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肆拾六つ目の記録 復活 ④

注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。そして唐突な戦闘などがあります。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。


ご了承下さい。

 決して、弱い訳では無い。オリヴィアも、ディーデリックも。


 ただ、彼は、超越したのだ。この世から、この現実から。


 その存在の証明は、何人足りとも出来ない。定義不足だ。


 最後に残ったのは、やはり二人。黒恵と、昴。


 今の二人もまた、超越しようとしている。人の身から、人の道から、外れようと、ケファが見ている物を見ようとしている。


 しかし未だ、それが出来ずにいる。何故なら二人は、人であるが故に。人が人を越えるには、人であってはならない。人であるなら、それは永遠に変わらず人なのだから。


 人が人として産まれ、人として育ったのであれば、それが人ならざぬ者になることは出来ない。ましてや人が人を超越すること等出来ない。


 オリヴィアの胸は、ケファの肉の剣で深く、臓物が綻ぶ程に深く切り裂かれた。


 しかしオリヴィアは裂かれた肉の内側から、赤黒い霧を発した。それに紛れて血肉の匂いを好む羽虫と蛆虫が大量に溢れ、ケファに向かって襲い掛かった。


「どうせその腹の中に虫螻を飼ってるんだから、これも同じでしょ!! 虫に喰われてさっさと死ねェ!」


 そのオリヴィアの言葉に同調する様に、ディーデリックはケファに付けられた傷を抱えながらも旧型銃を構え、ケファに向けてその引き金を引いた。


「良くも私の、母を! 母を! 父の申し子めェ!!」


 放たれた弾丸はケファに届くことも無く、その寸前で静止する。ディーデリックは空を飛ぶ力等無く、そのまま無力さを噛み締めながら、そしてケファに見下されながら、オリヴィアと共に地面へと落ちていった。


 しかし、それと交代する様に、夏日が飛び出した。だがその頭の上には猫の耳が生えており、しかし次の瞬間にはその耳は消えていた。


 この戦いと同じ高さにまで足が届くと、その下に彼女の友である猿の頭を持ち鳥の羽根で空を飛ぶ神仏妖魔存在が現れ、夏日はその背に立った。


 更にその神仏妖魔存在を地面として、更に高く、前へ跳躍した。向かう先は、やはりケファ。真正面から手に持ったナイフで頭を突き刺してやろうと殺意を剥き出しにしていた。


 夏日のそのナイフがケファに届く距離まで近付いた瞬間、彼女は素早くナイフを薙ぎ払った。


 その刃がケファに触れる直前、彼女の頭にまた猫の耳が現れた。


 ナイフが当たるその瞬間だけ、彼女は自分よりも力の強い、自分の中にいる元飼い猫に変わっている。


 だがこれは本来、とても危険な行為だ。


 他者に自分の体の主導権を譲る。想像するなら、断崖絶壁を想像すると良い。自分は他者の腕を掴み、その腕だけで崖からぶら下がっている。


 酷く頼り無い、もしその腕が離れれば、少しでもその腕を掴む力が緩めば、夏日の意識は崖の下、何処へ通じるかも分からない暗い底へ沈み、永遠に浮かび上がることは無いだろう。


 しかしそれは百も承知。彼女の殺意は、その危険を恐れる本能すらも上回っていた。


 しかし殺意が籠もったナイフは、やはりケファの寸前で静止する。


「……何故、貴方は戦うのですか?」


 ケファの疑問は最もだ。何せ彼女は殆ど無関係。確かに死屍たる赤子の信者は彼女に襲い掛かったが、それだけで敵対を選ぶ程好戦的な性格では無かったはずだ。


「……兄の、話を聞いたんです」


 夏日の猫の耳はすぐに消えた。これは夏日本人の言葉だった。


「それが本当だってこと、理由は分からないけど、分かるんです。だから、だから……兄を奪った貴方を、許せそうに無い」


 彼女にその記憶は無い。にも関わらず、彼女は知らない兄の為に、共に堕ちることを決めた。既に、彼女は堕ちる所まで堕ちてしまっているのだから。


 その証拠に、彼女の左目の下には、昴や真一、真二や一真に刻まれている黒百合の紋様が刻まれているのだから。


 その瞬間、更に二つの人影がケファの背後に現れた。


 "静止"の奇跡すら間に合わず、その豪快な拳と、計算された蹴りはケファの体を地面へと叩き落とした。


 真二と、一真がやったのだ。二人の首元には黒い百合の紋様が刻まれており、そこから周囲に微弱ながら千年以上継ぎ足されて来た呪いを振り撒いていた。


 しかし、その効力は絶大だ。殆ど不死となり、死すら眷属となる圧倒的な力。だがケファは、よりそれを洗練した真一の呪いで進化を遂げた存在。その程度では、ケファを殺すことは出来ないだろう。


