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レイクス戦記  作者: ゆう
第5章「再会の約束」

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第14話「セリスとヴィーナ」

第14話「セリスとヴィーナ」


 レイクスさんに呼ばれて訪れたヴァルトニア邸は、まるでお伽話に出てくる騎士の城のようでした。門をくぐり、案内された中庭で私を待っていたのは、柔らかな**栗色の髪**を揺らす、同い年くらいの少女でした。

「はじめまして! ヴィーナです! おとうさんのむすめ!」

 屈託のない笑顔で駆け寄ってきた彼女の名を聞いて、私は思わず瞬きを繰り返しました。

「……ヴィーナ。女神様と同じ、お名前なのですね」

「えへへ、そうでしょ! フォルネリアでお父さんが拾ってくれたんだ!」

「拾って……ふふ、レイクスさんらしいですね」

 彼女の屈託のなさに、私の緊張は一気に解けていきました。けれど、彼女が纏っているものに目を向けた瞬間、巫女見習いとしての教養が、私にその「重み」を突きつけました。

「ヴィーナさん、そのローブ……マルターレス家の友好紋ですよね?」

「え? よくわかったね! これ、お父さんがくれたんだけど」

「聖泉領では、歴史の授業で深く学ぶ意匠ですから……。それに、その髪飾りも。ヴァルトニア家の紋章を模っていますね。雷光の形……とても綺麗です」

「そうなの! 私、最近知ったんだよ。これにそんな意味があるなんて!」


 お父さんが連れてきたセリスさんは、なんだか不思議な人だった。

 淡い金色の髪がキラキラしていて、空みたいな色の瞳に見つめられると、心がポカポカしてくる。

「きれいな人だ……」

 なんだか、ずっと昔から知っているような、落ち着く感じがする。

 それに、いつもは仏頂面のお父さんの様子が、セリスさんの前だと少し違う気がした。なんだろう……言葉は少ないんだけど、すごく大事に、壊れ物を扱うみたいに見てる気がする。

「セリスさんって……おとうさんのこと、知ってるんですか?」

 私が尋ねると、セリスさんは少しだけ寂しそうに、でも優しく微笑んだ。

「少しだけ。でも……もっと知りたいと思っています」

「じゃあ、私がいっぱい教える! おとうさんのこと!」

「ぜひ、お願いします」

「昔ねー、お父さん、料理がすごくへたくそだったんだよ! 味付けを忘れて、ただの焼いた肉を出されたこともあったんだから!」

「ふふっ、本当ですか? 今のレイクスさんからは想像できませんね」


 中庭の回廊から、二人の少女が談笑している光景を眺めていた。

 **栗色の髪**をしたヴィーナと、金髪のセリス。

 かつて俺の意識の中にいたセラと、俺が拾い上げた娘。

(……仲が良さそうだ)

「おとうさん!! セリスさんが私より詳しいよ!!」

 ヴィーナが俺に気づき、大きく手を振った。

「セリスさん、このローブがマルターレス家との友好の証だって、ひと目で当てちゃったんだよ! おとうさん、知ってた?!」

「……それはそうだ。セリスは聖泉の巫女見習いだ。歴史と礼節については、お前の数倍は学んでいる」

「むー! お父さん、さりげなく私をバカにしたでしょ!」

 頬を膨らませるヴィーナの横で、セリスが「ふふっ」と声を立てて笑った。

 平和な時間は、長くは続かないだろう。だが、今この瞬間、二人の少女が笑い合っている光景を、俺は何よりも守り抜きたいと思った。

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