや、全然変じゃないよ」


 ヴェルクの疑問に対し、リヒトが割って入った。


「元宇宙人事案の専門家として言わせてもらうと、種族単位で超能力者って事例もあるからさ、ラクスもそういう種族なんじゃないかな? アバター使いなら〝人間のアバター〟を作り出して纏ってるって線もあり得る」

「はぁ~、なるほど」

「そんな七面倒な事しなくても、精神寄生や憑依を行えば人間として生活する事は可能です。そういう宇宙人居るんですよね?」

「えぇ? あぁ、うん……そっ、そうだね」


 誘導が失敗してしまったが、これ以上ボロを出さないようにするべくリヒトは口を噤む事にする。


「今後もいろいろと調べていくつもりです」

「何か新しい事が分かったら、その都度報告しますから……お楽しみに!」


 ガッツポーズをするウェンディを見て、リヒトは何か複雑な感情を抱きながらピースを見るのであった。



 

 そんなこんなで今日も出動命令が出て、探査隊は現場へ向かうべくケイに乗り込んだ。


「今回の我々の任務は駆除や戦闘ではない。護衛だ」

「護衛? 何をですか?」

「メガボースだ」

「メガボース⁉」


 メガボースとは家畜用に飼育されている最大三十メートルにもなる牛に似たモンスターであり、その食用肉はアーブにおける主要輸出品目のひとつである。


「そう、近々国際的な高級肉の品評会が大英王国であるらしい。空港に辿り着くまでの道を我々に護衛してほしいそうだ」

「あぁ、モンスターに狙われるから?」

「そうだ、少し前のバイオクローの事もあってか、アーブの畜産業者は敏感になっているんだ。それに折角アーブのブランド肉が品評会にノミネートされたんだ、なんとしても優勝してもらわないとな」


 アイリスの説明を聞いたヴェルクはニヤリと笑って前のめりになりなる。


「もし上手いこと行けばおすそ分け貰えるかもしれねぇからな! クゥーッ! 俄然やる気が出てきたぜ!」

「まあ期待はするな? 運が良ければ何事もなく終わる任務だが、最後まで気を抜かずにあたるように」


 やる気が溢れたヴェルクによる操縦で、ケイは猛スピードで現場に向かうのだった。

 この後待ち受ける敵の事を知らずに。

 

 


 現場でベディヴィア小隊と合流し、業者の到着を待つ。


「おお! あれじゃないか?」

「うわぁ……でっか」


 運ぶのは三十メートルに達する巨大牛とあって、やってきた魔動八輪トラックは見上げる程の大きさである。


「どうもです! 今回は無理言ってすみません! よろしくお願いします!」


 アーブ産メガボースを運ぶトラックの運転手が顔を出して挨拶をし、皆はサムズアップをして笑顔を向ける。


「いえいえ! 全身全霊でお送りさせていただきますからねぇ!」


 こうしてどこか和やかな雰囲気でメガボースの護衛任務が始まった。


「頭には僕らがつくから、君達三人は空から後ろについて来てくれ」

「了解です!」

「上ですね」

「もしモンスターが来ても、半径五メートル以内には近づけません!」


 ミラの頼もしい宣言にハンドサインを送り、リヒトはケイに乗り込んでワンドライフルを取る。


「フゥ……今日はこいつの出番がない平和な日でありますように」

「そうね、私も弓を引く事になりたくはないわ」

「とか言ってたら……」

「イーライやめて」


 そんなやり取りをしながら舗装された道を進み、空港がやっと見えてきたというところで突如周囲一帯を眩い青の光が包み込み、それに驚いたトラックは急ブレーキをかける。


「うおおっ⁉ なんだなんだ!」

「この光……もしかして!」


 光が収まって全員前を見ると、まるで立ち塞がるようにゼフェルが立っていた。


「青いルミナス!」

「どうして……まさか近くにモンスターが⁉」

「こちらケイ、モンスターの反応はあるか?」


 アイリスが素早くベディヴィア小隊に確認を取る。


「……ありません、妙ですね」

「目視でも確認できませんよ……どうして青いルミナスは現れたんだ?」


 普段ならモンスターが現れたら駆けつけるように現れるのだが、今回は何もないのに現れたのが面妖である。


『ゼフェル……何故だ?』

 