 ケファの迎撃の為、いち早く地面へと降りたのは、昴と黒恵だった。二人は黒恵が作り出した"扉"を潜り、地面へと素早く降りた。


 昴が両手を合わせ、その指先をケファに向けると、そこから津波の様に黒く穢れた呪いが押し寄せた。更にその手を開き、握る様に指を曲げると、直後に黒い呪いを着火剤として、影と見間違える程の黒い炎が燃え広がった。


 だがケファは、変わらない愛の炎を全身から吹き出した。いや、寧ろ神への愛は先程より比べ物にならない程大きくなっており、それに比例して炎はより高い熱を有していた。


 それは、呪いすらも滅却する聖なる炎となり、昴の炎を逆に燃やし尽くした。


 だが、昴がそんな大雑把な攻撃だけで終わるはずが無いと思ったのか、ケファはすぐに視線を辺りに回した。


 すると、やはりいた。昴の大掛かりな攻撃に隠れ、黒恵がケファに刃を振るい、また「"蒼穹を葬る刃(スラムリロヴァード)"」と口遊んだ。


 ケファは何とか対応が間に合ったのか、その刃を間一髪で避けた。


 前に一度、"蒼穹を葬る刃(スラムリロヴァード)"で切られた時、彼はその内側に潜む三つの輝きを切り裂いた。その輝きとは不滅、復活、永遠の力の根源。完全に壊された訳では無いが、致命的なダメージを受けた時に、それが回復する見込みが無い。


 二撃目が入れば、今度は何が切られるのか分からない。黒恵の攻撃だけは、徹底的に避けなければ。


 しかし、その思いに支配されてしまったのか、今度は周りが見えていなかった。


 たった一瞬、その一瞬に、真二は愛の炎によって身が焼けることを覚悟しながらもケファの頭に連撃を叩き込んだ。


 落下してすぐに向かったとしても、どれだけ真二の足が速くとも、この僅かな時間でケファに拳が届く程の距離を詰めることは不可能。


 その不可能な出来事により、ケファはまた一瞬思考に支配された。


 ケファに戦闘の才能は無い。この極限状態の中、予想外のことが起こればすぐに思考に支配され次の行動に移せない。それもまた、ケファの弱点。


 更に真二の攻撃の隙間を縫って、一真が隠し持っていた投げナイフをケファに投げ付けた。


 それは見事にケファの喉元に突き刺さり、それは喉を突き破り脊椎まで届きそれを傷付けた。


 ケファが恐れていた致命的な一撃。しかも真二の連撃はまだまだ続く。


 一発一発が重々しく、その一撃一撃が生を殺す鬼畜の拳。真二が繰り出せる渾身の拳なのだ。それによって、ケファの頭部は粉々になって骨の破片が散らばるだけになった。


 そこに更に、ようやく傷を再生し終わった真一がケファの前に現れ、服を着ていないままケファに両手両足で抱き着いた。


「全てを貰うぞ、ケファ。僕達家族の勝ちだ」


 一秒、二秒。戦場に於いてその時間は悠久にも感じられる程長い。それだけで、真一はどれだけ大量の情報を抜き取れるだろうか。


「……おかしい」


 五秒が経った頃、真一は疑問の表情を浮かべながら、ケファから離れた。


「これ以上情報が奪えない……!」


 その直後、真一の体はケファから発せられる熱波によって吹き飛ばされた。それは周囲にいる者達も同じだ。


 吹き飛んだ真一の小さな足を昴が掴むと、それとほぼ同時にケファは動き出した。


「ああ、そうか、成程」


 ケファの頭部はあっと言う間に再生し、その言葉を発した。


「私は、真に不滅となったのか。いや、何よりも脆い。しかし、だからこそ、故に、私は、新たな星となれるのだろう。そして遂にその王国が築かれた暁には、その玉座を真の王に返そう。ただ永遠に、私は神を愛そう」


 彼は、人を超越した。


 遂に彼は、人を超越し、遂に彼は、人を超えたのだ。


 モシュネの子に寄生した蛆虫共は、更に進化を重ね、遂に永久を手にしたのだ。遂に、その生が何者にも侵されることは無くなった。


 そしてそれをたった今、真一が証明した。この場で唯一人、自身を殺せる力を持つ彼が、こうやってケファを殺せるチャンスを存分に活用していながら、自身を消すことが出来なかったのがその証拠。


