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番外①.真の恐怖がやってきたぞ!

ホラーが苦手な方は、引き返して下さい。あと少しだけ暴力シーンあります。ご注意<(_ _)>

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

もはや恒例となった、空き教室での対策会議。

討論したいところだが、連日の辛党攻撃で喉が焼けついて、誰も声を出さなかった。

らちが明かないのでサイラスの提案の元、筆談する事になった。

『王子ぃ~、もう諦めましょうよぉ~』

真っ先に降伏を進めてきたのは、ビルだった。

それにサイラスも賛同する。

『そうですよ、もう限界です。謝って浮気を認めて、円満解決しましょうよ』

『でもそうしたら、こちらが悪いって事になるし、慰謝料払う事になるわ』

『う~ん…負けを認めるのは、癪だなぁ』

俺は腕組みをして、考える。

『負けを認めたら、あの女に頭を下げなくてはならないし、さんざんバカにされた上慰謝料を払うのも嫌だ、そんな事したら父上達に怒られる…』

『そもそも、婚約解消に応じてくれるかもわからないわ…』

エイミーの言葉にさらに迷うが、サイラスが良い提案をしてくれた。

『それでしたら、友人達の集まりにエイミー嬢を仲間はずれにする件を、攻めてみてはどうでしょう?』

『それだ!』

俺はサイラスの提案に食いついた。



「御機嫌よう、皆様。今日はお見舞いの品を持って参りました」

例によって、アイリーンが勝手に入ってくる。

『いらん!お前の持ってくる物など、ロクなものじゃない!』

筆談で拒否すると、アイリーンがショックを受けた顔をした。

「あぁ何てこと!親切で持って来たのに、言いがかりをつけられたばかりか、こんな酷い暴言まで吐かれるなんて…よよよ」

涙を浮かべて、ハンカチで拭う動作をする。

そう言われると、少し良心が痛む。

(確かにどんなものか聞きもせずに、決めつけたのは良くないかもしれないな…)

『わ、わかった。決めつけたのは悪かった…何を持ってきたんだ?』

するとアイリーンは、小瓶を取り出してきた。

「飴ですわ」

『いらん!!!!!』

やはりロクでもない物だった。

『貴様、お前のせいで散々甘味攻撃を受けた人間に飴とは、いい度胸だな』

「まぁ、人のせいにしないで下さいな。甘味攻撃をしたのはお父様ですし、わざわざ「証拠を掴んでやる!」と乗りこんできたのはそちらでしょう?私が指示したわけでもないのに、言いがかりですわね」

『ぐっ…』

悔しいが反論できず、俺は黙るしかなかった。

「それにこれはただの飴ではありません、私愛用ののど飴です」

『のど飴だと?』

「そうです。どうせお母様の辛党攻撃で、声を出すのも辛いのでしょう?だからせめてもの情けで、お気に入りののど飴を、持ってきたのですわ」

「…………」

俺は目線で、サイラスに意見を求めた。

『確かにアイリーン嬢だけ普通に会話できてるのは、何か喉に良いものを摂取してるんでしょう』

『確かにそうだな…よし、貰おう』

何か仕掛けか条件があるかと思ったが、アイリーンはあっさりと俺達に飴を渡した。

のど飴の効果も抜群で、舐め終わる頃には、すっかり元の状態に戻っていた。



「フハハハハ、敵に塩を送るとは、バカな奴め!公爵家の晩餐に関しては負けを認めてやるが、お前が他の女生徒たちと共に、エイミーを仲間はずれにした事は、また別だ!今度こそ化けの皮を剥いでやるぞ!」

宣言した途端、みぞおちを殴られた。

「貴方にバカと言われるほど、腹の立つものはありません」

「おおおおお…」

俺は立つ事も出来ず、腹を押さえて膝をついた。

「わぁっ!王子!」

「アイリーン嬢!王族に手を上げるなど…!」

「大丈夫です、浮気男には何をしても良いと、法で決まってますから」

そう言って俺の襟首をつかんで、ずるずると引きずっていく。

「ホラ貴方達も、サッサと来て下さい。私と友人達が何をしているか、暴くんでしょう?」

すると3人は顔を見合わせた後、大きく頷いて俺とアイリーンの後について行った。


「皆様お待たせしました、4人を連れてきましたわ」

そう言ってアイリーンが空き教室の中に入ると、俺達も後に続く(引きずられるのが恥ずかしいので、頑張って自力で歩いた)

