表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハイポリアの勇者 ~超空想綺譚~  作者: 南乃太陽
ゼフェル

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/18

湖の魔物

アーブ建国以前からある湖のゾディア湖で、伝説の大蛇が目撃された。

ガレス小隊と共に湖の中へ入ったエクスレイドは大蛇と遭遇し、ゼフェルも交え戦いとなるが、何処か様子がおかしい。

果たしてこの大蛇の正体とは?

 そのあまりにも突飛な発言は、皆を困惑させるに足る内容だった。


「はぁ? ルミナス・ギガントは人間かもしれない⁉」

「イーライ……おま……えぇ?」


 イーライの発言にアイリス以外の探査隊メンバーに激震が走る。

 尤もリヒトだけは意味が違うのだが。


「どういうこと? ちょっと意味が分からないんだけど」

「そりゃ言ったままの意味ですよ、ルミナス・ギガントは人間に擬態、あるいは人間として生活している可能性が高いのです。ラクスも含めてね」


 ヒオとヴェルクは互いに顔を見合わせた後、後ろに居たリヒトとウェンディを見た。


「どう思うよ、コレ」

「どう思うっつったって……ねぇ?」

「まあその……センパイが言う事だから根拠のある事でしょうけど、ちょっと考えもしなかったというか……それでビックリしたといいますか」


 メンバー一人一人が思い思いの反応を示す中、イーライが口を開く。


「先日のダンジョンでの任務、覚えてるでしょう? ラクスの前に青いルミナスが出たんですよ」

「ああ、俺とヒオは拝めなかったがな」

「青いルミナスが出る前に、僕と隊長は見たんです……粉塵越しだけど」

「見たんですか?」


 リヒトがアイリスへ問いかけ、アイリスは深く頷いて答えた。


「ああ、確かに私とイーライは人が……少なくとも人型知覚種族が青いルミナスになるのを見た」

「顔とか……特徴とかは?」

「……特徴」


 アイリスは腕を組んで上を向き、イーライも額に指を当てて頭の奥底の記憶を引きずり出す。


「粉塵越しに影を見ただけだから、ほとんど見えてないも同然だったんだ」

「そうですね、ただ手に持った何かを操作していたのは見えましたから、魔道具か聖遺物を使ってルミナスになるんでしょうね」


 これでゼフェルが誰かと融合している事が確定した。その上アーブで過ごしている事が確定している。


「てぇ事はよ、ラクスも人間って事なんじゃねぇか?」

「……」

「ええ、前々から僕はそんな仮説を立てていたんですが、ダンジョンの一件で確証を得られましたね」


 非常にまずい、リヒトは正体バレについては念入りに対策をしてきた。

 

 この世界に転移して半年の間ラクスにならなかったのは、緊急事態が起こった時に、危険へ真っ先に突っ込んでいくタイプだと皆に刷り込ませるためだった。

 もちろんソルティアが負傷していた為という理由もあるが、「緊急事態にどこかへ行っても必ず帰ってくるヤツ」という刷り込みを行う事で、ラクスになっている時に居なくなっていても「またどこかに突っ込んでいたのか」と思われるだけで済むからだ。


(どうしたもんかな……コレ)

 

 何とか誤魔化さなくてはならない、だが思った以上に運はリヒトに味方してくれていた。


「まあでも、何事も一つの事例に当てはめるのは良くありません。だからもう少し情報を集めてから判断を下したいと思います」


 リヒトとその中に居るソルティアは、ほっと安堵の息をつくのだった。



 

 その日のうちに探査隊へ通報が入り、夕方の出動が決定した。


「こら夜までコースだな」

「あぁヤダヤダ、明日(おやつ)買いに行こうと思ってたのに」

攻撃隊(ラウンドナイツ)との共同作戦となると……結構大規模で時間かかりそうだな」

「そうなんですよねぇ、しかも今回の案件ってゾディア湖の伝説についてなんですよね?」


 アーブで四番目に大きい湖であるゾディア湖、そこには昔から大蛇が住むという伝説があり、起源を遡るとコリン女王がアーブという国を建てる以前からある大変に古い伝説なのだ。