 ソルティアを含めた全員が首を傾げていると、なんとゼフェルが片膝をつき、こちらに手を伸ばしてきたではないか。


「攻撃だ!」

「リヒト君⁉」

「とにかく攻撃するんだ! 牽制で良いから!」


 ヴェルクは慌てて魔術砲のトリガーを押し、ゼフェルの腕に副砲から放たれた細かい光弾が命中して動きが止まる。


「……ムウン……」


 そのまま視線をゆっくりとケイに向けたゼフェルは、指先から光線を放ってきた。


「うおおお! 避けろ避けろ避けろ!」


 ゼフェルの光線が命中する直前、ケイはグランドモードからフライトモードに変形して空へ飛び立ち、直撃こそ免れたものの衝撃で大きく機体が揺れる。


「あいつ……俺達を撃ちやがった!」

「……隊長、攻撃を進言します。青いルミナスの狙いは……おそらくメガボースだ!」

「なに!」


 よく思い返せばゼフェルの視線の先にあったのは、メガボースを乗せたトラックの荷台であった。


「……わかった、護衛と正当防衛の要件を満たしていると考え、今から青いルミナスを攻撃する!」

「攻撃ですか……うぅ、了解! アル! マティアス! 行くよ!」

「ああ、ルミナス・ギガントが相手になるとは……」

「クソ~……こうなりゃ全身全霊でぶつかるだけだ!」


 ケイと三機のベディヴィアは旋回して一斉に魔術砲を浴びせ、ゼフェルは一瞬怯んで後退するも即座に腕で魔術砲を払いのけ、反撃してきた。


「ムゥッ……シャァッ!」


 ゼフェルはアストラルダガーを振って斬撃を飛ばし、チャリオッツは大きく旋回して回避し、今度は主砲からより高火力な攻撃がゼフェルへ降り注ぐ。


「ヌィアッ! ムウンッ! トワァァァアアアッ‼」


 高火力を受け切ったゼフェルは手甲から刃を出現させ、グロウエッジを放って空を薙ぎ払う。


「あいつ本気で撃ち落としに来やがった!」

「とりあえずメガボースを空港に送り届させるのが先決なので、青いルミナスを道路からどかせる必要があります」

混淆魔術砲マギカノン・ミクスチャですね?」

「そうだ、巨人でも吹き飛ぶようなとびっきりの一発を頼むぞウェンディ!」

「了解、我が意の(アブラ)……儘に(カダブラ)!」


 四種の魔術が混淆した事で、ケイの主砲に凄まじいエネルギーが収束していく。


「吹っ飛べ‼」


 主砲から電撃と魔術エネルギーを纏った弾丸が射出され、ベディヴィアに気を取られていたゼフェルはこれの直撃を喰らった。


「ドゥオオオオオワアアアアアアッ‼」


 とにかく吹き飛ばすことに特化した弾丸の一撃は、ゼフェルを大きく吹き飛ばして塞がれていた道路を開けることに成功した。


「こちらケイ、聞こえますか! 行ってください!」

『は、はい!』



 

 トラックが進んだのを確認したケイは、高度を下げてアイリスとヒオとリヒトを下ろした。


「陸と空で青いルミナスを攻めるぞ!」

「了解、気を付けろよ!」


 アイリスは背中のクレイモアを抜き、ヒオは弓を構える。


「今日も弓を……それもよりにもよって青いルミナス相手に引くだなんて」

「それは残念だが、圧倒的な力で暴虐を振う者を我々は見過ごすわけにはいかない。それが例え……誰であってもな」

「行きましょう、奴を止めに」


 三人は同時に走り出し、まずアイリスが火属性の斬撃を飛ばした後にヒオが矢で斬撃を押し上げ、リヒトがワンドライフルで威力を底上げし、炎の流星がゼフェルに向かって飛んで行く。


「ンンッ……ドゥオッ!」


 ベディヴィアの攻撃を受けながら、ゼフェルは飛んで来た炎の流星を握り潰してしまった。


「!」

「さすがにこれしきでは意に介さないか」

「もう! 私の矢! 一本作るのにどれだけ大変だと思ってるのよ!」

 

