第二十一話:女心という名の難敵
カイルは、魔法兵器開発の進捗状況を報告するために王宮に来ていた。
まだ、脇腹と背中の痛みは取れていない。
あの後、カイルはタティスからこっぴどく説教された。
「お前ら親子はよく似てるな!」
「腕は一流だが、それ以外がからっきしダメだ、てんでダメだ!」
「お前は女心ってヤツを理解しろ!」
カイルはタティスが何故そこまで怒るのかあまり理解出来ていなかった。
要はハンナにもっと配慮しろ、という意味なんだろうが、僕の何がいけなかったんだろうか?
カイルは「いつもの思案顔」でグレースの後ろを歩いていた。
グレースが足を止め、中庭の方を見た。
ベッツがひとりでベンチに腰かけて、花壇の草花を柔和な笑顔で眺めていた。
グレースは、ベッツに向かって、歩き出した。
カイルも後ろをついていく。
「ベッツちゃん、体調はどう?」
グレースが笑顔で語りかける。
「はい…もうひとりで散歩しています」
「そう…それは良かったわねえ」
ベッツは、グレースの後ろにいるカイルに気付いた。
「あ…カイルさん、こんにちは」
本当に、一点の曇りも無い笑顔だ。
カイルは、タティスの教えを思い出していた。
「ベッツさん、おはよう…いい天気だね!」
無理やり話題を広げようとした。
「そうですね、本当にいい天気!」
カイルはそれ以上話題を広げられなかった。
典型的な理系男子の不器用さ、だった。
その時、カイルは後ろから「刺すような視線」を感じた。
恐る恐る振り返ってみると、騎士団の制服を着たレイラがこちらを見ていた。
また、タティスの声がカイルの脳内にこだまする。
「あ…レイラさん、こんにちは」
「剣の使い心地はどうですか?」
レイラならノーラン武器工房から納めた剣のオーナーだし、技術者としてコミュニケーションを図れるはず…。
レイラは「フンっ!」と顔を背け、何も言わず立ち去って行った。
カイルはショックを受けていた。
その時、ふいにベッツが立ち上がり、カイルに近付いて来た。
左手に着けていた指輪を外し、カイルの脇腹と背中に両手を当てた。
カイルは、脇腹と背中に温かい、柔らかい波動を感じていた。
10秒ほど経ってから、ベッツは手を離した。
「カイルさん、どうですか?痛そうにしてたから…」
カイルは驚愕していた。
タティスの丸太の様な腕から受けていたダメージが綺麗さっぱり無くなっていた。
「あれ…?痛くない…」
「そうですか、それなら良かった」
ベッツはまた、優しい笑顔でカイルを見つめていた。
なんなんだ?この子のチカラは…。
温かくて、柔らかくて、優しい気持ち。
ベッツの手のひらを通じて伝わった感触はそんなイメージだった。
「あ、ありがとう…」
カイルは思わず、ベッツの目を見つめていた。
その時、またまた背後から「刺すような視線」を感じた。
かなり遠くまで歩き去っていたレイラが、遠目でもかなり怒っていることが「神の目」で確認できた。
女心という難敵は、カイルの神の目をもってしても解析は不可能だった。
ただ、グレースはカイルに魔力を放出しているベッツの手を見ながら、その繊細な出力作業に感嘆していた。
これは、魔力を溜めるための技術のヒントになる。
これはノーランに報告しておこう…。
と、グレースはベッツの能力の計測作業をしながら、カイルの鈍感ぶりに呆れていた。
御覧頂いた皆様に心より御礼申し上げます。
初回投稿から毎日投稿を続けておりますが、最終話まで毎日投稿で走り切るつもりです。
常時、原稿ストックを40本以上キープして公開を続けます。
「エタりません、完結までは。」
最終話までお付き合い頂けましたら幸いです。




