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第十九話:ロサーナ王宮の異変

ベッツのカラダは、ほぼ健康体に戻りつつあった。


5日間、ろくに食事もせずに足場の悪い場所を歩き続けたため衰弱しきっていたが、表情も明るくなり、病室からも出たがる様になった。


看護師といっしょに、中庭を散歩する様になった。


ベッツは、その可愛らしい容姿と純朴な性格で、王宮職員や兵士たちのアイドル的存在になっていた。


カウフマン帝国の戦乱から逃げて来た可哀想な少女、という背景もプラスに働いていた。


グレースは、プホルス側がベッツに言い含めたであろう「設定」をそのままにしていた。


グレースは、離れた場所からそっとベッツを見ていた。


その背後から、声をかけられた。


「おい、グレース、看過できんぞ」


騎士団の女剣士、レイラだった。


「あらあら、言葉遣いが荒っぽいわね」


「あの少女をどうして王宮に置く」


「難民の子なのよ?可哀想じゃない」


「難民などという戯言を信じるのか」


「カイルは、仲良くしてくれそうよ?」


「そんなはずはない!」


「アイツは全ての真贋を見抜く男だぞ!」


「あらぁ…えらくカイルくんのこと、褒めるのね、好きなの?」


「ふざけるな!!」


レイラの顔は真っ赤だった。


「私はな!プホルスの偵察隊と交戦したのだ!」


「カイルの作った剣は、ヤツらの魔法を纏わせた剣を折ったのだ!」


「知らんのか!」


「知ってるわよ?」


「ああ、強い剣を作ってレイラさんの命を守ってくれたから…」


「好きなのね?」


「いーーー加減に、しろーー!!!」


レイラは大声を張り上げて、プンスカしながら去って行った。


「分かりやすい子ねえ…」


グレースはため息をついた。



ノーラン武器工房では、カイルが設計図を書いていた。


電磁加速砲、カイルが前世で自ら実用化した技術をヒントにしてある。


砲身や弾丸の設計はサラサラと出来ていた。


「問題は、キャパシタ、だ」


カイルがかつて完成させた試験艦あすかに搭載したレールガンに於いて最も苦労したのは「キャパシタ」だった。


膨大なエネルギーをいかに貯め、一瞬で放出するかという蓄電と放電のシステム、キャパシタ。


これを電気ではなく魔力を動力源として再構築する。


魔法使いの猛者の集まりであるプホルス軍でも、マッハ7で飛んで来る金属の塊には対処は難しいはずだ。


また、弾丸を魔封石をベースに作れば、魔法による防御も不可能になる。


だが、キャパシタに魔力を「溜める」ことが出来なければ絵に描いた餅、だ。


キャパシタを設計し、テストし、小型化し、耐久性も確保する。


「これはなかなか、簡単じゃないな」


魔力のある環境じゃないと実験も出来ないしなあ…。


あ…魔力も炉もある場所があるじゃないか。


翌日、カイルとグレースは王宮の馬車に乗ってハンターの家に向かっていた。


ハンター宅では魔法使いの有志五人が待っていてくれた。


ハンターの家には、もともと魔封石のアクセサリーを製作するための炉があった。


その他、試作品のキャパシタを作るのに必要な設備、道具も揃っていた。


カイルの作ろうとしている魔法版レールガンは、この魔法使いの街の住人にとっても希望なのだ。


ここの人たちの誇りや自由を取り戻すためにも、このプロジェクトは絶対に成功させないといけない。


カイルはハンターを始め、集まってくれた人々に感謝し、協力してくださいと頭を下げた。


みんなの気持ちがひとつになり、熱のこもった議論や実験が続いた。


困難な課題ではあったが、カイルひとりではなく皆が仮説やアイデアを出し合い、一歩一歩前進していった。











ご一読いただき、ありがとうございます。作者の緒方光次郎です。

本作は現在、第65話まで書き進めており、完結までのロードマップは既に固まっております。毎日20:10に必ず更新いたしますので、どうぞ安心してお付き合いください。

もし少しでも「面白い」「先が気になる」と感じていただけましたら、下の評価欄(☆☆☆☆☆を★★★★★に!)やブックマークで応援いただけると、執筆の大きな励みになります。


次回も、明日の20:10にお会いしましょう。

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