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『最果て』の先、『終わり』を望む魔女  作者: まるまるくまぐま
一級魔導士フレデリカ
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二次試験

 状況判断と移動速度、魔術解析能力…

 二次試験の開始前から試験は始まっている。それを瞬時に理解し、正常な判断基準と一級魔導士として適性な能力を試験官たちは見ている。その篩にかけられているということを想定出来ない者に一級魔導士の資格は無い。

 そんな一.五次試験ともいえる壁を乗り越えた者たちは、驚愕と憎悪の念を、最速で会場入りしたフレデリカに向けていた。

 

 一級魔導士。

 世界に存在する魔法使い、その総数の内1%にも満たない、選ばれし者だけが認められる地位。そこに到る為に、人生の全てをかけて、天才と称された魔法使いたちが、五級から段階を踏んで試験に挑み、その頂きに至ろうと日夜研鑽を積んでいる。

 現に、試験会場にいる魔導士の大多数は二級魔導士で、それ以外も三級の中でもずば抜けた魔導士である。

 そんな試験に見習いを卒業したばかりの魔法使いが受験し、歴戦の魔導士を差し置いて最速の会場入りをしている。

 結局、会場入り出来たのは、二十人程で、二次試験の受験者の半数にも及ばなかった。

 そんな狭き門を潜った魔導士たちの前に現れた、自惚れた天才に、現実を…挫折を味合わせてやろうと、大半の受験者が闘志を燃やしていた。

 


−−−−−−−−−−−−−−−−−


 現実とは非情である。

 その事実を強く認識させられたのは、試験官である一級魔導士ガルシアと、受験者である二級魔導士ゲランであった。

 挫折を、社会の厳しさを味合わせてやろうと、意気込んだゲランと、そんな未来を描いていたガルシアの予想を容易に裏切り、現実を思い知ることになったのは、二人であり、フレデリカは二次試験合格を勝ち取る。


 フレデリカは、圧倒的な実力差を見せつけ、最も一級魔導士に近いと思われていたゲランを赤子の手をひねる様に勝利し、会場全体に絶望感で満たした。

 一級魔導士の受験者たちは皆、天才と称されながらも努力を重ね、何度も挫折を味わいながら何度も諦めずに受験し続けている者が大多数である。

 そんな天才たちの長年積み重ねてきた努力を、たったの一年で飛び越える真の天才の姿は才能の差の前に努力など意味が無いのだという現実を思い知ることとなった。

 勿論、フレデリカ自身も血の滲むような努力を日々重ねているのだが、彼らはそんなことは知らない為、絶望は一入であった。


「時間の無駄だわ…」

 そんな絶望感に苛まれた者たちに一切の興味を持たず、フレデリカは頬杖をついて、退屈そうに二次試験終了を待っていた。




−−−−−−−−−−−−−−−−−

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「まさか残れるとはねぇ…」

 二次試験を最後に終えたのは、受験者の中で最年長の魔法使い、アデールであった。

 齢七十を超えた三級魔導士である彼女は、若き魔導士を相手に不利とも思われる持久戦で勝利した。

 アデールは疲労が表れる表情で、退屈そうに座るフレデリカを見る。

 それは、他の者がフレデリカに向ける憎悪や絶望的な視線とは違い、穏やかな目であった。

「可愛い子だけど、きっと、私には見えない世界が見えてるんだろうねぇ…」

 まるで孫を見守る様な感想を呟く老婆。尤も、彼女の本当の孫は魔法を使えない、しがない務め人であるが…

「才能があって、未来があるってのは、羨ましいもんだよ。」

 己の先が短いことを知る彼女にとって、才能も、若さも兼ね備えたフレデリカは可能性の塊にしか思えなかった。

 

 アデールとて平凡な魔法使いというわけではない。

 彼女よりも歳を重ねていても、魔導士の地位に辿り着けない者の方が多いのだから。

 そんな中で、三級魔導士という地位を持つ彼女は十分才覚ある魔法使いであるのだが、これまで二級や一級へと登り詰めた魔法使いを何人も見てきた彼女は、己の才覚の限界を悟っていた。

