番外②.四馬鹿は誰にも予測できない
途中で視点変わります。
1G=1円です
(大バカ王視点です)
公爵の魔の手から逃げ出したものの、エイミー達とはぐれてしまった。
俺は現在植え込みに隠れている。
「何とか馬を手に入れなければ…」
植え込みに隠れながら、厩舎に移動しようとしたところ、兵達の会話が聞こえてきた。
「四馬鹿が、逃げ出したらしいな」
「あぁ、何でも公爵様の部屋に忍び込んで、公爵様の宝物を壊したとか聞いたぞ」
「え?俺は、下着を盗もうとしたって聞いたぞ?」
(な!誰があんな女の下着など盗むか!!)
思わず声を上げそうになったが、必死でこらえる。
そこに、また別の兵士がやってきた。
「おい、四馬鹿用の手配書が、回ってきたぞ」
「手配書~?ちょっと、大袈裟じゃないかぁ~?」
「まぁそう言うな、中々傑作だぞ。見て見ろ」
「「どれどれ~?…………ぶわっはっはっは!」」
後からやってきた兵士が、先にいた2人の兵士に手配書を見せると、2人とも大笑いした。
気になった俺は、植え込みから少しだけ顔をのぞかせる。
「何だよこれ~~??懸賞金、騎士団長が30万Gで、宰相が10万Gなのに、王妃が3万Gで、大バカ王が500Gだと~~~~」
「金額逆だろぉ~~??どんだけ価値ないと、思われてんだよ。あは、あはははははは~~~~」
(な、な、何だとぉ~~~~~~~)
憤慨する俺に気づかず、3人の兵士達はなおも笑い続ける。
「ひぃひぃ、俺腹いてぇ」
「俺も~~。他の3人はともかく、500Gなんて子供の小遣いレベルだろぉ~~」
「誰が捕まえるんだよ、こんなの」
「全くだ。労力の無駄じゃん」
「まぁまぁ。懸賞金はともかく、ここ見ろよ」
「「ん??生け捕り必須。ただし多少の怪我は不問とする…ってことは、合法的に四馬鹿を殴れるってことかぁ!」」
2人の兵士が、顔を輝かせる。
「そうそう。こんなチャンス滅多にないぞ!それともう1つ、こっち見てくれ」
「「ん、何だ?」」
兵士が手配書とは別に、白い紙のような物を、見せる。
「同時進行で賭けもやってるんだ。『四馬鹿がいつ捕まるか』って」
「へぇ~~面白そう。じゃ俺は、『30分で大バカ王が捕まる』に1000G」
「俺は…そうだな、『15分で大バカ王が捕まる』に3000G」
「おいおい、早すぎないかぁ~」
「「だって、国1番の大バカだもん」」
兵士達が、笑いながら声を揃えて言う。
その様子に、俺の堪忍袋の緒が切れた。
「ふざけるな、貴様ら!」
植え込みから出てくると、兵士が持っていた手配書を奪い取る。
「誰だ、こんなふざけた手配書を、バラ撒いたのは!」
手配書を確認すると、兵士達が言った通りの内容が書かれており、やはりというべきかミラー公爵が首謀者だった。
(公爵視点です)
客室のドアがノックもなしに突然開けられて、怪奇ジャガイモ男もとい、顔をボコボコにした大バカ王(多分)が、入ってきた。
壁に手をついて辛うじて歩いてる状態で、顔は見る影もなかった。
「ふぉうひゃく、ひさま。よふも、ふぉんなふじゃけたふぇふぁいひょを、ふぁしてふれたな(公爵、貴様。よくも、こんなふざけた手配書を、出してくれたな)」
私は一瞬驚いて、ティーカップを持ち上げていた手を止める。
「よくここまで、たどり着けましたね」
「ふぉふぉにふるまで、ふぇいしはちに、ひっぱいあぐられた(ここに来るまで、兵士達に、いっぱい殴られた)」
「なのに、捕まらなかったんですか?」
「あひふら、『ふぉどものほづかいへべうで、ふかまへてほなぁ~』なんへ、ひっては(あいつら、『子供の小遣いレベルで、捕まえてもなぁ~』なんて、言ってた)」
思い出して怒りが再燃したようで、テーブルを拳でダン、と叩く。
「そうですか。誰も懸賞金を求めないなら、もっと低く設定すればよかったですね」
そう言って、口に運びかけていた紅茶を飲む。
その態度が気に入らなかったのか、大バカ王がもう一度、テーブルを叩く。
