表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍・漫画化】魔道具師リゼ、開業します~姉の代わりに魔道具を作っていたわたし、倒れたところを氷の公爵さまに保護されました~【七章進行中】  作者: くまだ乙夜
七章 復讐の天秤編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

283/286

276 星座の魔法(4/4)


「わたしも、ディオール様が不安に思っていることなんだったら、知っておきたいです。お話をちゃんとしてくれるのも、仲良しだと思います……!」

「仲良し、か」


 つないでいたところから、手のぬくもりが少しずつ戻ってきている。乾いた泥を指で擦られて、今更のように汚れていたことに気づいて、ちょっと恥ずかしくなった。たぶん、今のわたし、バケツに投げ込んだら水が真っ茶色になると思う。


「私が騎士に恨まれているのは、前にも少し話したが、力づくで言うことを聞かせたからなんだ。作戦の立案でもくだらない政治で延々と揉めていたから、とにかく盤上をひっくり返す必要があった。陛下もそれをお望みになっていたし、私も、憎まれ役になれば、長期的にどんな禍根が残るか予想できないくらい子どもだった。だからまあ、恨まれるべくして恨まれたわけだ。ただ、それほど脅威には感じていない……私に魔術が使えるうちはな」


 お話をするうちに、つないだ手がまた少し冷たくなった気がした。


「魔術を完膚なきまでに封じられる、という状況は想定していなかった。こっちは、少し怖いな」


 そっか、魔法がない、っていう状況が怖かったんだ。


 だからあんなに真っ青な顔をしていたんだね。


 誰かに脅かされているんだったら、わたしにもいろいろと手伝えることがある。


 でも、そっちはわたしにはどうしようもない。


 話を聞くくらいしかできないけど、それでも、聞かせてもらえるということが、わたしには嬉しかった。


「じゃあ、騎士さんたちが、弱ってるディオール様をやっつけてしまおうとするような、悪い人たちっていうのは本当なんですね?」

「全員ではないが、ごく一部はな」

「その一部って? 誰なんですか? まさか、ウラカ様のお父様……?」

「? なぜル=シッドが出てくる」

「最近、よくない噂を聞きました。じゃあ、お父様は関係ないんですね」


 少しほっとした。ウラカ様はいい人だから、お父様もいい人であってほしい。

 

「そうだな。騎士たちからも恨まれてはいるが、強い遺恨を残しているのは、一級の魔術師たちなんだ。騎士団内でも高い地位にいる奴らだが……こいつらが、私を罠にはめようとしてきたことがあった。返り討ちにはしたが、それ以来強く恨まれている」

「恨まれてるんですね。じゃあ、怖いですよね」


 自分に強い悪意を抱いている人がいるなんて、すごく怖いことだ。


「ほかに怖い人はいますか?」


 ディオール様が怖い思いをしているのなら、わたしも注意しないといけないよね。


 いつでも助けてあげられるように。


 わたしが密かにやる気を出して、むん! と唇をまげているのをどう見たのか、ディオール様はちょっと眉を寄せた。


「……言っておくが、君が頭を悩ませるような問題じゃないぞ。高位の魔術師はだいたいどいつも邪悪だ。かかわり合いになろうと思わなくていい。私が自分で対処する」

「わ、わたしにだって、できることは」

「ない」


 すぱっと言い切った……!


 ちょっと悲しいな。


「彼らよりも、リゼ、君は第一王子に気をつけなさい。むしろ一番心配なのがあいつだ」

「……ディオール様って、アルベルト殿下に何をされたんですか?」


 何回か聞いてみてはいるんだけど、はっきりした答えを聞けてないんだよねぇ。


 そんなにいやなこと?


 ディオール様はしばらく目線を泳がせて、言いたくなさそうにしていたけど、最後には重い口を開いた。


「……魔術師たちが私を罠にはめようとしたとき、そうしろと唆したのがアルベルトだ」

「……? そその……?」

「つまり、私は殿下に売られたことになる」


 ……!!


 お、お金で売ろうとしたってこと?


「最終的に罠にかかったのは彼らの方だったから、そういう作戦だったんだと言われたが、どこまで本当なんだか」


 ぴゃぁ……


「な、なんでそんなひどいことを……? アルベルト殿下、お金いっぱい持ってるはずなのに」

「……売られたというのは比喩だが……」


 あれ、そうなの?


 ディオール様はときどき言葉が難しい。


「罠にはめられたって、つまり何をされたんですか?」

 

 そこがぼんやりしてるので、なんだかうまくイメージできないのだ。


「……裏切られたと言えば分かるのか?」


 その裏切りの内容とは、いったい……?


 詳しく聞きたかったけど、ディオール様は説明する気が失せてしまったのか、とてもだるそうに、「いや、いい」と言った。


「忘れてくれ」

「えぇっ!? き、気になります……!」

「いいから忘れろ。君に心配されても嬉しくない」

「そ、そんなぁ……」


 いつになく辛辣で涙目になっているわたしに、ディオール様がくすりとする。


「これは私の問題なんだ。君にみっともないところを見せたくないだけだから、気にするな」

「わ、わたしは、見せてもらえたほうがうれしいですねぇ……!」


 うまく話を聞き出せそうだったのに、わたしがアホすぎるせいで……


 胸を痛めてしょんぼりしていたら、ディオール様はいよいよおかしそうに、声に出して笑った。


「そう言ってもらえるだけで十分だ」


 ディオール様がそう言ってくれたときに見せた顔は、本当にすごく優しそうだった。


 愛おしい、って、言われているような気がしたくらいだ。


 ついじっと見ていたら、いきなりものすごい寒気に襲われた。


 大きなくしゃみが出る。


「……戻ろうか」

「はい。あの、リオネルさんは?」

「野営の準備をさせている。治療が使えるわけでもなし、救護の邪魔だったからな」

「じゃ、邪魔って……」


 ディオール様、穴掘るの苦手って言ってたから、きっと手伝ってくれたんだと思うけど……


 あとでお礼いっとこ。


 ディオール様と並んで歩きながら、明るい星空をもう一回見上げた。


「こんな泥だらけで星空だけ綺麗なの、なんか笑っちゃいますね」

「最悪の気分だ」


 ディオール様も、わたしにあわせてか、少し微笑んでくれた。その顔がとてもきれいで、見とれてしまう。


「でもまあ、忘れたくても忘れられないだろうな」


七章終了

明日、一方その頃のリオネル番外編を挟みまして、

八章(最終章)【万能の魔道具】開始予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブックマーク&いいね&★ポイント評価応援も
☆☆☆☆☆をクリックで★★★★★に
ご変更いただけますと励みになります!
▼▼▼書籍三巻が出ます 詳細は画像をクリック!!▼▼▼
i726133/
i726133/
▼▼▼コミカライズ4巻が出ます 詳細は↓をクリック!!▼▼▼
i726133/
i726133/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