4話 紫色の芍薬
しかし、嫌な予感とは何度も当たるものだった。・・・・あの日、会長に呼ばれた日もそうだった。
屋敷内で、引き続き仕事をこなしていると、突然玄関の辺りが騒がしくなる。様子を見に向かうと、そこには若頭が、急いで屋敷に帰って来ており、目が合った瞬間「るりの所へ向かう!!」と言い放つと、先に手配していた車に乗り込んだのだった。
追いかける事も、事情も確認する暇も与えて貰えない、緊迫した時間が過ぎる。
内容の確認が出来たのは、若頭についていた部下が戻り、数人で追いかけるように、お嬢さんの実家に向かえという指示があったからだ。そこで、お嬢さんと一緒に行っていた部下からの連絡で、お嬢さんの身に何かあり、今は病院に居ると簡単に告げられた。
急ぎ精鋭部隊を用意し、後れを取るような形になったが、怒り狂う若頭の姿と、その傍らにお嬢さんの親と言われる人が、先に若頭と到着していた部下に、地に顔を押さえつけられ藻掻いている様子だった。
「若頭、遅れて申し訳ありません。」
「ええで、ほな、ここは任せたからな。」
「はい。」
怒りで声は低く、田中以外の部下は震え上がり、京極彰の姿が消えるまでは、部下たちの額に脂汗が滲んでいた。
「では、任せられた仕事を始めましょうか。」
「へいっ」
お嬢さんが、されたことをそれ以上に親、子関係なく見せしめにとのお達しだった。
田中は、他に、関係するものがいないか詳しく調べるように、部下に指示を飛ばし、京極彰の後を追った。
病室を受付の看護婦に案内され、室内を覗き込むと、ベッドには痛々しく横たわる、るりとその傍らに声をかけ続ける京極彰。数日前の情景がこの瞬間だけ、嘘だったのではないかと思わされる。
今の状況で、安易にすぐ目覚めます。と言葉をかける事も出来ず、ただ、ただ、病室の外で、若頭の指示がいつでも対応できるように控える事が最大の行動であった。
それから数日経ちお嬢さんが目を覚ますと、まず今回の原因になった、実の母親に会いに行くとゆう。
若頭はお嬢さんを心配していたが、確固たる意思が宿る瞳に折れ、会わせるとこにしたのだった。怪我は酷く歩ける状態では無いため、お姫様抱っこで向かうその姿は少し痛たましい様な。しかし、二人が決めたことだと後ろから見守るほかなかった。
お嬢さんの意思は、固く実の母親を、自身の手で亡き者にして、笑った顔は、強い女性特有のものだと感じた。
3ヶ月後、ようやくるりは退院する事になった、ただ、後遺症は残ってしまい、すぐに歩くことは出来なかった、その間も京極彰から手厚い介抱を受けやっと京都の屋敷に戻ってきた。
若頭が車椅子のお嬢さんを押し屋敷の前に誘う。
「田中、例のモン頼んだで。」
「はい、もう既に手配しとります。」
若頭が、お嬢さんの入院中に頼んでいたのは、お嬢さんが好きだと言っていた青い薔薇とサプライズのプレゼントだった。
屋敷一面に敷き詰められた薔薇に、お嬢さんは歓喜の声を漏らし、用意された部屋で、受け取ったであろう、ブルーダイヤモンドの指輪と共に、若頭からのプロポーズを心より、受け入れる事になり、内心、組内が安堵したのだった。