 だがこれで大きな隙が出来た、これを好機にミラとアルフレッドとマティアスは最終魔術砲ファイナル・マギ・カノンを解禁する。


最終魔術砲ファイナル・マギ・カノン! ジュースティングショォオオットッ‼」

「発射!」


 槍状の光弾が三機のベディヴィアから射出され、腕を交差して防御したゼフェルへ直撃した。


「ムゥ……ウゥゥ……トワァァァアアアアアッ‼」

「なにっ!」


 だがしかしゼフェルは腕を広げて逆に光弾を破壊し、アストラルハルバードを生成して振り回す。


「ドゥオッ! セイヤッ‼」


 ゼフェルはアストラルハルバードを掲げて穂先から光の衝撃波を放ち、自分の周囲のチャリオッツを全て吹き飛ばしてしまった。


「うううっ!」

「ああっ!」

「クソオッ!」


 邪魔者が居なくなった事を確認したゼフェルは、アストラルハルバードを投擲に向くようにより細い形状に変えると、トラックに狙いを定める。


「マズい! 青いルミナスを止めろ!」


 各人体勢を整えてゼフェルへ一斉攻撃を仕掛けるも、ゼフェルは一切動じずトラックへ狙いを定める。


「ドゥワッ‼」


 ゼフェルの手からアストラルジャベリンが離れ、青い軌跡の放物線を残しながらトラックへ向かって伸びていくが、その途中で楔形光弾がアストラルジャベリンを撃ち落としてしまった。


「ムウッ⁉」


 ゼフェルとエクスレイドが楔型光弾が飛来した場所に目を向けると、そこには腕をこちらに向けたもう一人のルミナス・ギガントが立っていた。


「ラクス!」

「……良かったぁ」

 

 ゼフェルは拳を握り、苛立ちを露わにしてラクスを睨みつける。



 

『何のつもりだ……ソルティア!』

『それはこっちのセリフだゼフェル』


 テレパシー越しでも、ゼフェルの怒りが伝わってくる。


『なぜメガボースを狙うんだ? メガボースは暴れているわけでも害を与えているわけでもない、星の戦士ならば無暗に命を奪ってはならない筈だ!』

『あのモンスターの肉は一時的とはいえ食らった者に凄まじい力を与える、奴を引き寄せる為に必要なんだ!』

『君の言う事は何の事か分からないが、君の行いは間違っている』


 ソルティアから糾弾されたゼフェルは、アストラルジャベリンを引き寄せてハルバードに変形させて構えた。


『俺の邪魔をするのか……』

『これ以上やるのなら星の戦士として、この星の守り手として、私は君に立ち向かわなくてはならない。私にその選択をさせてくれるな』

『そうか……残念だ!』


 

 アストラルハルバードが空を切り裂きラクスの顔目掛けて突き出されるも、ラクスは咄嗟に回避してアストロイドボムを放つ。


「ムゥッ! トワッ!」

「ゼッ! ハッ!」


 アストロイドボムを払いのけて放たれたグロウエッジに、ラクスはハニカムシャッターを展開してゼフェルへと撃ち返した。


「ゼヤッ!」


 畳み掛けようと跳躍して近付いたラクスだが、ゼフェルは上体を逸らして撃ち返されたグロウエッジを回避すると、空中のラクス目掛けてアストラルハルバードを突き出す。


「ギヨワッ!」


 空中で叩き落とされたラクスは転がりながら距離を取り、片膝立ちになって構える。



「得物持ちには得物持ちだ!」


 リヒトがブリザニングジェムを取ろうとした時、ソルティアがそれを制止する。


「ダメだリヒト、ゼフェルの槍の腕は私達の数段上だ。槍で挑むとペースに引き込まれ、あっという間に負けてしまうぞ」

「そうか……だったらこいつだ!」


 グランサンダージェムに切り替え、レバーを押し込んでその力を開放した。


「こいつは一際強烈だぞ!」



 ラディアンスからグランサンダーとなったラクスは、腕から電撃を放ってゼフェルを牽制する。


「ムゥンッ!」


 アストラルハルバードで電撃を防御した所に、ラクスはトライスラッガーを投擲してゼフェルの体を切り裂いてしまう。


「ドゥオッ!」

「ゼヤッ!」


 ラクスは怯んだゼフェルへ向けて額からの反磁力光線であるマグメーザーを放ち、ゼフェルはアストラルハルバードでマグメーザーを切り裂き、アストラルハルバードをソリッドレイで包み込んで旋回斬りを叩きつけた。


