番外②.四馬鹿は罰を受ける(前)
途中で視点変わります。
(大バカ王視点です)
暴れ馬公爵に捕獲された日の夜、俺達は公爵の前に正座させられていた。
俺達3人の顔(エイミーだけ無傷だった)は、手当てして何とか喋れるようになったが、喋る雰囲気ではなかった。
「さて皆さん、覚悟はできていますね。まぁ出来てなくても、罰は受けてもらいますが」
目の前で公爵が仁王立ちしている。
口調は丁寧だが、怒りの気配が嫌でも伝わってくる…冷や汗が止まらない。
「待ってくれ、その前に…何故エイミーだけ無傷なんだ」
「何を言ってるんですか。武器を持った凶悪犯でもないのに、女子供に手を上げる兵がいたら、即解雇です。当然でしょう」
少しでも先延ばしにしたくて、とにかく思いついた事を言う。
が、あっさり公爵に受け流された。
後ろにいた兵士が、ビクッとしただけだった。
「それと先に言っておきますが、貴方方が壊したのは婚約指輪ではありません」
「「「「え?」」」」
予想外の言葉に、全員顔を上げる。
「どういう事?確かにあの指輪が届いた時、『婚約指輪』って言ってたのに」
エイミーが首を傾げる。
公爵が呆れた顔で、はぁ、とため息をついた。
「エイミー貴方、また人の話をちゃんと聞いていなかったのね。私は『婚約指輪と一緒に取り寄せた、外交で取り扱う予定の品だ』と、言ったのよ」
思いがけない朗報に、全員が顔を明るくする。
「なぁんだ、そうだったの。あー良かったぁ」
「一時はどうなる事かと」
「何だ人騒がせだな」
「これで解決ですね」
全員が胸を撫で下ろしたが、その態度が公爵の怒りに油を注いでしまった。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ、いひゃい!いひゃい!いひゃい!!!!」
「「「いひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!ひゃめろ!!!!」」」
公爵とエリックと控えていたメイド長達に、思いっきり両頬を引っ張られて悲鳴を上げた。
「な・に・を・ふざけた事を言っているのかしら!?人の部屋に入り込んで、下着を漁った挙句、貴重品を壊した事に変わりはないでしょう」
散々引っ張られた後、公爵に睨みつけられる。
「それで?外交用の品を壊して、外交に支障をきたさせて、何を企んでるのかしら?」
俺達は真っ青になった。
(外交に支障って…そこまで大事になるとは)
「待て、誤解だ!」
「僕達にそんなつもりはありません!」
「うっかりしちゃっただけなの!わざと壊そうとしたわけじゃないの!」
「そもそもあんな胸の小さい下着に興味ない!どうせならもっと大きい方が……ぶばぁっ!!!!!」
余計な事を言ったビルが、公爵から強烈なアッパーカットを食らって、後方に吹っ飛んだ。
「チッ、このワイセツ物が!」
さらに機嫌が悪くなった公爵が、吐き捨てる。
その迫力に、震えあがるしかなかった…。
「罰として貴方達には、こちらの部屋で一晩過ごしてもらいます。食事もベッドもトイレも完備してるので、不自由はないでしょう」
公爵は俺達を2つの部屋の前に連れてくると、そう言った。
「どちらの部屋を選ぶかは自由です。ただし開けて中を確認するのも、入った後で変更するのも許しません。10分以内に決めなければ私が決めます。逃げ出した場合はペナルティーとして、後日両方の部屋に、放り込みます」
怒りの公爵を前にして、俺達は悩んだ。
「どうする?」
「どうって…入るしかないでしょう」
「それはわかってる。問題はどういう組み分けで、どちらの部屋に入るかだ」
「順当に考えれば、2:2だけどな…」
「お姉様の事だから、きっと普通の部屋じゃないわ…」
俺達は2つのドアに、視線を向ける。
どちらも一見普通の客室だ。
少しでも隙間から様子を伺えないかとドアに張り付くと「少しでも開けたら、その部屋に決定です」という恐ろしい宣告に、そっとドアから離れた。
「…とりあえず、どういう組み合わせで中に入るかを、決めましょう」
サイラスの提案で、先に組み合わせを決める事になった。
「俺とエイミーは夫婦なのだから、当然一緒だろう」
「わかりました、では僕とビルが同じ部屋という事で」
「「「「…………」」」」
割とあっさり決まってしまった。
組み合わせが決まった以上、どちらの部屋に入るかを、決めなければならない…。
もう一度ドアを見る。
様子を探りたいが、近づくのも恐ろしい。
「…なぁ、メイド長。ヒントをくれないか?」
とりあえず、メイド長に助けを求める。
「ヒントですか?」
「そう。左の部屋はどんな感じか、とか…」
「ひ、左の部屋ですか!?………私の口からは何とも…ううっ!」
聞いた途端、メイド長が口を押さえて後ずさる。
ただ事でない様子に、狼狽える。
「ひ、左の方が酷いのか!?」
「いえ、どっちもどっちです」
慌てて聞くと、さっきまでの様子が噓のように、ケロリとした態度で答える。
どうやら俺達は、揶揄われていたようだった。
悩んでいると、突然ビルが宣言した。
「俺は右のドアにする!」
「………根拠は何ですか?」
サイラスが、眼鏡をクイッと上げながら聞いた。
「さっき左のドアに張り付いた時、かすかに甘い香りがした気がした!」
その言葉に、過去の地獄が頭をよぎった。
「まぁ、じゃあ左は甘いお菓子があるのかしら?楽しみね♪」
「………そうだな」
過去の甘味地獄を忘れたのか、エイミーが無邪気に喜ぶ。
ビル達が右を選んだ以上、左に行くしかない。
「どうやら決まったようですね、では行ってらっしゃい」
公爵が(これみよがしに)ハンカチを振って、送り出す。
俺達は覚悟を決めて、ドアを開けた。
(サイラス視点)
ドアを前にして憂鬱な僕と対照的に、ビルは笑顔だった。
「あ~先に宣言してよかった、甘味は嫌だからなぁ」
能天気な友人に、苛立ちを覚える。
「何呑気なこと言ってるんだ、向こうが甘味ならこちらは当然…」
「まぁまぁ落ち着けサイラス。どのみち入らなきゃいけないんだから」
「まぁそうだけど…」
「それよりそろそろ入ろうぜ、俺腹減った」
「あぁ…そうだな」
言い合っても仕方ない。
諦めてドアを開けると…
そこは部屋中、目玉だらけだった。
壁という壁に、目玉が埋まっていた。
脳裏に、過去の怪談がよぎった。
隣で、ビルが絶叫した。
僕の喉からも、悲鳴が上がった。
覚えているのは、そこまでだった。
気が付いたら朝で、ビルと一緒に、目玉部屋に寝かされていた。