「要はゾディア湖の大蛇が今になって急に動き出したって事でしょ?」

「そういう事です、夜間に水中を動く影や何の前触れもなく上がる水柱等の報告がありましたが、ついにこの前、騎乗用に飼育されていたレウクロッタが湖へ引きずり込まれました」


 昨今のモンスター災害の拡大と、ゾディア湖の大蛇の活動活性化は何らかの関係があると見られ、エクスレイドへその掃討・駆除が命じられたのである。


「ゾディア湖の大蛇ではいつまでも呼びにくいでしょうし、これからはゾーペントと呼称します」

「ゾッシーじゃないの?」

「そりゃダセェよ」


 ゾーペントの活動が活性化するは夜間である、早速探査隊はケイに搭乗し、ゾディア湖を目指すのであった。



 

「お久しぶりですアイリス隊長」

「ああ、今回はよろしく頼むぞロベルト小隊長」


 アイリスが握手を交わした相手はロベルト・ハスロー、若き吸血鬼の青年にしてラウンドナイツのガレス小隊を率いる小隊長である。

 チャリオッツ・ガレスモデルは陸と海に対応したチャリオッツであり、まさしく今回のような事案にうってつけである。


「ゾーペントが動き出すまで、まだ時間があるから警戒しつつ休んでおいてくれ」

「ありがとうございます。お前達、しばしの休憩だ」


 ロベルトは後ろに居た小隊メンバーに声をかけた。


「警戒を怠るなって言われたでしょ」


 呆れたように小言を言うクラーラ・オストバリを、おどおどした面持ちのライト・アールヴのケラスがちらりと見る。


「ドンと構えとけばいいの、ねぇヴェルクさん?」

「んお? おう! ドンと構えて締める時は締めりゃいいんだ!」


 皆が思い思いに過ごす中、イーライはウェンディの協力を得て魔術式を構築していた。


「お疲れさん」

「ああ、どうも!」


 リヒトが渡した茶の入ったボトルを受け取ると、イーライはそれを半分ほど飲み干して作業に戻る。


「何か手伝おうか?」

「いえ、ウェンディにやってもらうので大丈夫ですよ」

「そういや何の術式組んでるんだい?」

「これですか、感知記録水晶内臓の魚型魔道具の記録映像を、ここのクォーツモニターに同期してたんです」


 要はカメラ付きの水中ドローンの映像をモニターへ映し出せるようにしていたのである。


「こいつを第二の目にするって事か」

「ええ、ゾーペントの体長は恐ろしく長いものと推測されます。ですから、第二第三の目を水中にあらかじめ設置しておくことで、不覚の事態を避けることが出来るという訳です」

「ほぉ……良ければその監視役、僕がやろうか?」

「良いんですか?」

「いいよ、些細な変化も見逃さない!」


 こうして監視役はリヒトに決まり、術式の構築が終わった後で魚型魔道具がゾディア湖に放流された。


「放流したのは八個、つまり八つのモニターを同時に見なくてはいけません」

「大丈夫、警備員のバイトやってたし」


 モニターの調子を確かめていると、イーライに声が掛かった。


「そろそろ蛇狩りの時間だ。リヒト、第二の目として私達を頼む」

「はい、お任せあれ!」


 リヒトを残して全員チャリオッツに乗り込み、各部を変形させながらゾディア湖の上に進出していく。


「チャリオッツ全機マリンモード変形!」

「潜行……開始!」


 ケイと三機のガレスがゾディア湖に沈んでいくのを見送りながら、リヒトはソルティアに話しかけた。


『今日もゼフェルは来るかな?』

『きっと来るさ、だから準備だけはしておいた方が良いな』



 

