第十二話:北の嵐への備え
「だから、この国を守りたいです」
カイルの力強い言葉を聞いて、グレースは少し、涙ぐんでいる様に見えた。
「そう、ありがとう」
グレースはカイルの瞳をじっと見ていた。
スキーンズは口を開いた。
「相手がこちらを攻めることを諦めさせるための、武器」
「相手を打ち倒す事なく、戦意を喪失させる」
「圧倒的な精度、性能の武器」
「攻め辛く、そして勝利は難しい」
「そんな事が可能なのか?」
カイルは暫く考えた後、答えた。
「以前の僕は、そのための武器を開発していました」
「僕のいた国は戦争に負けて焼け野原になりましたが、その後80年間は防衛のみで戦争していませんでした」
スキーンズは驚いていた。
「防衛とは戦力が無いと不可能だろう?」
「そうです、戦力は必要です」
「だが、国益を求めて他国は攻め入ってくる」
「それを許さないための戦力です」
「戦力と戦力がぶつかれば、それは戦争だろう?」
「攻め入って来ない様に戦力を整えるのです」
スキーンズは少し混乱していた。
「そんな事が本当に可能なのか?」
グレースがカイルに語りかけた。
「カイルはどうしたら戦争をしないで済む、と考えているの?」
「教えてくれないかしら」
カイルは少し考えてから、話し始めた。
「この国、ロサーナ王国の地理的条件は恵まれています」
「大陸から長く突き出た岬の先が膨らんだ様な地形です、陸路での侵入ルートは狭い」
「また、その狭い陸路以外の侵入ルートは海側しかありません。」
「仮に取り囲まれても、飛び道具があれば少ない戦力でも相手の攻撃を封じる事が可能です。」
ここでスキーンズが口を開いた。
「飛び道具?弓矢のことか?」
「いえ、鋼鉄の弾を飛ばします」
「鋼鉄の…弾だと?」
「鋼鉄で作った砲身に鋼鉄の弾を入れ、相手を狙って撃ち抜くのです」
スキーンズはノーラン武器工房の高い精度を思い出していた。
「それを、作れるのか?」
カイルは困った顔になった。
「砲身と、弾は作れます」
「ただ、弾を飛ばすための動力源がありません」
「それを今、探しているところです」
ふうむ…と、スキーンズは思案顔になった。
カイルは続けた。
「動力源の大きさにもよりますが、かなり遠くの敵、弓矢も全く届かない距離に居る相手を正確に攻撃出来ます」
「動力源があれば、ですが」
スキーンズがカイルに問う。
「動力源とは、具体的にどんなものが必要なのだ?」
「強力で、制御できて、安定したチカラです」
「鋼鉄の弾を撃ち出すチカラとはどれくらいのものなのだ?屈強な兵士のチカラでは無理なのか?」
「人のチカラでは全く足りません、とてつもない大きさのチカラが必要です」
グレースがカイルの顔をじっと見ている。
「カイル、私の魔力を見た時、どう感じた?」
カイルは少し考えてから答える。
「強力で、安定していて、制御できそうだと思いました」
「でも…」
グレースは微笑む。
「でも?」
「よく分からないです、そのチカラをもっとよく見せてもらえますか?」
グレースは指輪をゆっくりと外した。
再び、あの不思議なチカラがグレースのカラダを包み込み、膨れ上がる。
カイルは「神の目」でそれを高速分析し始めた。
見れば見るほど不思議なエネルギー体だ。
しかし、鋼鉄の弾を撃ち出すのに充分なエネルギー総量があることは理解できた。
カイルはグレースに礼を言った。
「ありがとうございました、グレースさん」
グレースは再び指輪を付けながらカイルに聞く。
「どう?その動力源にはなりそうかしら?」
「そうですね、可能性はあります」
「僕の扱ったことのないチカラなので、いろいろ研究してみないといけませんが」
スキーンズが大きな声を出した。
「魔力が、動力源になるんだな!」
「遥か彼方の敵を、鋼鉄の弾で撃ち抜けるんだな!?」
またカイルは困った顔になった。
「まだ確信は持てません、これから、です」
「それに、グレースさんひとりでは足りないですね、このチカラを持つ人がもっとたくさん居てくれた方がいいです」
グレースが、力強い声で言う。
「私と同じチカラを持つ人はいるわ」
「自由の身では、ないけどね」
「貴方のその瞳で、見て欲しいの」
グレースは、スキーンズの方を見た。
スキーンズは、頷いていた。
カイルはグレースの「自由の身ではない」という言葉で、ハンナの父親エドガーの瞳の奥にある哀しみ、怯えの意味を理解した。
御覧頂いた皆様に心より御礼申し上げます。
初回投稿から毎日投稿を続けておりますが、最終話まで毎日投稿で走り切るつもりです。
常時、原稿ストックを40本以上キープして公開を続けます。
「エタりません、完結までは。」
最終話までお付き合い頂けましたら幸いです。




