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【書籍・漫画化】魔道具師リゼ、開業します~姉の代わりに魔道具を作っていたわたし、倒れたところを氷の公爵さまに保護されました~【七章進行中】  作者: くまだ乙夜
七章 復讐の天秤編

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274 星座の魔法(2/4)


「厚みのある黒い布でちゃんと作ると、すっごくきれいなんですよ! 帰ったらディオール様にもやってあげますねぇ!」

「そうか……ありがとう」


 ディオール様は笑いを堪えた震え声でそう言って、空をまた見上げた。


「今日は天気がいいから、星座の地図線もよく見えそうだ」

「……地図線?」

「星座の間に線が走ってるだろう」

「……???」


 わたしの頭に浮かんだのは、星と星の間に線を引いて絵を描いた星座のイラストだった。星座の早見盤とか、図鑑に星を載せるときは、そんな感じの絵を描くのだ。神話なんかのモチーフを与えて、目立つ星をひとまとめにすると、見分けやすくなるっていうやつだったと思う。


「なんですか、それ?」

「ときどき、星と星の間に星座の線が光って見えることがあるんだよ」


 ……わたしが思い浮かべていたもので合ってるのかな?


 でも、あの線は、人間が勝手に付け足してるだけだよね?


 実際に光ってるのは見たことないよ!


「えっと……見えないですよね?」

「見える」


 ディオール様は冬の星座の一点を指さした。


「ほら、あのあたりだ」


 言われたとおりに目を凝らしてみた先に、大きな明るい、青い星が見える。


「また光った」

「……??? 何にも見えないですよ……?」

「いや、あるだろう? あの、ふたつの白い星から――」


 と、また違う白い星を指さして、先ほどの青い星に線をつなぐ。


「――青い星に向かって、細い糸のような線が一本ずつ伸びていて、しっぽの形をしている」


 丁寧に説明してもらったけど、やっぱりわたしには見えなかった。


 どういうこと……?


 ディオール様にだけ見えているって……こと……?


「本当に見えてるんですか……?」

「……見えないのか?」


 冗談を言っているような様子でもなかったので、わたしはもっとよく目を凝らしてみることになった。


 うーん……


「……空をずっと上昇していくと、ある位置から大気の構成が変わってくるんだが、もっとも外側に、星からの魔力の影響を受けやすい層があるらしい。オーロラが発生するのもその位置だ……と、フェリルスが言っていた」

「かしこいわんちゃん……!」


 そういえば、いつだったかの日に、故郷のオーロラの話を聞かせてくれたっけ。懐かしいなぁ。


 楽しい思い出なのか、ディオール様がほんの少しほほえみながら言う。


「それで、そのオーロラが出る層は、強い魔力を放つ星々に影響されて、魔力の線が投影されるのだという話だった。それがちょうど、星と星の間をつなぐ地図線に見えるらしい。私はそれほど星に興味がないから、フェリルスが言うならそうなんだろうと思って信じていた。星座の地図線も受け売りだ。もしかしたら、何か間違っているのかもしれないな」


 そうなんだぁ……


 素直に信じてしまうディオール様(小さい)を想像したらかわいかったので、わたしは思わず笑ってしまった。


「でも、星座の地図線? は、ディオール様には見えてるんですよね?」

「ああ」

「じゃあ嘘じゃないのかも? フェリルスさん、他にも何か言ってませんでした?」

「そうだな、あとは……」


 ディオール様が記憶を辿りながら、とつとつと教えてくれる。


「……魔力が強い星は、一定の周期で、かなり遠方の……この世界まで魔力を飛ばしてきているんだが、その周期が一定だから、時間と位置が計測できる、ということだった」


 ……?


 あれ? それって、なんか、聞いたことがあるような……


 わたしがとっさに思い浮かべたのは、【ギネヴィアの櫛】だった。


 星の光を解析して、座標を取る魔術式を載せてある。


 詳細は……実は、よく知らない。


 わたしは単にルキア様のライブラリから、場所を返してくれる【魔術式】を載せただけなのだ。


「もしかして、いくつかの星に『ここどこ?』って信号を同時に送って、返ってきた時間差で場所を特定する……ってやつですか?」


 ディオール様は変な顔をして、わたしを見た。


「……なんだそれは」

「ええと、遠洋航海用の技術なんですけど……」


 わたしはポケットから、【ギネヴィアの櫛】を取り出した。


「つまり、これ……【ギネヴィアの櫛】の応用です」


 ディオール様はいまいちピンと来ていないようだ。


「ええと、ルキア様は、位置情報とか座標を教えてくれるんですけど、この櫛は星の女神様のライブラリと組み合わせて、複数の星の光を同時に解析しているんですよね。なので、今ディオール様が教えてくれた話と似てるなぁ、って……」

「……そうか、星座地図線が本当に遠くの星から飛んでくる魔力の波動と同期していて、一定の周期で明滅しているのだとすれば……うまく調整して落とし込めば、時計代わりに使えるのか? しかし、測位は……非常に厳しいだろう。どうやってあんな微弱な光を正確に解析しているんだ?」


 わたしはよく分からなくなって首を傾げた。


「……?」

「だからなんで君が分からないんだ……今自分で言ったことだろう」

「解析は……ルキア様がやってくれます。わたしは……ルキア様にお願いするだけです……だから何が難しいのかと言われると……?」

「強いて言えば全部難しいが?」

「そ、そんなにですか……?」


 便利な魔法なんだけど、全然使われてはいないんだなぁ……?


「目で見える光を測量するのと、魔術で解析するのとでは難易度がまるで違う、と言えば分かるのか? 光は大気中で分散する上に、環境中にノイズが多すぎて、安定的に必要な情報だけ観測するのが非常に難しい」

「……?」

「だからなんで分からないんだ……」


 だってそのへん、全部ルキア様がやってくれる、としか言えないんだよなぁ……


 うーん、うーん……


 わたしはなんとなく【ギネヴィアの櫛】の魔術式を開いてみた。


 そこにあるのはルキア様のライブラリから持ってきた、複数の星の信号を同時にリクエストして、届いた順番の差から位置や時間を割り出す魔術式だ。


 つらつら見ているうちに、わたしはなんとなくピンときた。


 わたしには言葉で説明するのは難しい。


 でも、おばあさまの作った魔術式は、どこをどう組み合わせればいいのか直感で分かるくらいきれいに整理整頓されているのだ。


「あー……なんか分かりました」


 このへんの魔術式が、すべて星座地図線に関係するとしたら……


 ここを変えれば……


 ちょいちょいっと……


「つまり、これをこうして、こうです!」


 わたしは【ギネヴィアの櫛】から、いつもは四個同時に計測している星の信号を、二千個ほど一気に取得するよう書き換えた。


 星座地図線、よくわかんないけど、たぶん、すごく高いところにあるんだろうなぁ。


 受け取った信号の高度を調整して、はるかかなたの地図線をそのままずっと低い位置に下げて再現するイメージで、光る魔法を描き出す。


 幻影魔術はわたしの得意技だ。


 大気中に描き出すのはけっこう難しいけど、まっすぐな線だったらなんとかなる。


 星から星へ、網のように広がる星座の地図線を描き出すと、お空が星座の図鑑みたいに早変わりした。


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