 ケイを先頭にゾディア湖を進んでいると、魔術センサーが反応した。


「あっ……こっちに、居るみたい……デス」

「そう? じゃあケラス機の方向へ進路を変えよう。探査隊オッケーですか?」

「わかった、ケラス機だな?」


 ケラスが乗るガレスを中心に方向転換を行い、一行は更に深く沈んでいく。


「リヒト、着いて来てる?」

『もちろん、何なら君達より深い所に居るけど……まだ何も見えないね』


 微弱な反応はあるのだが、肝心の本体が全く見えない。


「下手にソナーは使えない、そんなの『ここに居ますよ』と喧伝してるみたいなものだからね」

「結局目視とレーダー頼りって訳ね」


 暫く潜行しているとヒオが何かを感じ取り、側面の窓に顔を向けた。


「隊長……近いです。ゾーペントはすぐ近くにいます」

「近いか、みんな警戒を怠るな。奴は既に我々を待ち構えているかもしれないからな」


 その時、スピーカーからリヒトの大声が響き渡った。


『後ろだ! 避けろ‼』


 ヴェルクとガレス小隊全員がほぼ同時に操縦桿を切った一秒後、巨大な物体が凄まじい勢いで水中を駆け抜け、その水圧によって大きく吹き飛ばされそうになる。


「ゾーペント!」

「チッ……最初から気付いてたって事か」

「図体もデカい上素早いときた」

「残念だったわねミズヘビさん、アンタが狙った魚は……逆にアンタを食い殺す!」


 クラーラ機が魔術砲を掃射したと同時に、ガレスは三機ともゾーペントの胴体を攻撃するも、ゾーペントは意に介していないようだ。


「ウェンディ、グリファイヤを奴に浴びせるぞ」

魔術砲混淆マギカノン・ミクスチャですね、我が意の儘に(アブラ・カダブラ)!」


 水中でも消えない炎(グリファイヤ)がケイの特殊魔術砲から放たれ、その体表を焼き尽くした。

 これまで味わったことがない感覚にゾーペントは身をくねらせ、ケイに向けて鎌首をもたげる。


「これが奴のツラか、不気味極まりねぇな」


 まず目につくのは口、それも捕食機能以外を捨て去ったかのような巨大な口が顔面の八割を占めており、鼻や目と言ったものは見られない。

 しかもよく見ると体表に鱗が存在せず、等間隔で存在する小さなヒレ以外はぬめぬめとした肌をしていた。


「こいつ本当に蛇か? 蛇っぽい別の何かじゃないのか?」

「それは後で調べるから今は集中して!」

「分かってるって、もう一回燃えちまえ!」


 放たれたグリファイヤがゾーペントの顔へ伸びていくも、ゾーペントは巨大な口を一気に開けてそれを水圧で跳ね返し、何か白い固形の弾丸を吐き出してきた。


「まずい! 避けて避けて避けて!」

「おおお分かってるって!」


 ケイが避けた後、ガレスが口の中目掛けて攻撃を仕掛ける。


「く……口の中なら! ダメージも通るでしょ!」

「今日の晩餐は魔術砲よ、ありがたく受け取りなさい!」

「行くぞクラーラ! 行くぞケラス!」

 

 白い閃光がゾーペントの口の中へ吸い込まれていくも、ゾーペントは大して気にしていない。


「口の中にぶち込んでも全然効いてない⁉」

「ね……ねぇ?」

「どうしたケラス」

「このモンスター……本当に蛇なのかな?」


 ヴェルクに続きケラスまで変なことを言いだした。


「さっきヴェルクさんも言ってたけど、なんだよそれ?」

「だって……口の中が異様につるつるしてるし、やたら牙が少ないし」


 確かにヴェルクやケラスの言う通りゾーペントは蛇にしてはかなり変なモンスターである。


「もしかしてこれ、全く別の何かなんじゃ……」


 

 

