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閑話「信政、フィリアに弟子入りする」
時期:1878年、織田信政。
信政が味噌蔵に来るようになったのは、三十代になってからだった。
「また来たんですか」とフィリアが言った。
「来た」
「総理候補ですよね。忙しいはずです」
「味噌が大事だ」
「なぜですか」
「国は腹が減ると荒れる」とさらっと言った。「腹が満ちれば話し合える。だから食料と発酵食品の安定供給は、軍事より先に考えるべき国家戦略だ」
フィリアは少し考えた。
「……まあ、正しいですね」
「学びたい。弟子にしてくれ」
「総理候補が発酵エルフの弟子になるんですか」
「知識に貴賤はない」
フィリアは一年、信政に麹菌の話を教えた。麹の温度管理、発酵の速度、地域ごとの菌の違い。信政は熱心に聞いた。メモを取った。自分の領地に帰って、農民に伝えた。
信政が後に農政改革で見せた成果は、日本中を驚かせた。食料の安定供給率が、信政の執政期間中に三十パーセント上がった。
歴史家は「なぜ信政は農政に強かったのか」を長く議論した。
答えは麹菌だった。しかし誰も知らなかった。




