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第二十二話:プホルスの兄弟

プホルスは、カウフマン帝国の掌握まであと一歩のところまできていた。


広大なカウフマン帝国に散らばっている帝国軍の軍事拠点を少数精鋭の魔法使い部隊で攻撃し、敵を圧倒していた。


もう、プホルス自身が戦地に向かう必要性は無くなっていた。


ベルは、各地で交戦中の味方の魔法反応やそれに乗せられて伝わるメッセージを感知し、戦況を把握していた。


「あと三日あれば充分ですね」


「ロジャーズ帝国軍の殲滅の時より早く終わりそうだな」


「そうですね」


「じゃあ、残党狩りはお前たちに任せる」


「分かりました」


と言ったあと、ベルはしばらく固まっていた。


「あの子…魔法を使ったみたい」


「ベッツがか!?」


「何か、危険な目に遭ってるのか?」


「いえ…使ったのは治癒魔法です」


「治癒魔法?ベッツが怪我したのか?」


「誰かの怪我を治したみたい、相手は…」


「カイル」


そう言ったあと、ベルはニヤッと笑った。


「あの子、上手くやってますね」


「カイルの反応も悪くないわ」


「大した言葉は乗って来ないけど」


「確実に浸透してるわ」


「適度な能力の開示は必要…」


「カイルのココロにも楔が打てたはず」


プホルスは安堵していた。


ベッツが危険な目に遭っていないのならそれでいい。


ベルは言葉を続けた。


「エドガー様の居場所も特定してます」


プホルスが動きを止める。


「やっとか」


「魔封石で丁寧に魔法を封じられていた様ですが、僅かな綻びを掴みました」


「今は感知出来ませんが、場所は特定出来ています」


「だいたいの場所さえわかればそれでいい」


「潜入、されるのですね?」


「あぁ、戦闘が始まればそれどころじゃなくなるからな」


「今の内に会って話をしておきたい」


「でも…プホルス様の魔法を隠すのは大変だわ」


「それを何とかするのがお前の仕事だろ?頼むよ」


「まあ…もう用意は出来てるんですけどね」


プホルスは苦笑していた。


そして、実兄であるエドガーとの思い出が頭の中を巡っていた。


子どもの頃から、仲の良い兄弟だった。


俺が結婚した時は、自分のことの様に喜んでくれた。


俺の子どもが生まれた時は、最高級のワインを奮発して持って来てくれた。


兄貴と酌み交わしたワインの味は、今でも鮮明に憶えている。


あの幸せな時間は、もう二度と戻って来ないけどな…。


「プホルス様?装着してみますか?」


ベルの声で我に返った。


魔封石を精錬して作った針金を編み込んで作った服と、腕と足に装着する太いサポーターの様な装着具だった。


「なんだこりゃ、かなり重いぞ」


「貴方の魔法を封じ込めるにはこれくらいしないとダメなんです」


「そして、これも」


太い指輪と、ネックレス。


プホルスは、ため息をついた。


「筋トレしたいわけじゃないんだけどな」


「ロサーナ北部の森の入り口までそれは着けなくて大丈夫ですよ」


「そこから先はグレースに感知されますから魔法は一切無しで行ってください」


「分かってるよ」


「この糞重たい服も着たまんま、だろ?」


「そうです、獣が出ても腕力だけでなんとかしてくださいね」


「はいはい」



プホルスは、ロサーナ王国の王都にいた。


フードを深く被り、なるべく目立たない様に慎重に歩いた。


ベルの指定した場所まで近づいて来ていた。


(平和な街だな…)


街ゆく人々の表情を見ていると暗い顔をしている人は少ない。


(まあ、民が平穏なのが一番だ)



もう少しでエドガーの居る場所のはずだ。


プホルスは視線を上げて、前を見た。


家のドアを開けて、出てくる男の姿が見えた。


エドガーだった。


その後ろにある看板も同時に目に入る。


「ノーラン武器工房」


プホルスは、一瞬、動きを止めた。


そして、家から出てきたエドガーに近付く。


エドガーは、声をかけなくとも弟の存在に気付いた。


「ここじゃ目立つ」


「ついて来い」


すれ違いざまに、弟に声をかけた。


プホルスは、踵を返してエドガーの後に続いた。


















御覧頂いた皆様に心より御礼申し上げます。

初回投稿から毎日投稿を続けておりますが、最終話まで毎日投稿で走り切るつもりです。

常時、原稿ストックを40本以上キープして公開を続けます。

「エタりません、完結までは。」

最終話までお付き合い頂けましたら幸いです。


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