 その頃、湖畔では。


「ああクソ! どこに行ったんだ!」


 魚型魔道具がゾーペントによって全て吹き飛ばされ、場所の把握が出来ずリヒトは大焦りしていた。


「今どうなってるんだ? 分からん……」

「……リヒト!」

「後にしてくれ、今忙しい」

「リヒト!」

「今みんながどこにいるか探してるんだ! それ以上に……」


 そこまで言いかけた直後、リヒトの右目がエメラルドグリーンに光り、体の主導権がソルティアに奪われて強制的に湖の斜め岸を向かされる。


「なんだよ! こんな事までして……」

「あっちを見ろ、あれだ」


 リヒトが薄闇に目を凝らすと、黒いローブを纏った人影が湖畔の上に立っているのが見えた。


「なんだあれ?」

「分からない……だが何かを感じる」


 暗視しようとした直後、人影がなにか光る装飾品を取り出し、それを九十度傾けると同時に凄まじい光が周囲を塗りつぶした。


「うっ!」

「これは!」


 リヒトが再び目を開けると湖の上にゼフェルがおり、身を翻して水中深く潜っていった。


「ゼフェル……今回も来たのか」

「助太刀をご所望ではないようだから、ここは一旦様子見だな」




 謎が多く、攻撃がまともに効かないゾーペントにエクスレイドが手をこまねいていると、強烈な反応が上方から迫り、同時に巨大な何かが落ちてきた。


「今度は何なのぉ!」

「……あっ! 青いルミナス!」


 自分の入水によって大きく揺れるチャリオッツに構わず、ゼフェルは足を動かしてゾーペントの真横を通り過ぎてより深く潜って行く。


「素通りしちゃった」

「何故ゾーペントを素通りした? モンスターを倒す事しか考えていない青いルミナスがみすみす見逃すとは思えない」

「……まさか! みんな! 青いルミナスを追いかけましょう! そこにこれまでの違和感の答えがあります!」

「なるほど、いいな二人とも、青いルミナスを追うぞ」


 ゾーペントの妨害を躱しつつ水中深く潜っていると、ついに湖底へ辿り着いた。


「あの岩の間からゾーペントが伸びてるぞ!」

「どんだけデカいのよあいつ……」


 その岩間を認めやゼフェルは、手甲から刃を発生させるとエネルギーを収束させ、腕を突き出してグロウエッジを放つ。


「うわっ!」

「クソッ……なんだ⁉」


 爆発の衝撃が収まり、水中の砂の靄が晴れると、ついにゾーペントの正体が明らかになった。


「あっ!」

「あれが……ゾーペント!」


 岩間に潜んでいたのは爬虫類と甲殻類を掛け合わせたような生命体で、両腕はかなり独特かつ奇妙な形状をしており、頭部にはシャコに似た目が飛び出ていた。

 だが何より目を引くのは、口から飛び出している触手状の物体である。


「そうか! ゾーペントは口から胃袋を吐き出して遠方の獲物を捕食するんだ! それを見た先人や僕らは大蛇だと勘違いした!」


 ヴェルクやケラスが感じていた違和感は正しかったのだ、皆がゾーペントだと思っていたものは大蛇でも何でもなく、ただの胃袋と食道が裏返ったものに過ぎなかった。


「ムウンッ!」


 ゼフェルは湖底へ降り立つとアストラルハルバードを取り出して構え、ゾーペントは長く伸びた胃袋を口腔内に仕舞いこんで構える。


「……フッ! ドワッ!」


 水中深くだろうと重さを感じさせない動きでゼフェルはゾーペントに迫り、アストラルハルバードを頭目掛けて振り下ろすも、腕の鋏でそれを防がれてしまう。


「あの腕は鋏か」

「だとしたらどうしてあんな複雑な形をしてるんでしょうか?」

 

 アストラルハルバードを防がれたところに、ゼフェルはゾーペントに蹴りを入れて後退させ、アストラルハルバードを分解して二振りのダガーに持ち直す。


「トワァァアアアッ!」


 素早い動きでゾーペントに斬りかかるも、キチン質の装甲は頑丈で表面に傷がつくのみである。


「ムウ……ドワッ‼」


 ゼフェルはアストラルダガーを変化させて斧型武器であるアストラルハーケンにすると、跳躍して縦に旋回しながらゾーペントの肩に思い切りアストラルハーケンを叩きつけた。


「割れた!」

 

