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神の如き宇宙人は何もしない~ただ売るだけ~  作者: 苺一会
第四部「戦争・決着・そして締め」第八章「豪州合衆国との戦争」

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閑話「平和な朝の豆腐」

 戦争が終わった最初の朝、佑は一人で豆腐を食べた。

 仙吉の孫の店ではなかった。そこまで行く気力がなかった。工作船の食料庫にあった豆腐を、器に入れて、醤油だけかけた。


 一口食べた。

 味がしなかった。

 豆腐の味はする。醤油の味もする。温度も正しい。しかし、何かが欠けていた。


 佑はしばらく箸を置いて、考えた。


 昨夜、戦争が終わった。何年も続いた戦いが、ようやく終わった。多くの命が失われた。その中には、佑が名前を知っている者もいた。シャリアの教え子だった少年。源一郎の弟子だった若い技術者。名もない兵士たち、千を超える名前。


 戦争が終わったことは、良いことだ。

 しかし、平和が戻ってきた朝に、豆腐の味がしない。


 なぜか。

 佑は考えながら、もう一口食べた。

 やはり、味がしない。


 思い当たった。


 平和が戻ってきたことで、失ったものの重さが、今になってわかった。戦争の間は、終わらせることだけを考えていた。終わった今、何を失ったかを考える余裕ができた。

 余裕ができた分だけ、豆腐が食べられない。

 それが——


 それが、人間と一緒に生きるということなのだ、と佑は思った。

 勝った時に喜べない。平和になった時に、すぐには笑えない。失ったものの重さが、まず来る。


 これは、五百年前には知らなかったことだ。

 佑は豆腐を食べ終えた。味がしないままだった。


 器を片づけながら、思った。

 仙吉なら、何と言っただろう。


「旨くないのは、おまえの腹が正直なだけだ」


 そんなことを言っただろう。叱るように、しかし優しく。

 佑はもう一杯、豆腐を用意した。


 今度は、少しだけ味がした。


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