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第二十七話:武具入札会での衝撃

武具入札会の日がやって来た。


これは年に1回の国を挙げてのイベントで、国中の大手、中堅の武具メーカーや卸売業者による一斉展示会だ。


ノーラン武器工房は、従来の槍の穂先、剣に加えて、自動小銃、ライフル、レールガンを持ち込んだ。


以前のノーラン武器工房は単なる下請けだったので参加資格は無かったが、今は第二師団の指定業者だ。


カイルたちはスキーンズ師団長の計らいで最も目立つ場所にブースを構えることが出来た。


ただ、レールガンだけは布をかけて見えなくしてある。


全国から集まった様々な業者がブースを構えているので、カイルは見ていて楽しかった。


ターナー商会が展示していた武具運搬用の荷車は良く出来ていた。


鉄と木材を巧みに組み合わせ、軽さと耐久性を両立させていた。


細かな金具類の細工も見事だった。


ノーランは熱心にその荷車を見ていた。


ノーランは槍の穂先や剣では負ける気はしなかったが、こういう木材の特性を利用した細工は素直に凄いと感じていた。


「ノーランさん!」


名前を呼ばれて、ノーランは顔を上げた。


ターナー商会の代表、ターナーだった。


「最近のご活躍、噂はかねがね」


ターナーは鍛冶屋というより技術者、という風貌の理知的な男だった。


「いやあ、この荷車、素晴らしい」


ターナーは荷車に手をかけながら頷いた。


「ウチは本来、武器よりこっちが得意で」


ノーランはターナーの展示品、荷車の他にもバケツやスコップなどの道具にも目を奪われていた。


「いやあ、武具から民生品に見事に発展させておられますね」


ターナーは笑顔で答えた。


「そうですね、軍より民、ですかね」


穏やかな会話が続いていたところに、隣のブースから横やりが入った。


バルカス商会の、バルカスだった。


「師団長に取り入って、上手くやりやがったなあ、ノーラン」


「ターナー、お前だってノーランに槍の穂先の仕事を取られたんだろ?」


「商売敵だぞ?ヘラヘラ話なんかしてる場合か?」


ノーランは、黙ってバルカスを見下していた。


「なんだあ?全部ホントのコトだろうが!」


バルカスは息巻いていた。


ノーランは、バルカス商会のブースを眺めた。


並んでいる商品は槍の穂先だけ、しかもノーランが作っていた頃よりさらに粗悪な材料で作られていた。


ノーランは、その槍の穂先を1本、手に取ってみた。


「ウチの商品に触るんじゃねえ!」


バルカスは叫んだ。


見れば見るほど、粗悪な材料、しかもマトモに打たれていない。


ノーランは、槍の穂先をバルカスに返した。


そして、無言でその場を立ち去った。



武具入札会で最も忙しいのは各師団の工廠長だ。


様々な業者が持ち込む商品や試作品を比較し、コストを勘案し、自らの師団に採用するか否かを師団長に提案する役目だ。


師団長がケチでコスト重視だと困ることもある。


バルカス商会の槍の様な粗悪品を安いから、と導入すると、現場の指揮官や兵士から不平不満も出る。


スキーンズはその点、コストより品質重視だったのでコービンは助かっていた。


そもそもスキーンズはロサーナ王国軍の中でも最も発言力があり、予算は他の師団よりかなり多かった。


コービンはゆったり、ノーラン武器工房のブースに座って高みの見物をしていた。


ターナー商会の荷車などは予約していたが、武具は全てノーラン武器工房で決まりだからだ。


やがて、武具の試技会が始まった。


槍、剣、弓などの実戦兵器は兵士による試技会で品質や強度がチェックされる。


ローリーやレイラも試技を行う。


剣、槍はノーラン武器工房の独壇場だった。


ローリーは途中で槍を交換することもなく、他の全ての槍を一瞬で真っ二つにした。


カイルと目が合うと、ローリーは口の端だけで笑っていた。


剣ではレイラが他の工房の剣を圧倒した。


試技の間は厳しい冷徹な目をしていたが、拍手を送るカイルと目が合った瞬間、顔が真っ赤になり視線を外した。


試技会が終わると、スキーンズ師団長が壇上に立った。


軍の人間からすると実質的なトップ、業者から見ると最もカネがある上得意先、皆がスキーンズの言葉に注目した。


「諸君、今回の武具入札会は今までとは異なる意味を持つ」


「北の脅威については知っている者も多いと思う」


