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【書籍・漫画化】魔道具師リゼ、開業します~姉の代わりに魔道具を作っていたわたし、倒れたところを氷の公爵さまに保護されました~【七章進行中】  作者: くまだ乙夜
七章 復讐の天秤編

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246 リゼ、クッキングを始める(1/2)


 魔道具を作れないときのわたしは無力だ。


 午前中を何もせず過ごしたあと、わたしはつくづくそう思った。


 暇すぎてダメだったので、クルミさんのお仕事のお手伝いをしたりして過ごしたけど、あんまり役には立っていなかった。


 だってね、薪って重いんだぁ……


 ちょっと倉庫からお部屋まで運んだだけで、肩が外れそうになった。外れてはいないけど。


 魔法って、やっぱり便利なんだなあ……


 わたし、家事は何でもひとりでできるって思ってたけど、いざ何でも人力でってなったら、全然だった。むしろ薪を床におろしては持ち上げ、おろしては持ち上げってしてたせいで、薪の土汚れで廊下を汚しちゃったりしてたから、何もしない方がマシだったかも……?


 それで、すれ違うたびに、お屋敷の使用人さんたちが噂話を聞かせてくれるんだけど、街の様子が聞いてるだけで大惨事。


 王都でよく使われている二大魔法が、火つけと水くみだ。


 ほとんどのおうちには水道が通ってないから、水を使うときは水の魔石を用意するか、生活魔法を使う。でも、今はそのどちらも反応しなくなってしまっているから、街の井戸から汲んでこないといけなくなっているみたい。


 それで、井戸がパニックを起こした人たちで占領されて、長蛇の大行列になっちゃってるのだということだった。


 皆がいつも使っている水の生活魔法……【湧き水】は、がんばって使えば飲み水分くらいまでは確保できる。その分が出てこなくなっちゃったから、ライフライン断絶の危機。


 それで、いつもは掃除や洗濯に使ってる井戸水をみんなで奪い合う事態に発展。


「うちは郊外の川まで水を汲みにいかせておりますので、なくなることはございません。ご安心くださいませ」


 とはクルミさんの談。


「どうしちゃったんでしょうねぇ……」


 そんな状態なので、どこも仕事をしている場合じゃなくなって、お休みしてるみたいだ。


「お、お店、大丈夫かなぁぁぁぁぁあぁ……?」


 わたしの心配事は主にそれだった。


 見にいきたい。行って、鍵とか掛け直したい……!


 結界がなくても、物理的にロックする方法はいろいろある。


 でも、今、わたし、膝にわんちゃんを受けちゃってるからなぁ……


 ミニミニフェリルスさんは、抱っこしてあげたら、そのままわたしのお膝で寝てしまった。


 なので、ずっと抱っこしてる。


 かわいいので、もう今日はずっとこれでいいです。


 ディオール様さえ帰ってきてくれれば、あとは何とかなるはず。


 わたしは午後を、よく寝るフェリルスさんと一緒に過ごした。


◇◇◇


 ディオール様が戻ってきたのはおやつどきを過ぎたころだった。


 青白い顔で帰ってきたかと思えば、すごく暗い顔で、もうおしまいだ……みたいな雰囲気。


「ど、どうしたんですか……?」


 全然関係ないんですけど、悲壮なお顔も似合いますねぇ……!


 会えてうれしいわたしが余計なことを考えていると、ディオール様はあたりをすごく警戒しながら、わたしをティーセットの整ったテラスから、お部屋に戻るよう強制した。


「おやつ食べないんですか?」


 せっかく戻ってきたんだし、とりあえず一服したらいいのに。


 お茶はわたしが暖炉に簡易の炉を設置して、そこで湧かしました!


 ケーキは暖炉の炭で鉄の缶を囲って焼いたんだよ!


 暇だったからねぇ!


