第四十五話:ただいま
魔法の絨毯でロサーナの森を抜けて、二人は地面に降り立った。
王宮へ向かう道のりを歩いている間、ベッツはずっと無言だった。
こころなしか、元気が無い様に見える。
ベッツは何回も後ろを振り返っていた。
「子どもたちが気になるのかい?」
ベッツはこくりと頷いた。
「また会いに行けばいい」
「うん…」
「また近いうちに行くことになるよ」
「本当!?やったあ!」
ベッツに笑顔が戻ってきた。
ベッツが育った孤児院だもんな…みんな兄弟みたいなもんなんだろうな…。
ロサーナの街並みが見えてきた。
「あ、図書館だ」
ベッツの表情が和らいできた。
「帰ってきたな」
ロサーナ王宮に戻ると、グレース、スキーンズ、コービンからの質問攻めが待っていた。
この三人はまだプホルスを完全に信用しているわけではない。
騙されてるんじゃないか?という疑いの視線、前提での質問を延々と続けられてカイルはちょっとウンザリしていた。
そこで、プホルスへの関心を逸らすためにベルの話をした。
グレースと同等の能力者であること。
彼女も東の島国の異変には気付いていること。
下から上にエネルギーが噴き上がり、それを抑え込むエネルギーが存在すること。
そして、それがこちらに向かえば大陸もロサーナも壊滅するだろう、と推測していること。
やっと三人は黙った。
こりゃ…大陸と共同で対処しようというプランはまだ言わない方がいいな…。
スキーンズの執務室を出ると、ちょうどエドガーたちが舗装工事から戻ってきたところだった。
ベッツは満面の笑みでハンナとシェルビーの元へ走っていった。
「ただいま!」
ベッツはまずハンナに抱きついた。
ハンナは笑顔ではあったが、目線はカイルを追っていた。
カイルは「思案顔」で空を見上げている。
エドガーはカイルとハンナを交互に見て、ため息をついていた。
(カイルくん…そろそろハンナの想いに気付いてやってくれんかね…)
思案顔から「閃き顔」になったカイルがエドガーに近付いてくる。
「エドガーさんに聞きたいことが」
「なんだい?」(仕事の話だろうな)
「大陸との国境にある森、あそこに道路を通せませんか?」
「あの森を抜けて、大陸まで道路を繋げるって意味かい?」(やっぱりそうか)
「そうです」
「今は既に切り開いてあって一応道路があるところを舗装しているだけだからね」
「そうですね」
「森を切り開いて道路を通すにはかなりの魔力が必要だね」
「まあ、そうなりますよねえ…」
「ひょっとして…プホルスとそういう話になったのかい?」
「いえ、僕のプランです」
「まあ、不可能ではないよ」
「そうなんですか!」
「今は無理だけどね、人が育てば」
「不可能ではない、というだけで今はいいです、ありがとうございます」
いずれにしても大陸との「貿易」の話はまだ先の話だ。
ロサーナ国内の整備と、解放されたばかりの魔法使いの民たちの能力の回復が目先の課題だろう。
大陸は「素材の山」だった。
ロサーナ王国も資源は豊富だが、大陸の素材のバリエーション、埋蔵量の多さには夢がある。




