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番外①.一生下僕確定だぞ(泣)!

前話のラストから、婚約破棄が成立するまでの舞台裏です。

途中で視点が変わります。

お食事中の方は、引き返して下さい<(_ _)>


私達は白目をむいて気絶した4人を、冷めた目で見下ろしていた。

「ママぁ~ですって。全く情けない…」

「まだ途中までしか、話してないのに…」

「これが次期国王と、その側近…」

「我が妹ながら、呆れるわ…」

呆れた気持ちで見ていると、4人の足元が濡れている事に気づいた。

「嫌ですわ、この4人失禁してますわ」

「こいつらいくつよ…」

「我が国の未来は、暗いわね…」

「妹だからって甘やかしすぎたようね。再教育が必要だわ…」

4人は待機していたそれぞれの馬車の御者を呼んで、事情を話したうえで後始末と連れ帰る事を頼んだ。



(エイミー視点)


私は気がつくと、自室のベッドの上で寝ていた。

メイドに聞くと、学院でお漏らしした私を、姉がそのまま連れ帰ってきたらしい。

そして今姉から事情を聞いた両親から、説教を受けている。

「全く…いい年して情けない」

「病弱だからと言って、甘やかしすぎたか…?」

「違うわ、事情があったのよ…」

小言を言われる事に納得がいかず反論するが、あっさりと一蹴された。

「事情ならアイリーンから聞いている。アイリーンの怪談に耐えられず、粗相したそうだな」

「そうよ、あんな怖い話をするお姉様が悪いのよ!」

「人のせいにするのはよしなさい。確かに怪談話は怖いだろうが、お前や殿下達が自分から「聞きたい」「参加したい」と、言ってきたそうじゃないか」

「それは…そうだけど、怪談だなんて知らなかったのよ」

落ち着かなくて、膝の上で手をモジモジする。

そんな私に、両親が呆れたようにため息をつく。

「知らなかったとしても、自分で「参加したい」と決めた以上、お前の判断ミスなだけだ。貴族なら怪談とわからなくても、自分に合わない話かもしれないとか、相手の忠告を受け入れるかどうか、見極めるのも重要だ」

「…………」

悔しいが、もはやぐうの音も出なかった。

「お父様、お母様。もうお説教はそのくらいにして、晩餐にしましょう。今回の事はエイミーにも良い教訓になったでしょうし、次は今回の失敗を生かせればそれで良いでしょう」

「まぁそうだな」

「そうね。次の教訓にできれば、それで十分よね」

お姉様の助言にホッとする。

そのまま4人連れ立って、食堂へと移動する。

「そういえば、今夜のメニューは何なの?お母様の週は、終わったのでしょう?」

お父様の時に週替わりと聞いたので、当然お母様も一週間で終わると思って何気に聞いたのだが、思いがけない言葉が返ってきた。

「えぇ。お母様の週は終わって…今週は私の番よ」


エイミーは逃げ出した!

アイリーンは動きを封じた!

エイミーは逃げられなかった!


「お、お、お姉様の週って…」

恐る恐る振り向くと、笑顔のお姉様と目が合った。

「ウフフ大丈夫よ。私は甘党でも辛党でもないから。健康重視のメニューだから、是非食べなさい♡」

そう言ってお姉様は、私を着席させた。

何気に、命令形なのが怖い。

観念した私は、恐怖に震えながら運ばれてきた食事を見て、目を丸くした。

「…………え、ナニコレ」

用意されたのは、ごく普通の食事だった。

白いドレッシングのようなものがかかった、野菜サラダとコーンポタージュスープ、それにライ麦パンだけだった。

「健康重視のメニューだと、言ったでしょう?あれだけ高カロリー、糖分過多な食事を、なかった事にするには、運動だけじゃ足りないわ。しばらくは糖分塩分控えめの、低カロリーのメニューよ」

(お父様とお母様は、納得してるのかしら?)

2人を見ると、ニコニコと笑顔で食べていた。

「ちょっと物足りないが、アイリーンが家族の健康の為に、考えてくれたメニューだからな」

「そうね。アイリーンの気遣いを、無碍にはできないわね」

どうやら本当に、普通のメニューのようだ。

(私、お姉様を誤解していたみたい)

初めて家族揃って食べたまともなメニューは、とても美味しかった。


その夜、部屋でくつろいでいると、ノックの音がしてお姉様が訪ねてきた。

「お姉様、どうしたの?」

この頃には、お姉様への警戒心はすっかりなくなっていた。

「エイミー、昼間の事で私からも言う事があったの」

「言う事?なぁに?」

首を傾げると、お姉様が笑顔で仰った。

「あの程度の怪談で気絶して、あまつさえ粗相までするなんて、私の妹にあるまじき大失態だわ。だから貴方が2度と同じ過ちを犯さないよう、これから毎晩怪談を聞かせて、耐性をつけさせる事にしたわ。頑張りなさい」

「え」

一瞬で、血の気が引いた。

逃げようにも、ドアは姉の背後だ。

「貴方が怪談を最後まで聞いても、動じずにいられたら、課題クリアよ。嫌なら早く耐性をつけなさい」

「~~~~~~~~~っ」


この夜、公爵邸にエイミーの声なき悲鳴が響き渡った。

しかし課題クリアは、思ったより早かった。

エイミーは限界を超えた末に、都合の悪い話を右から左に流す術を、身に着けた。

こうしてエイミーのお花畑度が、さらに上がった。




(王子視点です)