「ゼッ! ハァァァアアアアッ‼」


 迫る刃を肘打ちで迎撃し、ラクスとゼフェルの間に凄まじい衝撃が走り抜ける。


「フッ!」

「ムゥッ!」


 ラクスは腕に力を込めてアストラルハルバードを跳ね除けると、反対の腕で掌底突きを叩きつけてゼフェルを大きく突き飛ばした。


「ムアアッ……グゥッ!」


 至近距離を詰めてくるグランサンダーに長物は(かえ)って不利と悟ったゼフェルは、ハルバードをバトルアックスに変形させ、今度は積極的に攻めに掛かる。


「トワァァァアアアッ‼」

「ヌオオッ! ゼヤッ!」


 上段から来る二振りのアストラルアックスの一撃をラクスは腕で防御し、徐々にそれを跳ね除けつつ、もう一度マグメーザーを放つ。


「ムウンッ!」


 ゼフェルは紙一重でそれを回避し、アストラルアックスを回しながら距離を取ってラクスと睨み合う。

 


 

「一進一退の戦いですね……」

「だがチャンスでもある、ベディヴィア小隊! ここはもういい、トラックの警護に回るんだ」

『本当に良いのですか?』

『探査隊だけで抑え込む事になりますよ⁉』


 驚くアルフレッドとマティアスに対し、アイリスは冷静に告げる。

 

「ああ、この勝負はメガボースを無事送り届けることが出来るか否かに掛かっている。つまり無事にトラックを守り切る事が出来れば我々の勝ちだ!」

『その護衛が私達……分かりました、行きます! 健闘を祈ります!』

「そっちもよろしく頼むぞ」


 三機のベディヴィアが一気に離れた事に気付いたゼフェルは、ラクスの頭目掛けてアストラルアックスを投げつけて怯ませ、その隙に空中高く飛び上がって追跡を始めた。


「ゼヤッ!」

「ムオワッ!」


 ラクスは即座に体勢を立て直し、ゼフェルの足にしがみついて失速させるも、さらに力を込めたのか徐々に高度が上がっていく。


『これ以上邪魔立てするならもう手加減はしない!』

『てっきりアレが全力だと思ってたがね』

『舐めるなよ人間!』


 ゼフェルはラクスを蹴り飛ばし、グロウエッジをトラック目掛けて放つも、風の力で超加速したラクスがグロウエッジを手で防いで投げ返す。


「オオ……ゼハッ!」

「ムンッ!」


 ラクスの腕から放つ岩石混じりの竜巻をアストラルハルバードで防いだゼフェルは、空中で旋回しながらラクス目掛けて斬撃を飛ばす。


「フッ……ゼアッ!」


 飛ばされた斬撃がラクスへ命中する直前、ラクスの体を真珠色の輝きが包み込み、その光の中からエーテルバーストとなったラクスが飛び出してゼフェルに強烈な突きを繰り出す。



「空中戦だったらエーテルバースト(こいつ)が一番さ!」



 紙一重で突きを回避したゼフェルへラクスは即座に光線抜刀術・桜花を放ち、アストラルハルバードでそれを防御するも続けざまに放たれたスクリューバーンを喰らって大きく仰け反ってしまう。