 一級魔導士試験に落ち、その二ヶ月後に行われる二級魔導士に落ちる。そんなことを何十年と繰り返してきた。

 限界を感じながらも諦められずに過ごした歳月。

 アデールは、そんな人生に終止符を打つ覚悟を決めた。


「あんな怪物がいるんじゃ、今回は絶対に無理だねぇ…」

 数十年受験し続けた一級魔導士試験。その中で最高の才能を持った少女にそんな諦めを抱きながらも、アデールの瞳には、嘗てない闘志が燃えていた。


 

−−−−−−−−−−−−−−−−−

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 一級魔導士試験が行われている最中、ゴーシュ魔法協会の会長であるメヌエール・ド・サン・ジェルマンは、愛しい絶賛反抗期な玄孫の快進撃を喜ぶ余裕の無い状況で、胃の痛みに耐えていた。


「来期の会合の開催地はマゲイア。異論は認められないわよ。」

 淡々と言うコートヴァ魔法協会会長にして、魔法協会総長代理、チェチェリミナ・ロジオーノヴナ・セラフィマの言葉に、各大陸の代表がざわめく。

 秘密裏に行われている大陸代表クラスのみが参加する打ち合わせには、側近さえつけずに、各大陸の代表のみが参加している。

「マゲイアだと…巫山戯んじゃねぇ!!未開の大陸、おまけに代表不在の地で会合ってのはおかしいだろうが!!」

 セラフィマとは犬猿の仲であるモンモーモルの魔法協会会長アンセルム・ノルドクヴィストが怒鳴る。

「マゲイア魔法協会の代表が不在?そんな妄言を言う者が協会にいるとは思わなかったわ…」

 溜息を吐くセラフィマにアンセルムは青筋を立てて頬を引き攣らせる。

 いつ喧嘩が始まってもおかしくない。そんな状況だった。

「妄言だと…?だったら教えて欲しいもんだなぁ!!魔法協会設立以来、一度も出席したことの無い無人に大陸、マゲイア大陸の代表を!!」

 今回欠席のサロメを除き、セラフィマとヒルメ、『最果て』に至ったニ名を除き、アンセルムから放たれた怒り混じりの魔力に気圧される代表たち。

 セラフィマかヒルメか、どちらかの言葉を冷や汗を流しながら待つ他の代表たち。

 セラフィマが口を開こうとした時、会場が絶望を感じ、圧倒的な力に畏怖した。


「マゲイア魔法協会会長は私だ。面倒くさいからやりたくないのだがな…」

 トンガリ帽子の下から伸びる銀色の長髪に古めかしい魔女の装束と、心底面倒くさそうな真紅の瞳。

 あれ程気を巡らせた超一流が集結した会合の場で、誰にも察することが出来ずに現れた女に、呆気にとられる。

 咄嗟に杖を取り出す者たちも、手が震え、魔法を放つ前に杖を落としている。

 辛うじて魔法を放てたのは、アンセルムだけだった。


「児戯は他所でやれ。」

 アンセルムの魔法を蝿を払う様に打ち消し、退屈そうに頬杖をつく女。

「全く…ダスピルクエットめ、余計な組織を創りおって…」

「お師匠様、そう仰らずに…」

 不機嫌そうに漏らす女に、セラフィマは申し訳無さそうに頭を垂れる。

「仕方無い…不出来な弟子の尻拭いも、師の務めだからな。」

 そんなセラフィマに一瞥を向け、溜息混じりにそう言う。


「代表たる私が命じているのだ、マゲイアでの開催で異論は無かろう?」

 放たれた余りにも桁違いの魔力に、各大陸で最強である筈の魔法使いたちが、呼吸をするのが精一杯で、賛同する以外の選択は無かった。










 

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