 水の渦の力も加わった一撃に装甲の牙城は崩れ、ゾーペントは口から水泡を吹きながら後退する。


「ムゥッ! ハァァァアアアッ!」


 アストラルハーケンの刃を返してピッケル状の刃を叩き付けようと接近したゼフェルだが、腹部に強烈な衝撃を受けて吹き飛ばされてしまう。


「イヨワァッ!」


 凄まじい勢いでゼフェルは吹っ飛び、湖底の岩や砂を巻き上げながら地面を転がっていく。


「青いルミナスに何が起こった!」

「……シャコだ」

「なにシャコ? シャコがどうかしたのか?」

「シャコのパンチですよ!」

「え? シャコってあのシャコか?」


 ゾーペントの右腕は鋏として機能するだけではなく、シャコの捕脚と同様の機能を併せ持ち、これでゼフェルを一撃で吹き飛ばしてしまったのだ。

 体長十センチ前後ほどのシャコですら時速八十キロの加速力のパンチを繰り出すのだから、その約五百倍もの体躯を誇るゾーペントの筋力から放たれるパンチの威力が凶悪なのは言うまでもない。

 むしろ吹っ飛んだだけで済んだのが奇跡なレベルである。


「ドゥアア……アア……」

「二つの機能付きかよ……」

「いいえ、まだあるようです!」


 遠く離れた所に倒れたゼフェルへ向けてゾーペントが左腕を向けると、なんと衝撃波を放って追撃を始めた。


「うっ……ああっ!」

「ヒオ! 大丈夫か!」

「いいっ……()ぅう……ああっ!」

「どうしたケラス⁉」

「ケラス? ケラスしっかりして!」


 ゾーペントが衝撃波を放つとヒオとケラスが急に苦しみ出し、エクスレイドに緊張が高まる。


「待てよ……アールヴ……耳……衝撃波……テッポウエビ!」

「何か気付いたのかウェンディ?」

「あれはテッポウエビの衝撃波砲と同じです、だから高熱と爆音が瞬間的に発生し、耳のいいアールヴの二人が苦しんだのかと思います!」


 見た所この衝撃波砲は短いインターバルで発射する事が出来るようで、近付く事は危険と判断したエクスレイドは遠ざかって状況を確認する事にした。


「クソ……これじゃ援護も出来ねぇ」


 ゼフェルは立ち上がってはいるものの、絶え間なく放たれる衝撃波砲に大苦戦しており、ついにメテオシンボルも赤く染まる。


「どうすれば良いんだ……僕達はどうすれば……」



 

 湖畔でこの戦いを見守っていたリヒトは、ついに立ち上がって水際の崖の上に立った。


「行くんだな?」

「ああ、力を貸してくれソルティア!」


 出現したスパークルトランサーにブリザニングジェムを装填し、レバーを押し込むと深呼吸して、リヒトは前を見据えて叫ぶ。


「おおおおおっ!」


 リヒトが空中で後ろ宙返りを決めながら入水した直後、水面に眩い光が迸った。



 

「ガアッ! ムアアッ!」


 連続で放たれる衝撃波砲を前にゼフェルは成す術無く敗北を喫しかけたその時、突如前方に氷の壁が発生する。


「ゼヤッ!」


 更に上から炎の斬撃が水を切り、ゾーペントに命中して吹き飛ばしてしまう。


「ラクスだ! ラクスが来てくれたぞ!」


 湖底に着地したラクスはグリッドスパークランスを地面に突き立てると、ゼフェルへ向けてティアズヒーリングを放つ。


『ソルティア……助けは不要と言わなかったか?』

『君を助けたんじゃない、君と融合している者を助けたんだ』


 ラクスは突き立てたグリッドスパークランスを取ると構え、ゾーペントはラクスを警戒して動きを止める。


「……フッ! ゼヤッ!」


 先に動き出したのはラクスで、全身を液状化させると凄まじい速度でゾーペントへ近付き、腹部を狙ってグリッドスパークランスを突き出すも、ゾーペントはそれを回避して右腕のパンチを繰り出す。


