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【書籍・漫画化】魔道具師リゼ、開業します~姉の代わりに魔道具を作っていたわたし、倒れたところを氷の公爵さまに保護されました~【七章進行中】  作者: くまだ乙夜
七章 復讐の天秤編

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261 リゼ、コアの解析をする(2/3)


「突撃準備が整いました」


 リオネルさんは突撃号令を出さずに、まずディオール様の顔を見た。


「なあ、ディオール。これ、魔法抜きで倒せる見込みある?」

「ない。全員死ぬ。下がらせた方がいい」


 リオネルさんは仕方がないなぁという顔で、騎兵さんたちを振り返る。


「俺が出る! 総員退避、ひとつ前のマイルストーンで待機!」


 号令一下、騎兵さんたちが素早く元来た道を戻っていくのを眺めつつ、リオネルさんが言う。


「あーしかし困ったね。一斉に飛んできたら俺じゃ対抗手段ねえし、お前は無能だし、詰んでね?」

「誰が無能だ。ちょっと知らない魔獣に当たっただけだろう」

「なんで知らねえんだよ。お前脳みそしか取り柄ないのに何? 知識もなかったら何が残んの? アイスクリーム製造機?」

「言ってろ槍投げゴリラ」

「ハルバードだっつーの!」


 な、なんで喧嘩してるんだろう……?


 はらはらしているわたしをよそに、リオネルさんがまくしたてる。


「あいつの攻撃は主に目からビームな。光魔法系統。視線で認識されると焼かれるから、見られないようにするのがカギ。濃い霧で目とビーム潰してからトドメってのがセオリーだけど、こっちも見えなくなるから魔法使い必須。近接戦闘職が近づくのは自殺行為、秒で焼かれる」


 そこでディオール様は、わたしを振り返った。


「だそうだ。どうだ?」


 わたしはしゅばっと元気よく、先生に回答するときの感じで挙手。


「わたし【姿隠しのマント(タルンカッペ)】作れます!」

「消えるやつね!? いけんじゃん!」


 【魔糸紡ぎ】は光魔法の系列なので、問題なく動く。


 わたしは速攻でマントを三着編んだ。


 馬車用もその場で用意して、お馬さんたちにはここで待機していてもらうことに。


 タルンカッペを素早く羽織ったリオネルさんが、小声で言う。


「一体だけ釣ってくる。ディオール、霧かなんかでその他の注意引いといて」

「倒せるのか? 私が氷で仕留めた方が確実だと思うが」

「それだと群れ全体でパニックになる。霧に乗じたサイレントキリングが確実」

「それはそうかもしれないが……魔力なしのハルバードでどうやって致命傷を与えるんだ?」

「そりゃもう腕力でよ」

「馬鹿なのか?」


 ディオール様すぐ馬鹿って言う。


「うっせーな、目ぇかっ開いて見てろ! タマぶち抜いてくっからよぉ!」


 リオネルさんがスッと気配を消し、あたりから消え失せる。


 すごい潜伏能力だなぁ……と思っているわたしの横で、ディオール様が珍しく長めの呪文を唱え始めた。


 呪文に呼応して、魔力がぐるぐると渦を巻く。


 ものすごく遠くにパッ、パッ、と光る何かを生み出した瞬間、セラフィムたちが一斉にそちらに注目した。


 すぐさま消すと、セラフィムたちはしばらくそっちを警戒していたけれど、そのうち意識が薄れて、三々五々散開していく。


 その次にディオール様は、氷や炎などをちょっと出しては消した。


 その繰り返しで、どうやらセラフィムたちの反応を確かめたようだった。


「……そういうことか。なるほどな」


 独り言のように言って、大きく魔法を張り直した瞬間、あたりがぼやけて、真っ白な霧に包まれていった。


 ……と同時にあたりも急速に冷えていった。


 さ、寒い!


 早く終わらないかな? と思いつつ、震えながら待つこと数分。


 いきなり濃霧を切り裂いて、明るい光が飛んできた。


 光はわたしを狙ったものではなかったみたいで、変な方向に逸れて飛んでいった。ほっとする間もなく、四方八方から光が霧を割いて、あちこちに乱れ飛ぶ。


 ジュッと音を立てて湯気が上がり、一瞬視界が開けたけれど、すぐにまたあたりが霧に沈んだ。


 ひとつかふたつ、明るい光にぴかっとされ、直撃した――かと思いきや、軌道を逸らされ、パッと虹色の分散光をまき散らして、消えた。


「あ、あの……」

「虹が出たな。綺麗だ。霧に光を当てると、ああしてスペクトルが生まれて――」


 そんな話してる場合?


「り、リオネルさん、帰ってきませんけど……」

「囲まれてるんだろう。いい気味だ」


 薄情なことを言うディオール様は、すごく楽しそうだった。


「た、助けなくていいんですか!?」

「何も見えないのにか?」

「え、ど、どうしたら……!?」

「あいつは殺しても死なない。心配はいらないから、君も見物しているといい」


 といって、ディオール様は悠々と腕を組んで、時々光る霧の中をニヤニヤ嬉しそうに眺めていた。


 ほ、本当に大丈夫なのかな……?


 剣術が出ない、魔道具も使えないってことは、今のリオネルさん、ただの人だ。


 当たったら即死のビーム出す相手に囲まれてたら、いくら強くても危ないと思うけど……


 ハラハラしているわたしの顔色を読んだのか、ディオール様がぽつりと付け加える。


「……光は水滴が多い場所だと、レンズ効果で分散する。あれも光魔法だということだが、どうも霧の濃度次第ではまあまあ減衰させられるようだ」

「あ、そ、そうなんですね!?」

「光を集約させると熱を出すが、霧の冷却効果で出力も落ちていると見た」


 だから余裕で見物していられるってこと?


「霧を出せという指示は実に的確だ。回避力に優れたリオネルをひとりだけ放り込んだ方が、視界最悪の状態では同士討ちも避けられて理にかなっている」


 そ、そうなんだ……


 信頼があってのことなのかなぁ。


 やがて霧中の光も消え失せて、しんと静まり返る。


 流れていく霧の微細な影の他には、何も動いていない。


 大丈夫かなぁぁぁ……?


「獲った!」


 リオネルさんが勝ち誇ったように言い、フードを落として姿を見せる。


 高々と掲げた手には、赤い玉が握られていた。


 無事だったんだ!


「本当に倒しちゃったんですか!? すごいすごいです!!」

「まぁな!」


 得意げなリオネルさんから、わたしは赤い玉を受け取った。


 見た目はいつかの山で遭遇した『真理』と同じだ。


 急いで中身を探っていくと、異種言語らしきものが目に付いた。


「……あれ、これ、ドワーフ語……?」

「ドワーフ語だと?」

「今見せますねぇ」


 わたしは以前見聞きしたドワーフさんの魔術式のときと同じように、ひとまず【重ね文字】を可視化させた。


 それからサイズを大きくして、みんなに見えるようにすると、ディオール様が少し息を呑んだ。


現代のレーザー砲も霧で減衰するそうです。

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