 火加減を調整するのはわたしの特技だ。


 なかなかうまく焼けたと思う。


 ディオール様はものすごーく小声で、わたしにだけこっそり囁きかけてくる。


「……魔法が使えなくなった」

「あ、ディオール様もですか?」


 天才魔術師だって、大本の魔力の【集中】法則(覚えた!)まで乱されちゃったら魔法は使えないよねえ。


「街の人みんな使えなくなっちゃったそうなんですよ。それで、フェリルスさんもこれです」


 わたしは腕に抱えていたフェリルスさんを高々と掲げあげる。


 すると、ディオール様はすごくキョトーンとした顔になった。


「フェリルスなのか……!?」


 おでこだけちょっと毛色が違うモフ毛を親指でかきわけて、ディオール様が唸る。


「……フェリルスの模様だな」

「朝起きたらフェリルスさんの姿が見えなくて、小屋にこの子がいたんですよ。だからたぶんフェリルスさんです。いいえ、フェリルスさんじゃなかったとしてもわたしが育てます……! この子はわたしの子です……!!」


 わたしはお膝に置いていたこの半日で、すっかり親心が芽生えたのだった。


「しかし……魔法がみんな使えなくなった、とは?」

「わかんないです。でも、生活魔法も、普通の魔術も、魔道具も、みんな全滅してます。わたしも、ともし火すらつきませんでした」

「そうか……」


 ディオール様は難しい顔つきで、ぽそぽそと言う。


「フェリルスまで【祝福魔法(バフ)】停止の影響下にあるということは、やはり、ネメシスの制裁と考えた方がいいんだろう」

「? ネメシスって? 復讐の女神様ですか?」

「ああ。そいつに、昨夜、一撃食らった」


 わたしは何の冗談だろうと思って、ディオール様を見つめてしまった。


 というより、よく分からない。女神様が? 一撃???


 よく分からないことを言っていても、ディオール様は美人さんだった。


 陰鬱そうな顔つきを見ていると、背景にお花を飾りたくなってくるんだよねぇ。ウィステリアの花とかどうだろ?


「リゼ、よく聞いてくれ。魔法が使えないと、私は無力だ」

「それは今みんなそうですね。わたしも無力です」


 生活魔法がなかったら、わたしって何にもできないなぁ? って、しみじみ実感していたところだよ……!


「魔法が使えないと魔道具が作れないので、今のわたしは『魔道具師』じゃなくてただの『師』です」

「『師』……?」

「あー……先生はちょっと図々しかったですね。じゃあ『具』!」

「何がじゃあだ」


 ディオール様は呆れた様子で、そうではないのだとでも言いたげに首を振った。


「問題は、私が方々から恨みを買っているという部分なんだ。特にこの間の戦争では、私から強制的に指揮権を奪われた件で恨んでいる騎士や魔術師が多い」

「そ……そんなことしてたんですか?」

「あいつらの指揮じゃ一生勝てなさそうだったからな。全員叩きのめして、従わせた。かなり遺恨が残るやり方をしたせいで、『ここで会ったが百年目』とばかりに襲ってくる輩がいないとも限らん」

「そ、そんなぁ……」

「ただ、ひとまず魔術禁止が全員平等に行き渡っている、というのは不幸中の幸いだった。私だけが禁じられたのかと思って、昨晩は生きた心地がしなかった」


 それであんな青い顔をしてたのかぁ。


 魔法が使えなくなった、って打ち明けてくれたときのディオール様、ちょっと泣きそうで可愛かったんだよね。言うと怒るだろうけど。


「フェリルスが弱体化程度で済んでいるのなら、道はある」


 自信満々のディオール様。ほほー……?


おさらい

魔術 ≠ 生活魔法 ⊃ 祝福魔法


ふたつの違いは主に言語です

魔術は魔術言語で体系化された学問

生活魔法はそれ以外のすべて

祝福魔法は定義上生活魔法に入りますが、力の強い神様からもらう祝福のことを特にそう呼んでいるだけなので

神様とはいえない上位存在の精霊から祝福してもらってる魔法なんかは生活魔法でもあり祝福魔法でもあり…というグレーゾーンです


魔道具 ⊃ 魔術

魔道具 ⊃ 生活魔法 ⊃ 祝福魔法


こうなっているので祝福魔法が止まると一部の魔道具も止まります


従って、祝福魔法が止まっても本来魔術とは無関係のはずなので、ディオールは自分だけが魔術も停止されたのかと思って焦ったわけですね。

剣を止めるところも目撃しているので、同じ方法で自分だけ魔術を止められたのかと考えたわけです。

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