番外②.四馬鹿祭りだ、ワッショイ!
途中で視点変わります。
(大バカ王視点です)
「お~いメイド(笑)、こっちエール2つ追加!」
「は、はぁ~い。ただいまぁ~」
「串焼きまだかぁ~?早くしろよ馬鹿メイド!」
「す、すみませ~~ん、今お持ちしますぅ~」
公爵の目玉刑から数週間後、(腹の立つ事に)『四馬鹿に苦労をかけられてる者同士、励ましあう会』というガーデンパーティが開かれ、本来なら自分で好きな料理を取りに行く形式だが、俺達は弁償の為バイトとして働かされていた。
しかもご丁寧に、わざわざメイドの格好でだ。
「くそぅ、何で俺達がこんな目にぃ~」
「我慢です、陛下」
サイラスに宥められるが、不満は収まらない。
「やってられるか、こんなの!」
盆を地面に叩きつけると、サイラスが慌てて止める。
「ダメですよ陛下、サボったら公爵に怒られます。次はどんな罰かわかりませんよ?それに…」
サイラスがチラリと、会場の一角に目を向ける。
「あれよりは、マシでしょう…」
「あぁ…」
サイラスの視線を辿って、納得する。
視線の先には、同じくメイド服を着せられたビルが飛び回っていた。
あちこち呼ばれては、見た客すべてに指を指され、笑われている。
しかも俺達がノーメイクで普通のメイド服なのに対して、ビルは膝上のミニスカメイドの上、顔も厚化粧されていた。
更に言うなら、ビルだけ胸に詰め物(大)がされていた。
そのせいでかなり胸元が苦しいらしく、息が荒くなっている。
「…あの詰め物、片方だけで3kgだそうです…」
「…絶対『胸小さい』って言ったせいだな…別に公爵の胸は、小さくないのに…」
「ビルは巨乳好きだから……」
はぁ、と2人揃ってため息をつくと、背後から声をかけられた。
「2人共、何サボっているんですか?」
「「わっ!!」」
振り向くと、公爵とエリックがいた。
「サボってる分、給金から引きますよ?」
エリックが、眼鏡をクイッと上げながら言う。
「うるさい、こんなのやってられるか!大体何で女装なんだよ!?」
俺の疑問に、エリックに代わって公爵が答える。
「それは貴方達が「女がいい」と、言ったからでしょう?でもどうしても嫌なら、別の方法で払ってもらいます」
「え、いいのか?」
俺は拍子抜けしたが、サイラスは余計警戒を強めたようだ。
「…ちなみに、その別の方法とは?」
「その格好で荷車で王都中をパレード…」
「あ~っと、休憩もそろそろやめて仕事に戻らないとなぁ~!」
「そうですね!あっちのテーブルとか、さっき呼ばれてましたね!!」
俺とサイラスは、慌てて仕事に戻った。
((城の中だけならまだしも、王都中のさらし者になるなんて耐えられるか!!!!))
(公爵視点です)
慌てて仕事に戻る2人を見送りながら、ため息をつく。
「全く…目を離すとすぐサボろうとするんだから」
「しかし公爵様が釘を刺して下さったお陰で、もうサボろうとは思わないでしょう」
「そうね。祭り自体は盛況のようだし、人が多い分トラブルが起きるでしょうけど、あとは随時対応していけば…」
見回すと、巨大リスと目が合った。
そのままよたよたと、こちらに歩いてくる。
「お姉様~、この着ぐるみ暑いわ~」
リスの着ぐるみを着たエイミーが、文句を言う。
「…あら、リスは嫌い?」
「好きだけど、暑いわ~」
「…似合ってるわよ」
「わぁ~い、ありがとう~。でも暑いわ~」
よっぽど暑いのか、中々誤魔化されない。
そこまで考えて、別の案が浮かんだ。
「そうね、じゃああと2時間頑張ったら、別の衣装に着替えていいわよ。衣装は用意しておくから、2時間経ったら、着替えてきなさい」
「わぁ~い、お姉様ありがとう~」
そう言って、巨大なリスはよたよたと去っていった。
~数時間後~
「ウサちゃ~ん、こっちエール追加~」
「はぁ~い」
「ウサちゃ~ん、おつまみ2人前ね~」
「はぁ~い」
巨大リス改めウサちゃんが大好評だ。
「…あれだけバカ王妃を嫌っていたのに、不思議ね…」
「メイド服に、ウサ耳と尻尾をつけただけなんですが…謎ですね」
私とエリックは、引っ張りだこのうさぎエイミーを見ている。
「まぁとにかく、これで城で働く者達の不満も解消されたでしょう」
「そうですね、これで当分は……失礼」
エリックが、逃げようとしている巨乳メイドを見つけて走る。
仕方ないので私1人で、見回りを続ける。
「「いいじゃないか、いいじゃないか~」」
「良くない!良くない!やめろ!!」
「あ~れ~~!誰かぁ~お助けぇ~~!」
酔った勢いで絡んでくる兵士や、迷子の保護などをして戻ってくると、バカ王とバカ宰相が何故か酔った兵士と相席して抱き疲れたり、服を引っ張られたりしていた。
特に問題なさそうなので、放っておいた。
離れたところでは何故かエイミーが、メイド達相手に化粧品のレクチャーをしていた。
「ナンチャッテ商会はダメね。効果が全くないわけじゃないけど、本当に申し訳程度だから。1番はやっぱりセレブ商会ね。色んな国の王族御用達だし、高いだけあって希少な薬草なども使ってて、金に糸目をつけないなら、お勧めよ」
「でもセレブ商会は高すぎて…一介のメイドではとても…」
「それなら私に任せなさい!一配送先で20個以上購入すると、割り引いてくれるの。最大で50%割り引いてくれるわ!」
エイミーが胸をドンと叩くと、メイド達の顔が明るくなる。
「まぁ、それなら私達でも買えそうですわ」
「う~んでも、私達みたいな下っ端メイドには、それでもちょっと…」
一部のメイドが暗い顔をすると、エイミーが別の商会を勧めた。
「それならB級商会ね。セレブ商会よりぐんと落ちるけど、値段も効果もまぁまぁよ。値段は大体このぐらい…」
暗かったメイド達が笑顔になる。
「それなら私達でも買えます!」
「ありがとうございます、エイミー様」
「良いのよこれくらい~。オホホホホ~~」
ぼんやり眺めていると、エリックが戻って来た。
「ただいま戻りました。お傍を離れてしまい申し訳ありません」
「良いのよ別に」
それ以上言う事もなく、2人で会場の隅に移動して、ぼんやりと祭りを眺める。
そのうち花火が上がり始めた。
「…………」
「…………」
無言で花火を眺めていたら、手をつながれた。
私は目を向ける事なく、振り払う事もなく、花火を見ていた。
エリックも何も言わずに、空を見上げていた。
周りには花火を見て、歓声を上げる客、酔い潰れて路上に寝転がっている客、散らかったままのからのテーブルなどがあったが、今は見ないようにして、目の前の花火と、繋いだ手のぬくもりだけに集中した。
やがて最後の花火が上がり、そろそろ祭りも終わりかけた頃、ポツリと言った。
「…後片付け、どうしよう」
「明日四馬鹿にやらせましょう。結構サボっていたみたいですし…」
「そうね…」
後日、全身筋肉痛でのたうつ四馬鹿の姿があった。