「……パンチが効いてないぞ!」



「へっへっへ、今の僕に打撃は無効さ」


 水中での活動をしやすくするために液状化したが、水中でも巨人を軽々吹き飛ばす程強烈な打撃を無効化するという思わぬメリットが発生していた。

 

「油断するなよ」

「分かってるって」



 困惑するゾーペントにラクスは腕に火炎を灯して突きの連打を叩き込んで後退させ、ラピッドバレッドを放って追撃する。


「ゼッ!」


 グリッドスパークランスを構えて止めを刺そうとしたもの、ゾーペントは左手から衝撃波砲を放ってラクスを吹き飛ばしてしまう。



「クソッ! 衝撃波で水を散らされた!」


 液状化した体を衝撃波砲によって散らされてしまったのだ。


「絶え間なく冷熱を繰り返す遠距離攻撃で奴の装甲を破壊するぞ」

「じゃあミサイルマイトだな」



 一旦液状化を解いたラクスはスパークランスをミサイルマイトに変えると、ゾーペントへミサイルマイトを連射する。


「オオオオッ!」


 しかしゾーペントは左腕からの衝撃波砲でミサイルマイトを相殺し、両者拮抗状態になってしまう。


「ラクスと拮抗してる……」

「なんて奴だ」

「さすが古代から語り継がれる魔獣だ」

「なんとか援護できないか?」


 イーライは悩んだ末、作戦を捻り出した。

 

「遠距離攻撃の手段を封じます、まずはあっちへ」



 ケイとガレスは衝撃波砲の効果範囲外を保ちながら移動し、ゾーペントの左腕の関節に狙いを定める。


「奴の腕を千切ります、どんな生物も関節が弱点だ。そこを狙って最終魔術砲ファイナル・マギ・カノンを一気に叩き込みましょう」

「同時攻撃って訳ね」

「……一点に叩き込む」


 ずっと緊張した面持ちだったケラスの雰囲気が一瞬で変わり、操縦桿を握る手に少しだけ力が入る。


「同時ですよ、いいですか?」

「分かってるよ、俺はワンドブラスター撃つのは下手だが、魔術砲は百発百中さ」

「みんな準備は良いな?」


 ケイとガレスの魔術砲が展開され、エネルギーが収束していく。


「よく狙って……」


 狙うは一点、ゾーペントの左肘関節。


「チャージ完了! プロミネンスバァァァアアアアンッ!」

最終魔術砲ファイナル・マギ・カノン! ジュースティングスラァァアアアッシュ!」


 三機のガレスから放たれた三日月型の光波がケイによる灼熱の光線に押し出され、絶え間なく衝撃波を放っていた左腕を完全に切断してしまった。


「ラクス! 今だ!」


 ラクスはチャリオッツの方を見て頷くと、ミサイルマイトを鞭型武器グリッドウィップに変化させてゾーペントの首に巻き付け、思い切り引っ張って岩壁に叩きつけてからこちらに引き寄せる。


「ゼッ……ダァァッ!」


 そのまま蹴りをゾーペントの顔面に叩き込んで湖底へ倒してしまうも、ゾーペントは最後の足掻きとばかりに倒れながら口から胃袋を吐き出してラクスを怯ませる。


「ダァッ⁉ ギヨワッ!」


 ぶよぶよとした肉の塊に包まれ、どうにかここから抜け出すべく苦戦していたラクスだったが、閃光が走って突然解放された。


「ゼッ?」


 ゾーペントの胃袋の残骸を取り払って前を見ると、なんとゼフェルがアストラルハルバードを振るっているのが見えた。


「青いルミナスが……ラクスを助けた!」


 驚いた様子のラクスに構わず、ゼフェルはアストラルハルバードをなぞってエネルギーをチャージすると、振り回して遠心力を付けながらゾーペントの胸を切りつけて大きな隙を作る。


