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監視カメラ

 直人にはヤラセだの詐欺だのと、言ってはみたものの、あの黒水晶のサイトが気になって仕方がなかった。兄貴の持っていた黒水晶は本当にこのサイトで語られている物と同じものなのか?だとしたら兄貴の成功はこの黒水晶のおかげだったのか?私は24時間この黒水晶の事が頭から離れなくなっていた。

 それでも兄貴の葬式から一週間が経ち、我が家は以前のような平穏さを取り戻しつつあった。しかし、一本の電話がまた兄貴の死を思い出させることになった。

 その日も仕事から帰り、これから母と一緒に夕飯を食べようとした時だった。電話が鳴った。私には予感があった。

 母は電話に出ると恐縮して「はい、お世話になりました。あっ、そうですか、分かりました。よろしくお願いします。」そう言うと電話を切った。短いやり取りだった。

「警察から?」

「そう、よく分かったね」

「何だって?」

「犯人が捕まったてさ、やっぱりマルチの被害者だったって」

「そっかー、やっぱりその人は兄貴に騙されて大損したのかな?」

「もういい、母さんそんな事知りたくない、信一が死んで全て終わったんだよ」やっと落ち着いてきた母の心がまた痛み出してしまった。

「ごめん、確かにそんなこと考えたって仕方ないよな」母をこれ以上苦しめたくなかった。しかし、母に言った言葉とは裏腹に兄貴に何が起こったのか、黒水晶と本当に関係があるのか、私はますます知りたくなっていた。そもそも、あの兄貴にマルチビジネスを始める知識も人脈もあるとは思えないのだ。マルチ商法なんて何年もその道に携わった人間にしかできないはずだ。そしてあの黒水晶。もう自分の気持ちを抑える事が出来なくなっていた。

 翌日、私は兄貴の黒水晶を持って、骨とう品や美術品を扱っている店に行ってみた。スーパーには急病という嘘の電話を入れておいた。

 店の主人は黒水晶を大きな虫眼鏡で見たり、ペンライトで光を当てたりして、鑑定をしてくれた。

「うーん、これは黒水晶じゃないですね、とても良く出来てますけどね」

「えっ、そうなんですか?」黒水晶だと完全に信じ込んでいた私にとって店の主人の言葉は意外だった。

「ええ、黒水晶ならばわずかながらでも光を通すはずなんです、でもこれは一切光を通しません。ほらね。」

主人はペンライトを当てて見せてくれた。確かに光は全く通らない。

「じゃあこれは一体何なんですか?」

「いやー分かりませんね、ただし人工物である事には間違いないでしょう、こんなもの今まで見た事ないですからね。」

「はー」

「もしよかったら非破壊検査でもしてみたらどうですか?紹介しますよ」

 納得のいかない様子の俺を見て店の主人は言ってくれた。店の主人もお手上げの代物が持ち込まれた時には何度か利用した事があるといの事だった。私は矢も楯もたまらず、一時間ほど車を走らせ、その装置を持っているという工場に行った。

「へー、何でしょうね」そう言うと検査技師は空港で手荷物検査の時に使うような機械の中に兄貴の黒水晶を入れた。

「これ監視カメラですね。」

「は?」予想だにしない答えだった

「ほら、銀行の入り口なんかに付いている半球状の監視カメラを見た事はないですか?あれを球体にしたものですよ。外からは監視カメラと悟られないようにマジックミラーのようなものを張り付けてあるみたいですね、ただし、内部からは三百六十度撮影できるようになってると思いますよ」

「あのー、これは映像と音声の両方が撮れるんですか?」

「ええ、おそらくできると思います、マイクらしきものも確認できましたからね。しかし一体誰がこんなものを作ったんでしょうね」

 頭が混乱していた。早く一人になりたかった。詳しい経緯は説明せずに私は急いで工場をあとにした。

つづく

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