「ああ、最早命の実は不要となってしまった。……しかし、こうして感じてみると、人とは何と脆く、儚く、そして、美しいのだろう」


 直後、夏日の奇襲がケファの脊椎に襲い掛かった。


 だが、最早それすら児戯に等しく、ケファからしてみれば視界にも入らない幼稚な攻撃。


 変わらずケファの視線の先には、黒恵と昴がいた。真一が脅威にならなければ、この場で僅かながら自分の生に牙を突き立てられる何かがいるとすれば、あの二人なのだ。


 しかし、今の彼にとって、神の愛を空から感じる彼にとって、それもやはり、陳腐な考え。


「神の愛に身を焦がし、その偉大さと寛大さと慈愛を感じなさい」


 彼の身を纏う神への献身の愛の炎が、一気に広がった。


 先程とは更に比べ物にならない熱気、それの最初の被害者は夏日であった。


 普通ならその熱気、当てられるだけで身が焦げ、喉が焦げ、神を信じぬ背信者は藻掻き苦しみ死に至る。


 だが、瞬間に、夏日の背に"扉"が開き、そこから伸びた腕が夏日の焦げて塵になりそうな服を掴んだ。


 その"扉"の先は、亜津美の後ろだった。真二や一真が異常な速さでケファに駆け付けることが出来たのは、彼女の"扉"を潜ったからだ。


「大丈夫?」

「あっつぃ! 服! 服燃えてる!」


 夏日はすぐに燃えている服を脱ぎ捨てると、その背中の傷が顕になった。


 その傷は、昴の背に刻まれた罪と殆ど同じ。無数の刺し傷が繋がって出来た一つの大きな痛々しい傷。


 ケファを中心として、愛の炎による爆発が起こった。その衝撃の後にも愛の炎は絶えることは無く、少しずつ熱量を増し辺りに熱を伝え続けた。


 向かって来る熱に、昴は黒恵の前に出て両手を向けた。


 やって来た熱と炎は、彼が持つ愛によって退けられていた。しかし、前の様にその炎を全て消し去ることまでは出来ず、精々自分の周りの炎を止める程度だろう。


「黒恵! 大丈夫だよな!」


 昴は、咄嗟にそう叫んでいた。


 黒恵は、何故か口角を上げて昴との距離を詰めた。


「ええ! 勿論! ちょっと服が焦げたけど、どうせ真っ黒だし問題無し! 口調、戻ったわね」

「そうか、ああ、本当だな。……まあ良いだろ」

「それで、昴の方は」

「さあな、どれだけ抑えられるか。今は一応押し留めるくらいは出来てるが……これがどれだけ続くかだな」


 黒恵は周りに視線を移し、近くにいた他の人物達が無事かどうかを確認していた。


 一真、真一、真二の三兄弟の周りには黒い呪いが壁を作り、その後ろには更に真一がケファから奪っていた他者の情報で肉を作り、更に壁としていた。


 亜津美、夏日の姉妹は、亜津美の"扉"が二人を囲い、向かって来る熱と炎を上空に逃がしていた。


 取り敢えずこれなら大丈夫だろうと、黒恵と昴は息を漏らした。


 しかし、現状は更に最悪に転じた。


「どうにか出来るか? 黒恵」

「無理よ。この炎の海の中、どうするって言うのよ。逃げるくらいなら出来るわよ、私の力はそれ特化みたいな所あるから」

「それ特化ぁ? 人の首刎ねたりする力がぁ?」


 その間も、上空でヘリは飛んでいた。


 そのヘリの運転手である詩気御は、ケファの姿を目にし、彼にとっては珍しく驚きで目を丸くしていた。


「そんな馬鹿な……! 彼がああなるはずが無い!」

「落ち着きなさい」


 苞穂は冷静に、下の炎の地獄を見下ろしながら詩気御に冷静を説いた。


「貴方、何か知ってるらしいわね。全部説明してくれない?」

「……それを聞いてどうする気だい?」

「四維の一族は知識欲で滅んだ。例えそれが破滅へ向かう知識だとしても、追わずにはいられない。理由なんて、私が四維だからで充分でしょ」


 しかし詩気御は答える気は毛頭無いのか、それでも出来る限り伝えようと言葉を濁しながら言った。


「事情は知っている。しかし僕は言えない。まだその時じゃ無い」

「真央が言うには、貴方は本来死屍たる赤子(あっち)側らしいわね。何故裏切ってこちらに来たの?」

()の子供は愛おしい物だろう? ……ああ、成程、そう言うことか」


 詩気御は自分の言葉からケファの変化の答えを見付けたのか、ぼそぼそと口を動かしていた。


「虫はモシュネ君の子に寄生していた。記憶の力を一部引き継いだか、もしくは奪ったからこそ、あの力だとすれば……。その力を遡り、そこにまで到達したか。筋は通る。しかしそれだけでは……クソ、やはりlus-(ラス=)viraetge(ビルゲ)nua(ヌア)unalvauti(ウナルバウティ)-gerse(=ゲルゼ)の干渉が大きいか……!! 不味い、このままでは、この世界すら……いや、大丈夫だ、まだ大丈夫だ。彼もしくは彼女の影響か、彼もしくは彼女達の干渉は限定的、黒恵君や昴君に直接的な危害を加える様子が無いのがその証拠……いや、しかし、間に合うだろうか。今はまだモシュネ君程度でも止められる程に貧弱な影響しか及ぼさないが、もし……この世界への干渉が完全で不完全な物になってしまえば……この世界郡では……」