『ソルティア! 今だ!』


 

「ゼフェル!」

「重体を押しての一撃だ、無駄にするわけにはいかないぜ!」



 ラクスは再びグリッドミサイルマイトを形成して両手を組むと、ミサイルマイトが変形して両腕に巨大な多連装砲が形成される。



「オメガバニッシュマイトだ‼」



 ラクスの多連装砲から火と氷のミサイルが凄まじい勢いで放たれ、ゼフェルが傷つけた所を中心にゾーペントは文字通り蜂の巣になっていく。


「フゥォォオオオッ……ゼヤアアアアアアアァァァァッ‼」


 最後に放たれた特大火炎ミサイルが炸裂し、水中でありながら巨大な火柱を上げてゾーペントは爆散してしまった。


「ラクスが勝った!」

「いいや、ラクスと青いルミナスの勝利だな」

「それと私達~!」




 戦いを終え、ラクスはその場に座り込んでいるゼフェルの方へ向かう。


『大丈夫か?』


 手を差し出したラクスだが、ゼフェルはアストラルハルバードを杖代わりにして何とか立ち上がった。


『これで貸し借りは無しだ』

『貸し借りじゃない、君と私は友であり仲間じゃないか。助け合うのは当然の事だろう』

『仲間……か、フッ。今の俺には、そんなもの持つ資格はない。君の友である資格もな』

『ゼフェル……』

『貸し借りは無しだ、今後はもう俺の戦いに関わるな、その方が身のためだ』


 ゼフェルは腕を広げて光となって消え、ラクスはその様子を立ち尽くしながら眺める。


『君に一体……何があった?』



 

 戦いを終え、浮上してきたエクスレイドの面々を濡れ鼠のリヒトが出迎えた。


「みんなお疲れ様」

「おいおい、何だその恰好?」

「まさかさっきの一発で?」

「そうなんだよ」


 本当は湖に飛び込んだことでびしょ濡れになったのだが、リヒトはオメガバニッシュマイトの一撃で巨大な水柱が上がった事で濡れたと誤魔化すことにした。


「ドローン……じゃなかった、魚形魔道具がゾーペントのせいで皆とっ散らかっちゃってね、まともなサポート出来なくてごめんね」

「ああいやいや、それは僕の責任です。改良の余地あり……と」

「まあ正直、ゾーペントが強すぎてそれどころじゃなかったよね」

 

 とりあえず怪しまれてはいないようで、リヒトはホッと胸を撫で下ろす。


「さあ、これから帰ってシャワーを浴びてしっかり休めよ? 明日も出動だからな」

「はーい!」

「よし、帰ろう!」


 身体を拭きながらケイに乗り込んだリヒトは、アーブの夜景を見ながら心の中で呟いた。


「ゼフェルと融合している奴って……一体どんな奴なんだろうな?」

「おそらく融合先の人間と上手く連携が取れていないように思えるな」

「無理矢理体を乗っ取ったって事?」

「ゼフェルに限ってそんな事をするとは思えないが……あの消耗ぶりを見るにひとりでアバターを動かしているように思える」

「……ゼフェルについては謎だらけだな」


 分からない事だらけながら、ひとつだけリヒトとソルティアが願っている事がある。


「敵対はしたくないものだな」

「ああ、二人は友人なんだろ? 戦うなんて……悲しすぎる」


 だが二人の願いとは裏腹に、(ひず)んだ運命は友情を引き裂かんとする。

 果たして運命はどのような試練を与えるのか、次回へ続く。



 

To Be Continued.

ゾーペント、かなりお気に入りのモンスターですね。

ズオーギランに次いでお気に入りなので、いつかまた再登場させたい処……。

そしてラクスとゼフェルの関係は今後いかに変化していくのでしょうか?

それを楽しみに次回も見てください。

感想コメント、Twitter(現X)のフォロー、友達へのオススメもよろしくお願いします。

それではまた来週お会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