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第四十九話:遠くからの波紋

ベルは紅茶を飲みながら、木苺を摘んでいた。


次の木苺を摘もうとして、その手を止めた。


「あ…。」


短く声を発し、ティーカップを置いた。


そして、国境の森を眺めながらタバコをふかしているプホルスの横に立った。


プホルスは、何も言わずに森を見ている。


ベルも森を眺めた。


「温かくて、力強い…」


優しい声でベルが言った。


「ロサーナ…か?」


「そうです」


「ベッツか?」


「いえ…ベッツだけじゃなくて多くの民です」


「何があった?」


「それは分かりません」


「魔法使いの民たち、だよな?」


「そうです…ロサーナの魔法使いの民たち、みんな、です」


「みんな?」


「そうです、みんなが喜んでいます」


「それは、良いことだな」


「はい…凄く、ココロが揺さぶられます」


「エドガーや、ハンナもか?」


「そうですね、もちろん」


「…。」


「ものすごいエネルギーだわ…」


「…。」


「私の知らない人たちですが、たくさんの想いが伝わってきます」


「…。」


プホルスは、ベルの頬を伝う涙を初めて見た。


ベルはもともと、帝国図書館の本を全て読破し、画期的な論文を何本も発表していた天才学者でもあった。


魔法使いとしても超一流で、プホルスの考えを理解し軍師として支えてくれた。


ベルがいなかったら、自分はここまでこれていないだろう。


ベルはいつも冷静沈着で、感情を表に出すことは滅多にない。


笑うことも、泣くこともなかった。


怒られることはあったが。


そのベルが微笑をたたえながら涙を流している。


ロサーナ王国で何が起こっているのかはわからなかったが、同胞である魔法使いたちが喜びに包まれているのならプホルスにとっても嬉しいことだ。


「あ…。」


また、ベルが声を上げた。


「今度は誰だ?」


「カイル…に抱き締められている」


「ベッツか?」


「いえ、違います」


「あの野郎、女にゃ興味無さそうな顔してやがったのにな!」


「そんなんじゃありませんよ」


「じゃなんなんだよ」


「本当、デリカシー無いですね」


「へいへい、すいませんね」


プホルスは、次のタバコに火を点けた。


「でもそれなら、アイツはやりやすくなるだろうな、いろいろと」


「そうでしょうね」


「こないだアイツが来た時にいろいろ見せたことも実を結ぶかもな」


「カイルさんの方からいろいろアクションしてくれていると思います」


「この国の資源がアイツの手でどんなモンに生まれ変わるか、楽しみだな」


「そうですね」


「とりあえず、東の島国の件もあるしな」


「カイルさんと、危機は共有出来ました」


「帝国の民、ロサーナの民、みんな守らねえとな」


「そのために私たちは存在しています」


「そして、アイツの神の目、だ」


「はい…。」


「ベルはどう思った?」


「カイルさんの目と、思考は魔法ではないんです」


「魔法のひとつじゃないのか?」


「いえ、カイルさんからは全く魔力は感じられません」


「まあ、そうなんだけどさ、アイツだけ特殊なのかもしれねえぞ?」


「特殊、なのは間違いないですけど」


「アイツ自身もよく分かってねえような気もするな」


くすっと笑いながら、ベルは答えた。


「そうですね」


(鉄面皮のベルが泣いたり笑ったり…)


(カイルが絡むと女どもがザワザワするんだよなあ…)






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