「ムアアアッ! シェアアアアアアッ!」


 ゼフェルの頭部から放たれたブライトスラッシュをクラッシャーエッジで相殺し、ラクスは右手からハイドロブレードを生成して斬りかかる。


「フッ!」

「ムウンッ!」


 アストラルハルバードとハイドロブレードがぶつかり合い、周囲に閃光が迸る。


「シィッ……ムウッ!」

「ンンッ……オオオッ!」


 ラクスは渾身の力でアストラルハルバードを跳ね上げると、右手のハイドロブレードを解除して左手からパイロブレードを生成して振り抜き、ゼフェルに火炎を浴びせかけた。


「ムオオオオオッ! ヌゥンッ!」


 パイロブレードによる火炎を浴びせられて吹き飛んだゼフェルだが、気合で体の炎をアストラルハルバードへ収束させると、その炎が混じった光線をラクス目掛けて放つ。


「ゼッ! ハアアアッ! ゼイヤッ!」


 ラクスはゼフェルから距離を取り、岩と土の壁を作り出し、更にその中から合金の盾を作り出して光線を防いでしまう。


「ドゥオオオッ……トワァァァアアアアアアアアアアッ!」


 光線の威力を上げて合金の盾を破壊してラクスを吹き飛ばしたゼフェルは、方向転換してトラックを追跡する。



「リヒト!」

「わかってる!」



 ラクスはゼフェルに向けてスクリューバーンを放ち、ゼフェルはアストラルハルバードでそれを払いながらグロウエッジを放って反撃してくる。



「ゼフェルを墜落()とせ。空中では決着がつかない」

「そうだな、ゼフェルの時間切れも考慮しないとな」


 星の戦士と人間の長時間の融合は魂の焼尽というリスクが付き纏う、リヒトとソルティアとは異なりまだ融合して日の浅いゼフェルは活動限界時間が短いのだ。


「飛ばすぞ!」



 ラクスは腕を体にぴったりと付けると、周囲のエーテルを操作して風の力を取り込んで全身を電撃に変え、光を超えた速度でゼフェルの前に回り込む。


「ドゥオッ⁉」

「ゼヤッ……ハァァアアアアアッ‼」


 先程取り込んだ風の力をラクスは一気に開放してゼフェルに竜巻を叩きつけ、数キロ離れた場所に叩き落とす。


「ドゥワアアアアアッ!」


 地面を転がるゼフェルの前にして、ラクスは着地して腕を広げて戦いの構えを取る。


「シィィ……ムウンッ!」

「フッ!」


 起き上がったゼフェルはハルバードを二振りのダガーに変え、立ち上がってラクスへ走り出す。


「フッ! ゼヤァッ!」


 ラクスが地面を蹴るとゼフェルの真下に巨大な結晶が隆起し、ゼフェルが吹き飛ばされてしまう。


「ウウ……ウウウ……」


 睨み合っていると、ラクスの視界に一台のフライトガレオンが飛び立っていくのが見えた。


「フッ!」


 透視するとフライトガレオンにはメガボースが乗っており、ラクスは確認のために聞き耳を立てる。


「こちらベディヴィア、無事にトラックの輸送を終え、任務を完了いたしました!」

「ご苦労! よくやってくれた!」



 その吉報を知ったリヒトは思わず笑みを零し、上を向いて言った。


「やったな!」

「ああ、私達の耐久勝ちだ」



 もはや勝負はついたと、ラクスはゼフェルへテレパシーを送る。


『ゼフェル、もう勝負はついた』

『何ッ⁉』

『メガボースはもう飛び立った、君の目的はもう潰えたのだ』

『嘘だろう……なんてことを!』


 ゼフェルは膝立ちになりながら天に向かって叫び、その異様とも取れる慟哭ぶりにリヒトとソルティア(ラクス)は思わず後ずさった。


『あと一つで……あと一つで完璧だった! おおおおおおああああっ!』

『落ち着けゼフェル!』

『ソルティア……人間……やってくれたなァ!』


 ゼフェルはハルバードを取り出してラクスへ思い切り振り降ろし、ラクスは咄嗟に空刀(うつろかたな)を生成して防御する。


「ムオオオオオオオッ‼」

「フッ! ゼッ!」


 アストラルハルバードと空刀が激しくぶつかり合って火花を散らし、双方渾身の力を込めた一撃で互いの得物が大きく吹き飛んでしまう。


「フッ!」

「シィ……」


 空刀は中程から破損し、アストラルハルバードもかなり遠くへ突き刺さっており、今から取りに向かうのも隙が大きすぎる。

 ラクスとゼフェル双方とも武器は使えず、おまけにゼフェルの方はメテオシンボルが赤くなっている。

 これ以上戦うのは最早不毛だ。


『終わりにしようゼフェル、星の戦士(われわれ)同士で戦っても無意味だ』

『うるさい……オオオオオッ!』


 ゼフェルは腕を交差して五指を開き、そのまま腕を開いて稲妻状のエネルギーをチャージすると腕を前に突き出した。


『アストラルバリオオオオオオオオオォォォォォンッ‼』


 ゼフェル最大の必殺光線たるアストラルバリオンが直撃する寸前、ラクスは素早くエネルギーをチャージしてエレメンツシャワーを放ち、二つの光線がぶつかり合って凄まじい光が周囲を埋め尽くす。


 