「ふはけるな、ひさま。なんれへはいひょなんて、へはいひた。なんれほれが、ひひばんひふいんだ(ふざけるな、貴様。何で手配書なんて、手配した。何で俺が、一番低いんだ)」
「何でと言われても…難易度で決めましたから」
「はんだほ!?ほんはのへひみーより、ほれのほうは、ふかはへやふひといふのは!(何だと!?女のエイミーより、俺の方が、捕まえやすいというのか!)」
「捕まえやすいですわよ。国一番の大バカ王ですもの」
そこまで言って、空になったティーカップをソーサーに戻す。
「ほれは、はかじゃなひ!(俺は、バカじゃない!)」
「いいえ、バカですわよ。だって…」
大バカ王の後ろにいる人物に、目をやる。
背後にいたエリックが、大バカ王を殴ると、バカはあっさり気絶した。
「手配されてるとわかってて、自分から相手の所に乗りこんでくるんですもの」
気絶したバカを、エリックが縛り上げるのを眺めながら、ため息をついた。
「手配書をバラ撒いて、10分…早すぎね。これでは城で働く者たちの、憂さ晴らしにならないわ」
「まだ1人目ですし。これは特別馬鹿ですし、他はもう少しマシでしょう」
「そうね」
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休憩が終わって、再び書類仕事と格闘してると、エリックが報告して来た。
「たった今、宰相が捕獲されたと連絡が来ました。これで全員です」
私は机に、顔から突っ伏した。
「あの馬鹿共、早すぎでしょう!?まだ手配書をバラ撒いてから、2時間と経ってないわよ!!!!」
「開始10分で大バカ王、35分で王妃、1時間15分後に騎士団長、1時間45分後に宰相…これでは、合法的に殴らせて憂さ晴らしさせたり、いつ捕まるか城内で賭けて、娯楽でストレス緩和させる計画が、台無しです」
「あぁもう、本当にあの馬鹿共は、予想外の事ばかりして!」
顔を伏せたまま、頭を抱える。
「バカの思考は、本当に不可解ですね…。それより、捕獲した兵士達から『あまりに簡単すぎて、本当に懸賞金がもらえるのか』と、不安の声が上がっています。それと、実施期間が短すぎて手配書が回りきらず、『聞いてない、フェアじゃない』と、不満の声も大多数上がってます」
気を取り直して、机から顔だけ上げて指示を出す。
「懸賞金は予定通りに配って。それと参加できなかった者たち…いえ、いっそ城内全ての人間に、後日改めて無料の立食パーティを行なうと伝えて」
「立食パーティ…ですか?」
「そう。『日頃四馬鹿に迷惑を被ってる者たちを、励ましあう会』とでも言えばいいわ。そうすれば慰労会だと認識して、四馬鹿へのストレス発散になるでしょう。費用は公爵家から出すわ。2回に分けて必ず城内の人間全員が、参加できるようにして。料理の持ち帰りは許さないけど、家族や友人も連れてきて構わないと喧伝して」
「なるほど。当初の目的の不満解消をさせて、公爵家が費用を出す事で、改めて公爵様への忠誠を強める狙いですか」
「そう。どうせ四馬鹿共には、出すお金なんてないし、かえって皆を怒らせそうだもの」
「承知しました」
エリックが一礼する。
そこでふと、疑問がわいた。
「ねぇ、他の3人はどうやって、捕まったの?騎士団長とか脳筋な分、手こずりそうな感じだけど」
私の質問に、珍しくエリックが嫌そうな顔をした。
「まず王妃ですが、堂々と城門まで行って『私は王妃なのよ。命令よ、開けなさい』と、門番に迫ったそうです。次に騎士団長ですが、調理中の匂いにつられて、厨房に忍び込んでつまみ食いしていた所、食べ物を喉に詰まらせて悶絶してる所を、見つかったそうです。最後に宰相ですが、厩舎で馬を盗んで逃げようとした所を見つかって、慌てて逃げようとして馬糞を踏んで、滑って転んだ所を捕まったそうです」
あまりのくだらなさに、言葉が見つからなかった。
「………聞くんじゃなかった」
それだけ言って、私は再び机に突っ伏した。