城に戻った俺は、父上と母上から説教を受けていた。

「全く、いい年して情けない」

「いくつになったと思ってるの…本当にもう呆れるわ」

2人の言い様に、俺はカチンときた。

「そうは仰いますが、あんな怖い話を聞けば、誰だって…」

思い出しても、身震いする。

「何を馬鹿な事を言っておる、ただの作り話であろう?」

「そんなものを怖がって、粗相をするなんて…」

父上と母上が全く理解してくれず、呆れたという態度に更に腹が立った。

「そんなに言うならアイリーンを呼んで、同じ話を聞いて見て下さい。聞いた後もお2人が同じことを言えたら、潔く認めて何でもしますよ」

「ようし言ったな?面白い、今すぐミラー公爵令嬢を呼んで来い」


「何なのですか?私これから妹に、初の読み聞かせをするところだったのですが…」

不機嫌を隠しもしないアイリーンに、俺が事情を説明する。

「アイリーン、お前が昼間俺達に聞かせた、怪談を父上達にもしてくれ!」

言った瞬間、顔面を扇で叩かれた。

「婚約破棄した相手を、名前で呼ぶな!」

「…申し訳ありません」

俺は痛む鼻を押さえながら、謝罪した。

「ミラー嬢…いくら婚約者といえど、王族を叩くのは不敬だぞ」

「そうね。いくら婚約者でも、身分はわきまえなさい」

言われてみれば、そうだった。

俺は王族で、あいつは臣下の娘なのだ。

しかしアイリーンは父上達の小言を、却下した。

「大丈夫です。浮気男に人権はないと、決まってますから」

「な!誰がそんなことを言ったんだ!」

俺は憤慨した。

(浮気したからって王族なんだ、何やっても良いに決まってる!)

するとアイリーンは、持ってきていたポーチの中から、小さめの本を取り出した。

「王妃様出版の『名言100集』です。「浮気男に人権はない」と、王妃様自ら宣言なさってます」

「…………父上?母上?」

俺が目を向けると、2人はさっと目をそらした。

父上にいたっては、冷や汗だらけだ。

「それと私と殿下は婚約破棄してます。殿下が私の妹と恋仲になった挙句、私に濡れ衣を着せて婚約破棄すると、全生徒の前で宣言なさいました。3週間前の話ですからもう揉み消しもできず、確定です」

「な、何だと!?」

「何ですって!?」

(マズイ、この展開は予想してなかった)

2人は俺に向き直り、今度は俺が冷や汗をかいた。

「お前、何勝手な事をしてるんだ。3週間も経ってるんじゃ、とっくに令嬢子息から親の耳に入っているだろう。ミラー嬢の言う通り、揉み消す事ができないじゃないか!」

「揉み消しなんて、とんでもない!俺とエイミーは真実の愛で、結ばれているんです。政略結婚なんて、真っ平だ!それよりもアイリーンの恐ろしさを…」

俺は何とか軌道修正しようと父上を説得したが、その前に母上が口を挟んできた。

「あぁこんな事なら『最後の学生生活を自由に過ごしたいから、王家の影をつけないでくれ』なんて、認めるんじゃなかった…まさしく陛下の血ね。あぁ情けない」

「いや、儂の事は今は関係ないだろう、まずは婚約破棄の件を…」

「何言ってるんですか!そもそも陛下の浮気性がこの子に遺伝して、今回の騒ぎに…」

「父上母上、それよりも本題の怪談を…」

「お黙り!」

「そもそもお前が、勝手に婚約破棄の宣言などするから、こんな騒ぎになったんじゃないか!」

「いいえ、陛下が浮気性なのがそもそも…」

(あぁもう!)

口を挟む隙も無く夫婦喧嘩が始まり、全く収拾がつかなくなってしまった。

俺は頭を抱えた。


パン!


突然の音にビックリしてみると、アイリーンが手を叩いてた。

父上と母上も驚いて、口論が止まっている。

「ではこうしましょう。私がこれから殿下の粗相の原因になった、怪談をいたします。それでお三方が最後まで平静でいられたら、そちらの要求を1つ飲みます。婚約破棄の撤回でも、慰謝料無しの婚約破棄でも、お好きになされば良いでしょう。その代わりお三人の内二人以上、最後まで耐えられなかった時は、こちらの要求を1つ飲んでいただきます」

(チャンスだ!)

俺は目を輝かせた。

(諦めていたアイリーン有責での婚約破棄が、叶うかもしれない。いや、きっと叶えて見せる!)

父上達も、やる気を漲らせていた。

「「「よし、そうしよう!!!」」」

「……では、立ち話もなんですし、場所を変えて始めましょうか」

そうして俺達4人は、移動した。


しかし俺達は、失念していた。

時刻は夜更けで、怪談にはうってつけの時間帯である事、最低1人(=俺)が脱落確定である事、似た者親子である以上、高確率で父上達も俺と同じ反応をする事を。

そうと気づかず、この時すでに俺達はアイリーンの罠に嵌まっていた。



深夜の王城に3人分の悲鳴が響き渡り、翌日朝一番で、俺の有責でアイリーンと俺の婚約が破棄され、賭けに負けた代価として『ジェームズ=ダヴィオン、エイミー=ミラー、サイラス=アルマンド、ビル=オーストン4名は、生涯にわたってアイリーン=ミラーのあらゆる言動に対して、一切処罰しない事』とする国王直筆の勅書が、アイリーンに贈られた。


あと夜の間は、城内の鏡を全部隠しておくよう、王命が下された。


国王の命令書は『アイリーンがどんな事を言ったりやったりしても、罰しない』というものです。『四馬鹿を言いなりにさせる』ものではありません<(_ _)>

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