 苞穂からしてみれば、気でも狂ったのかと思ってしまう。急に話を辞めたかと思えば、また急にぶつぶつと一人言。その一人言の内容も理解不能だ。


「つまり、どう言うこと。簡潔に説明しなさい」

「状況は刻一刻を争う。もしかすれば、この戦い、僕も参戦しなければならない可能性が充分ある。だが今、出る訳にはいかない。ケファが出している炎は、僕ですら手こずる。何の対策も出来ていない今、相手にしたくない」

「負けるってこと?」

「ああ、そう言っている」

「バカね、貴方」


 苞穂は言葉通り、詩気御へ馬鹿にする様な目線で見下ろしそう言い放った。しかし詩気御は薄ら笑いを崩すこと無く、寧ろ更に笑みを深めてみせた。


 それに答えるかの様に、苞穂は笑みを見せ、口を開いた。


「始めから、この戦いの勝敗なんて関係無い。だから真央は、あの海から追い出された海の仔をあっちに送ったんでしょ」

「成程、つまり君はこう言いたい訳だ。この戦いが始まった時点で、既に僕達は死屍たる赤子に勝っている、と」


 苞穂はにやりと笑い、ヘリのディスプレイに映る地上の映像に目を向けた。


「ええ、既に私達の勝利に変わりは無い。残る問題は、ケファをどうするか。それだけよ。……さて、と。こっちからも狙撃くらいはしておくか」


 そう言って苞穂はヘリの中に積まれていた真央の旧型狙撃銃を手に取り、その銃口をヘリの外へ向け、地面で蠢く他の死屍たる赤子の信者達に照準を合わせた。


「銃の腕前はどれくらいだい?」

「そうねぇ……経験日数半日、って所ね」

「ははっ、ビギナーズラックを期待しておくよ」


 ケファが愛の炎を周囲に広げてから、既に三分が経過しようとしていた。


 どれだけ直接的な炎は退けているとしても、その熱は体に届いている。それだけで肌が焼ける様に痛むと言うのに、そんな環境で三分。


 既に、夏日は立つことも苦しそうだ。異常とも言える発汗を見せ、これ以上ここにいれば、まず熱中症か、脱水症等で死ぬだろう。


 しかし、動くに動けない。下手に逃亡の為に動くと、ケファがそちらへ動いて更に被害が拡大するかも知れない。この、一種の膠着状態が最も被害が少なく、それでいて最も苦痛を感じる状態なのだ。


 何か打開策を考えていた黒恵だが、その度に諦め、その度にまた考え、延々とそれを繰り返していた。


 何時の間にか、炎から身を守っている昴の息が荒くなっていた。


「……不味い、そろそろ、限界に近い」


 昴は弱音を吐いていた。黒恵の経験上、中々お目にかかれ無い昴に、状況は逼迫していることが嫌でも理解させられる。


 だが、その瞬間、黒恵の頭の中に、一人の顔が思い浮かんだ。


 それは、彼女の唯一の親友、ミューレンの綺麗な顔。一体何故こんな時に思い返したのか、彼女は分からない。


 ただ、はっきりと分かることは、ミューレンが、ここに来ている。この、聖戦の場に、ミューレンが来ていることが分かるのだ。


 徐々に近付いている。彼女は少しずつ、近付いている。


 すると突然、ケファの愛の炎に、大型の運送トラックが突っ込んで来た。IOSPが物資、人員の輸送用に用意したトラックでは無い。記憶が正しければ、あれは確かこの場が戦場になったことで事故を起こして止まってしまったトラックの内の一台だったと、黒恵は思い返した。


 だが、こんな状況で、一体誰が――。


 その答えは、すぐに分かった。


「黒恵ー!! 昴ー!!」


 そのトラックの助手席から身を乗り出し、ミューレンが叫んでいた。

最後まで読んで頂き、有り難う御座います。


ここからは個人的な話になるので、「こんな駄作を書く奴の話なんて聞きたくねぇよケッ!」と言う人は無視して下さい。


さあ、そろそろ全員集合です。


いいねや評価をお願いします……自己評価がバク上がりするので……何卒……何卒……

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