教室の中は、異様な雰囲気だった。

8人分の机と椅子が円形状に並べられていて、更にその中心に机だけが置いてあった。

令嬢3人はすでに着席していて、5人分の席が空いていた。アイリーンと俺達の席だろう。他の机と椅子はすべて端に片付けられていた。

「まぁ、本当にいらしたの?」

「後で後悔なさると思いますけど…」

「王子達がご自分から参加するというなら、止めませんけど…」

そう言って、全員で俺達を見る。

俺達は異様な雰囲気に、嫌な予感を感じていた。

「…………おい、アイリーン」

「何ですの?」

「何故この教室は、窓に暗幕を張ってあるんだ」

「雰囲気作りの為ですわ」

「…何故、明かりがろうそくだけなんだ?」

ろうそくが、中央の机に1本だけ置いてあった。

「雰囲気作りの為ですわ」

「…何故全員、黒いローブを羽織っているんだ?」

「雰囲気作りの為ですわ」

実はこうして会話している間も、アイリーンが自分用の黒いローブを羽織っていた。

俺は感じていた嫌な予感が更に、強くなるのを感じた。

「お、お、王子…これってもしや…」

感づいたらしいサイラスが言おうとするが、俺は慌てて遮った。

「待て、言うな!言ったら現実になるぞ!」

「言霊かよ…」

そういうビルの顔も、真っ青だ。

「ひ、ひ、ひぃ…」

エイミーにいたっては、怯えた声しか出てこない。

「では皆様、始めましょう…王子様方もご着席を」

アイリーンが着席して、開始の宣言をする。

俺達も、着席するしかなかった…。


「そうして0時に男が姿見の前に立つと、突然鏡から無数の手が伸びてきて、ものすごい力で男を鏡の中に…引っ張りこんだのですわ!!」

アイリーンの友人の一人が、淡々と話していたかと思ったら、突然リアクション付きの強めの声で、話す。

「ひ、ひぃ…」

俺達は恐ろしくて体に力が入らず、小さく悲鳴を上げるのみだった。

全員真っ青で、エイミーにいたっては、今にも倒れそうだ。

そうして話を終えた令嬢が、一息つく。

「では最後は、私の番ですわね…」

そうしてアイリーンが、話し始めた。



「昔町はずれに、大富豪とその娘が住んでおりました。娘はたいそう美しく、特に湖水のように美しい瞳が自慢でした。ところがある日事故にあい、失明してしまいました。娘はそれを悲観して、0時に自室で首を吊りました。それ以来、屋敷の住人が1人、また1人と姿を消すようになり、0時に娘の部屋にいると、娘の亡霊が現れてそこにいる者の目を奪い、いずこかへと連れ去るという噂が立ちました。

やがて屋敷は無人になり、噂も風化して忘れられた頃、隣町に遊びに行っていた若者3人が、突然の雨にあい、雨宿りの為町はずれの屋敷に入りました。

無人の筈なのに何故か中は綺麗で、明かりもつきました。

若者達は時間を潰して雨が止むのを待ちましたが、雨は強くなる一方で夜も更けたので、今夜はこのままここに泊まり、朝になって止んでから帰ろうという事になりました。

3人は2階にある3部屋で、それぞれ休む事にしました。

しかし若者の1人は、ベッドに入っても中々寝付けませんでした。

部屋に入った時から、何者かの視線を感じていたからです。

屋敷が無人なのは確認済みですし、ドアから部屋に誰かが入ってくれば気づきます。窓ははめ殺しなのか、さび付いているのかわかりませんが、若者の腕一本が辛うじて通るくらいしか開かず、人が侵入するのはまず不可能です。

なのに気のせいでなく、視線を感じるのです。しかもそれは夜が更けるにつれて、どんどん数を増やして行き、0時直前になると息苦しいくらいの視線を感じるようになりました。

耐えきれなくなった若者は、0時に柱時計の音が鳴ると同時に「誰だ!」と飛び起きて、驚愕しました。壁という壁、天井や床、先ほどまで自分が寝ていたベッドにまで一面目玉が生えていて、それらが一斉に自分を見ていたのです!!!!」

「ぎゃあああああああああ!!!!!!!!!」

「うわあああああああああ!!!!!!!!!」

「おあ!おあ!おあ!」

「うわあああああん、ママぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」



それが俺達の限界だった…………。



翌日、朝一番で俺とアイリーンの婚約が破棄され、その放課後には全生徒の前で、アイリーンに土下座した。


作中の怪談は作者が昔聞いた話を、アレンジしたものです。万一「同じ話見つけたよー」という方は、ご一報下さい<(_ _)>


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