「魔法使いプホルスが率いる軍勢が猛威を振るっている」


「ロジャーズ帝国に続き、カウフマン帝国も三日前、プホルスに敗北した」


ここで会場はザワザワし始めた。


北の脅威については全く知らない者もいた。


ある程度情報を持っていた者も、大陸を二分する2つの大国が両方倒されたことは知らなかった。


「ロジャーズ帝国、カウフマン帝国ともに、軍勢の数で言えばわが国の10倍以上だった」


「それが、わずかな月日で全滅したのだ」


会場のザワザワは次第に大きくなっていった。


「そこでだ!!」


スキーンズ師団長は大きな声で皆を鎮めた。


「私の率いる第二師団では対プホルス戦を想定し、新たな武器を開発した」


「今までの武器では対抗出来ん」


「論より証拠だ、皆に見て貰おう」


ノーラン、タティス、カイルでレールガンにかけられた布を外し、セッティングを開始した。


「この武器で、あそこに見える採石場を、破壊してみせよう」


スキーンズが指差した方向を皆が一斉に見た。


だが、まさか遠く離れた採石場が目標とはすぐに理解出来ず、首を捻っている者もいる。


例の採石場はスキーンズの資金で買い取ってあった。


今日はレールガンで完全に破壊しても差し支え無かった。


カイルは「10発であの山、無くなるな」と思い、10連発でセットした。


「撃てっ!!」


スキーンズ師団長の号令に合わせ、カイルは連射ノズルを引いた。


ドシュッ!という音が重なり1回に聞こえたが、実際は10発が超高速で連射されていた。


遠くの採石場の山が土煙で見えなくなった。


その約20秒後、…ドドドドド!!!!という地鳴りと共に着弾音が届いて来た。


皆、呆気にとられていた。


そして、土煙が風で流されると、元の形から大きく変容した山肌が見えてきた。


「これが!レールガンである!」


スキーンズ師団長が高らかに宣言した。


聴衆から地響きの様な歓声が上がった。


スキーンズは聴衆の反応を楽しむかのように、しばらく笑顔で頷いていた。


ひとしきり皆が感嘆の声を上げてから、おもむろに両手を広げ、上下させ、静かにさせた。


「皆は、30年前の出来事を憶えているか?」


「若い者は知らぬかも知れんな」


「プホルスは、30年前にもロジャーズ帝国、カウフマン帝国を滅ぼした」


「そして、わが国にも攻め込んだ」


「だが、わが国は、滅ばなかった」


「わが国は、プホルスに勝ったのだ」


「なぜ勝てたのか?」


「わが国の魔法使いがプホルスを封じたのだ」


「魔法使いが、わが国を救ったのだ」


「そして、このレールガンもわが国の魔法使いの協力で完成した」


「今回の国難、北の脅威に打ち勝つには魔法使いのチカラが必要なのだ!」


聴衆は黙ってスキーンズの演説を聞いていた。


「これは、玉座におわすロサーナ国王にも是非ご理解頂きたい」


「30年前、プホルスに通じていた不届きな魔法使いがいた」


「しかし、国を救ったのもまた魔法使いだった」


「当時の前国王殿下はその功と罪を勘案し、魔法使いたちを幽閉という罰に処された」


「しかし!今この国難を乗り切るためには再び魔法使いたちのチカラが必要なのです!」


「この30年間、彼らは実直で規律正しいロサーナの民として生きてきました」


「30年間という月日の長さは、罪を償うには充分であった、と私は考えます」


「寛大な御処置を、お願い申し上げます」


スキーンズは、国王が居る玉座に向かって深々と頭を垂れた。


聴衆からパチ…パチ…と拍手があがり始めた。


パチパチパチ…徐々に拍手の音が大きくなってくる。


やがて、拍手の音が会場全体をつつみ込んだ。



会場の端っこで、バルカスは涙を流していた。


最初は悔し涙だったが、いつしか別の感情に襲われていた。


横にいたターナーに話しかけられる。


「バルカスさん、レールガン、凄かったね」


「私にはあんな武器、想像すらできない」


バルカスは、声をあげて泣いていた。























御覧頂いた皆様に心より御礼申し上げます。

初回投稿から毎日投稿を続けておりますが、最終話まで毎日投稿で走り切るつもりです。

常時、原稿ストックを40本以上キープして公開を続けます。

「エタりません、完結までは。」

最終話までお付き合い頂けましたら幸いです。


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