第四十話:ベッツとベル
カイルはスキーンズ師団長の執務室を出ると、エドガーたちの帰りを待った。
エドガーたちはあちこちの「重点補修地区」を飛び回り、道路整備に精を出していた。
やがて、エドガー、ハンナ、ベッツ、シェルビーの四人を乗せた馬車が戻ってきた。
カイルが出迎えると、ハンナとベッツは満開の笑顔になった。
シェルビーは、ちょっと緊張していた。
「みんな、お疲れ様!」
カイルは四人に向かって労った。
「あ…シェルビーさん?」
「あ…はい、シェルビーです」
「初めまして、この仕事はどうですか?」
「最初は難しかったけど今は慣れました」
「そうですか、僕も今日、みんなが作った道路を馬車で走りましたよ」
「あ…そうなんですね」
「凄く快適でした、ロサーナの民もみんな喜んでますよ」
「それなら良かった」
カイルはシェルビーと会話しながら、左斜め前から突き刺さる視線に耐えていた。
「エドガーさん、ありがとうございます」
エドガーは優しい笑顔で頷いていた。
「あ、ベッツ、ちょっと相談したいことがあるんだけど…いいかな?」
「あ、いいよ、なあに?」
左斜め前からの圧がさらに高まったが、カイルはそのまま続けた。
「プホルスさんと、連絡が取りたいんだ」
ベッツはキョトン、とした顔をしている。
「プホルスさんと、連絡を取る方法はあるかい?」
「えーっと…ベルになら伝わるかも」
「ベルさんって、プホルスさんの近くにいるのかい?」
「そうだね、だいたいいっしょにいるよ」
「じゃあ、ベルさんに僕がプホルスさんに会いたがってるって、伝えてくれないか?」
「うん!分かった!やってみる!」
ベッツは左手を上に挙げて、目を閉じた。
ベッツのカラダを大きなエネルギー体が包み込んでいく。
これを見てハンナは驚いていた。
今日1日、クタクタになるまで道路に魔法を使い続けたはずなのに…。
エドガーは小声でカイルに話しかけてきた。
「プホルスに用って…なんだい?」
「協力のお願いですよ、エドガーさん」
「協力?」
「そうです、ウチと大陸の共通の問題があるんですよ」
「それは…」
エドガーが言葉を継ごうとした瞬間、ベッツが叫んだ。
「ベルに伝わったよ!」
ベルは森で採ってきたベリーを食べながら大陸の自治領作りのための資料を魔法を使って書いていた。
空中をペンが踊り、浮かんでいる羊革で作った用紙に文字を書き込んでいく。
突然、ロサーナ王国でベッツのエネルギー体が膨らんだかと思うと、メッセージが伝わってきた。
一瞬、ベルは目を見開いたが、すぐにいつもの無表情に戻る。
横のテーブルで酒を呑んで寝ているプホルスの椅子を思い切り蹴っ飛ばす。
魔力を使っているので体重の重いプホルスのカラダを残して椅子だけ横へ移動した。
プホルスは後ろに向かって派手に転んだ。
目を覚ましたプホルスに、メッセージを告げる。
「カイルがあなたに会いたいそうです」
寝ぼけ眼のプホルスは目を白黒させている。
「カイルが!あなたに!会いたいそうです!」
プホルスの耳元でベルは大声で叫んだ。
「あぁ…聞こえてるよ…」
「それならいいです」
「返事をベッツに伝えられるか?」
「多分ですが大丈夫です」
「ベッツとカイルで、大陸に遊びに来いって伝えてくれ」
「遊び?」
「ああ…アイツに見せたいモノもたくさんあるしな」
「見せたいモノ?」
「それに、ベッツにも会いたいしな」
「分かりました、ではそれも伝えます」
ベッツは、ベルからの返信メッセージ受け取りに成功していた。
「カイル!返事が来たよ!」
「カイルと私で遊びにおいでだって!」
「プホルスが私にも会いたいんだって!」
ベッツは満面の笑みでカイルを見た。
「ありがとう、助かったよ」
カイルはベッツに礼を言いながら、再び左斜め前からの強烈な圧に耐えていた。
御覧頂いた皆様に心より御礼申し上げます。
初回投稿から毎日投稿を続けておりますが、最終話まで毎日投稿で走り切るつもりです。
常時、原稿ストックを40本以上キープして公開を続けます。
「エタりません、完結までは。」
最終話までお付き合い頂けましたら幸いです。