「なんてパワーだ! こんなの喰らえばひとたまりもないぞ!」

「ああ、同時に向こうの融合者の命も危ない……やめさせなくては!」


 ソルティアはゼフェルへ何度も呼びかけるが、ゼフェルはもはや聞く耳を持たず、両腕にサイコエネルギーを送り込んでアストラルバリオンの威力をより増してきた。


「やめさせるたって……どうやってやめさせるんだよこれ!」



 ラクスの精神の中で叫んだ事に呼応するように、エレメンツシャワーの威力も向上していき、光線の余波が飛び散って周囲を焼き始める。


「ゼッ⁉」


 これまで戦いを遠巻きに見守っていたエクスレイドだが、光線で被害が出るとなると話が変わってくる。

 アイリスは即座にイーライへ連絡を取り、対策を練った。


魔的障壁(バリア)を張ります! ベディヴィア小隊いいですか? 魔術砲の準備を!」

「了解!」

「障壁魔術砲、準備完了。いつでも撃てます」

「こっちも良いぜ、俺の合図で撃て!」


 ヴェルク、ミラ、アルフレッド、マティアスの指が操縦桿のトリガーに掛かる。


「撃て!」


 三機のチャリオッツから光線が放たれ、魔的障壁がラクスとゼフェルの周囲に展開されていった。


「フッ! オオオオッ!」


 周囲への被害を気にしなくて良くなったラクスは更にエレメンツシャワーの威力を上げ、ゼフェルもそれに対抗してか突き出した両腕を広げてエレメンツシャワーを押し返す。



「相手がどうこうより……このままじゃこっちが持たない!」


 メテオシンボルの色と連動し、ラクスの精神空間の光に赤が混じり始める。


「あと少し耐えてくれリヒト、もうすぐでエレメンツシャワーが効果を発揮する」

「わかった……僕の(たましい)が持つよう祈っといてくれ!」



 やがてソルティアの狙い通り、エレメンツシャワーとアストラルバリオンのぶつかり合いによって副次効果が発生し始めた。


「ムウッ⁉」


 アストラルバリオンとエレメンツシャワーの拮抗点に火炎球が発生し、加速度的に膨れ上がって両者対応する間もなく爆発してしまった。


「ドゥワアアアアアッ!」

「ゾアアアアアアッ!」


 幸いエクスレイドが展開した魔的障壁によって被害は広まらなかったものの、ラクスとゼフェルは大きく吹き飛んで地面へ投げ出されてしまう。


「ムウゥ……オォォ……」

「ゼッ……フワッ……」


 倒れ伏した両者とも光の粒子となって消滅し、親友同士の戦いは痛み分けで幕引きとなった。



 

「ハァ……フゥ……」


 ラクスから戻ったリヒトは、ゼフェルの融合者を探すべくエーテルバーストジェムの力でゼフェルが消えたあたりへテレポートする。


「どこだ、遠くには行ってない筈だ」


 気怠さが残る体を引きずり、リヒトは感覚を頼りにゼフェルの融合者を探す。


「いた!」


 後ろ姿だが、黒いボロボロのローブを纏った人物が柱に手を掛けて蹲っているのが見える。

 僅かに見えている手や体格、髪の長さを鑑みるに、ゼフェルの融合者は若い女だというのがわかった。


「お前がゼフェルだな、そうなんだろ?」


 その呼びかけに反応してこちらに向いた顔を見て、リヒトは衝撃のあまり大きく目を見開いて固まってしまう。


「お前、ソルティアの融合者の人間だな?」

「……嘘だ」

「この体か? 驚いただろうな……チッ」

 

 上空のケイを認めた彼女は、リヒトのよく知る声で告げた。


「もうこれ以上俺の邪魔をしてくれるな、どうせ聞かないだろうがな」


 彼女はそれだけ言い残して、固まるリヒトを残して瞬間移動して消えてしまった。


「リヒト!」


 未だ固まったままのリヒトの方へ、アイリスを先頭に探査隊が集まってくる。


「探したぞ……さっきのあの女、青いルミナスなんだな」

「……はい」

「やはりルミナスは人間として活動していたと」

「……ええ」


 ここでようやくリヒトの様子がおかしい事にイーライとヒオが気付いた。


「ねぇ、どうしたの? なんか変だけど」

「なにか……とんでもないものを見たといった顔をしていますが」


 顔面蒼白のリヒトは、顔色に反して冷静な声で言葉を紡ぎ始める。


「ルミナスは人間に憑依している……そんな仮説あったよな?」

「ええ、そうですね」

「それは正しいよ、青いルミナスはある人間に憑依している。よりにもよって……」


 リヒトはこれまでに見せた事のないような表情を浮かべ、仲間達の方を見ながら言った。


「向こうに残してきた僕の婚約者、シノザキ・オトハにね」



 

To Be Continued.

まさかまさかの正体判明。

本作の正(?)ヒロイン、シノザキ・オトハ本格参戦でございます。

しかし現在はゼフェルに乗っ取られているようで……リヒトとオトハの運命や如何に。

感想コメント、Twitter(現X)のフォロー、友達へのオススメもよろしくお願いします。

この続きは来週!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