第四十八話:新しい時代
王宮前の広場に、ロサーナの民が続々と集まってきていた。
老いも若きも、魔法使いも、そうでない者も。
王宮前広場がこれほどの人で埋まるのは久しぶりのことだった。
カイルは広場の端に立って、その光景を眺めていた。
タティスとハンナもいっしょだった。
タティスは珍しく神妙な顔をしていた。
「すごい人だな」
「ロサーナ中から集まってるぜ」
ハンナもどこかソワソワしている。
王宮の正面に設けられた壇上に、マドン国王が現れた。
広場がしんと静まり返った。
マドンはゆっくりと民を見渡した。
「余はこの国の象徴として、これからもロサーナの民と共にある」
「民の穏やかな暮らしと、幸せを願い続ける」
「しかし、まつりごとは全て、今日よりスキーンズに委ねる」
「スキーンズはロサーナ王国初代大統領として、これからの、この国を導く」
マドンは玉座に戻る。
スキーンズが壇上に進み出た。
軍服ではなく、ロサーナ王国の正装を身にまとっていた。
広場は静まり返っている。
スキーンズはしばらく民を見渡した。
そして、おもむろに口を開いた。
「ロサーナの民よ」
「余計な前置きはしない」
「まず、初代大統領として、謝らねばならないことがある」
広場が少し、ざわめいた。
「魔法使いの民たちよ」
「30年間、辛い思いをさせた」
「前国王の決断は重いものだった」
「しかし、結果として、罪の無い民を理不尽に縛った」
「魔法使いの民には罪は無かった」
「それなのに、自由を奪った」
「申し訳なかった」
スキーンズは深く頭を下げた。
広場が静まり返った。
聴衆の中から、すすり泣く声が聞こえた。
ハンナは、カイルの手を握ってきた。
カイルは、優しい笑顔でハンナの横顔を見つめていた。
スキーンズはゆっくりと顔を上げた。
「そして、感謝する」
「魔法使いの民たちは、この国を愛し続けてくれていた」
「そして今、この国のために必死に努力してくれている」
「心の底から、感謝している」
「本当に、ありがとう」
広場のあちこちから、拍手が起き始めた。
やがてそれは大きなうねりになった。
ハンナは、静かに涙を流しながら、スキーンズの方を見ていた。
カイルは、ハンナの肩を抱いた。
スキーンズは拍手が収まるのを待った。
「次に、この国をどうするか、話したい」
「ロサーナはこれから経済的に発展させねばならない」
「道路を整備する、産業を育てる、民の暮らしを豊かにする」
「そしてこの国はこれから、外の世界とも対話していく」
「閉じた国ではなく、開かれた国として歩んでいく」
「それがこの国の民にとって豊かな未来に繋がると、私は信じている」
「しかし、私は、そのやり方を一人で決めるつもりはない」
「民の声を聞かせてくれ」
「この国は、この国の民、ひとりひとりのものだ」
再び拍手が起きた。
スキーンズは続けた。
「これからは、この国の民のひとりひとりが、豊かな未来を考え、それを実現していく時代となったのだ!」
広場が大きな拍手に包まれた。
カイルはハンナを抱き締めながら、その光景を見ていた。
スキーンズの後ろに座って拍手を送っているノーランの姿を見ていた。
ノーランの横で、涙を流しているグレースや、号泣しているコービンの姿も見えた。
タティスは腕を組んだまま、珍しく黙っていた。
カイルは心の中で呟いた。
(良かった、スキーンズさんも理解してくれたんだな…)
マドンが玉座から、静かにスキーンズを見ていた。
その顔には、穏やかな笑みが浮かんでいた。
広場に、ロサーナの民の歓声が響いていた。




