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『最果て』の先、『終わり』を望む魔女  作者: まるまるくまぐま
一級魔導士フレデリカ
33/45

束の間の休息

 余裕綽々に二次試験の合格を勝ち取ったフレデリカは、ランフ共和国の首都パンパール、花の都の中心街にいた。

 一級魔導士試験も残るところ最終試験のみ。合格を確信しているフレデリカは、一級魔導士の認定式の為に装束と杖を新調する為に街に出たのであった。

 一級魔導士となった際に渡される紫色のローブ。それに合うドレスや魔法服は勿論、フレデリカのお目当ては、魔法使いの魂ともいえる必需品、杖の新調である。

 

「如何なる装束でも、フレデリカ様の美しさには劣るわ。」

 己の美しさを際立たせることは出来ても、それに優るものは存在しない。そう声高に常日頃宣言するフレデリカだが、そんな彼女でも憧れ、尊敬の念と、美しいと讃える人物がいる。

 天上天下唯我独尊なフレデリカが唯一敬愛して止まない人物。それがチェチェリミナ・ロジオーノヴナ・セラフィマである。

 そんなセラフィマの愛用の杖を模した逸品が出品されたという噂を聞き、フレデリカは居ても立っても居られなかった。

 一級魔導士の認定式にはその杖を携えて出壇する。

 そう心に決めていたフレデリカは、古めかしい老舗の杖店を訪れていた。


「セラフィマ様の杖…憧れるけど高過ぎよ…」

 店内で最も目立つ所に飾られたその杖に、数多の魔法使いが足を止めるが、その破格の値段に首を振る。

 『最果て』に到った者は魔法使いの憧れなのだが、その中でも、セラフィマの人気は男女問わず絶大であった。

 他の『最果て』であるヒルメやサロメが男性人気に偏る中、セラフィマだけは人気比が男女五分五分であり、羨望の眼差しで杖を眺める女性魔法使いが散見されている。

「あれよ…あの杖を買うわ。」

 そんな羨望の眼差しが向けられた杖を指差し、ヘコヘコと頭を下げる店主に向かって宣言する少女の声で、店内が静寂に支配されるのであった。


 店主により、仰々しくフレデリカの手に差し出される杖。

 それを手に取り、フレデリカは店主の手に代金の入った革袋を握らせる。

 その袋をひっくり返し、手を震わせながら中身を数える店主。

 金貨数百枚を恐る恐る数え終え、震える声で言う。

「少し多いのですが…?」

「セラフィマ様を安売りするのが気に入らない

わ。だから私が相応しい値段をつけたわ。文句ある?」

 店主の首元に短杖を突き付けて答えるフレデリカ。そんな彼女に、店主は思った。

 値切ろうと脅してくる連中は腐るほど見てきたが、値上げする為に脅してきたのは初めてだった。



−−−−−−−−−−−−−−−−−


 念願の杖の入手と、新しい礼服のオーダーが済んだフレデリカは、憧れのセラフィマモデルの杖を見せびらかしながら、上機嫌に、意気揚々と街を歩く。


 史上最高の天才だと自負するフレデリカが唯一認め、敬愛するセラフィマ。

 そんな彼女に信仰に近い憧れの感情抱くフレデリカの脳裏に苦々しい記憶が蘇る。

 『最果て』の魔女サロメこと、『首刈り』サロメとの戦いだった。

 そんな、戦いとは呼べない一方的な結果は、フレデリカの自尊心を大いに傷つけているのだが、その時に現れたセラフィマの姿は今も鮮明に脳裏に焼き付いている。

 憧れのセラフィマと憎きサロメ。そんな二人の『最果て』としての力を見たからこそ、フレデリカは思う。


 あの銀髪の女は何者なのか?

 『最果て』以上の力を持つあの女は何なのだ?と。

「サロメだけじゃない…乳オバケ(ヒルメ)も、あの女も…全員フレデリカ様の踏み台なのよ…セラフィマ様と私だけが頂点に相応しいんだから!!」

 自己肯定の為に、己の理想を叫ぶフレデリカ。街中で突然叫ぶ彼女に、周囲はギョッとした目を向けたが、その声の主がフレデリカと知り、そそくさと離れていく。

 そんな周囲の反応には一切気を配らず、先程までの上機嫌は鳴りを潜め、不機嫌さ全開でメヌエール邸へと帰宅するのであった。



−−−−−−−−−−−−−−−−−

−−−−−−−−−−−−

−−−−−−−−



 フレデリカが街で買い物をしていた頃、メヌエール邸ではジェルマン主催の宴会が行われていた。

 ゴーシュ魔法協会に所属する一級魔導士たちが招かれた宴は、不穏分子たるフレデリカの不在もあり、皆上機嫌に酒を飲み、豪勢な食事に舌鼓を売っていた。

 一級魔導士認定試験、その二次試験終了に伴い、試験官を務めた一級魔導士の労いと、その他の一級魔導士から寄せられる意見交換の為に設けられた宴の席は、そんな一級魔導士たちにとって活発な意見交換の場となっていた。

 

「よぉ、バルサン!!お前ぇの弟子は快進撃だな!!」

 ほろ酔いを超え、ガッツリ酔った男がエミールに近づきながらそう言う。

 彼の言葉に、周辺の注目が一斉に集まるのを、エミールは感じていた。

「とんでもねぇ怪物を弟子にしやがって…将来安泰だな!!羨ましい限りだ!!」

 そう笑いながらエミールの肩を腕を回す魔法使いに、エミールは不快な笑みを浮かべる。

 酔に任せ、自由気侭に振る舞う彼は、エミールの十年以上先輩にあたる先輩一級魔導士、アダン・デュドネ。

 エミールにとっては、苦手だけれど頭の上がらない相手でもある。


「羨ましいですか…そう思うんなら、変わって貰いたいもんですね…」

 エミールは心底疲れ切った表情でそう呟く。

「随分と不満そうじゃねぇか?願ったり叶ったりの優良物件だろう?」

 品の無い笑みを浮かべながら酒を煽るアダンに、『優良物件』?巫山戯るな!!あんなじゃじゃ馬の何処が『優良物件』だ!!と心中で怒鳴りながら、何も言わずに疲れ切った笑みを男に向ける。

「駄目だなバルサン…駄目だ…なっちゃいねぇ…」

 そんな笑みを受け、アダンはそう言って溜息を吐く。

「いいか?フレデリカ嬢は絶世の美少女で『千年に一人』の天才なんだろう?そんな最高の女が弟子なんだぜ!!最高のシチュエーションじゃねぇか!!」

 凄い勢いで捲し立てるアダンに、エミールは更にうんざりした表情を向けた。


「いいか、バルサン?…先ずはーーー」

 それからしつこくフレデリカを堕とす手段を解いてくるアダンの言葉聞き流しながら、『食える時に食っておかなければ…』と、エミールは普段なら絶対に口にしない、豪勢な食事と酒を口に運んでいた。

 周囲も皆、思い思いに意見交換や友好を深めながら、腹の探り合いをしている。

 宴もたけなわといった雰囲気が漂い始めた頃、ドォン!!という爆音が響き渡った。

 突然の轟音に戸惑う者たちの中、この宴の主催者であるジェルマンは頭を抱えていた。







 


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