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神の如き宇宙人は何もしない~ただ売るだけ~  作者: 苺一会
第四部「戦争・決着・そして締め」第八章「豪州合衆国との戦争」

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第36話 戦死者名簿を黄金で買う男——忘れないことが平和の値段

 講和が成立して一週間後。

 佑は日本政府に申し入れた。


「戦死者の名簿を売ってください」

 担当の役人が、少し目を丸くした。


「……売る、ですか。名簿を」

「黄金で買います。写しで構いません」


「なぜ……」

「私が売った兵器で戦った人たちです。名前くらいは知っておきたい」


 役人はしばらく黙った。それから立ち上がって、奥に行った。しばらくして戻ってきた時、分厚い帳面を持っていた。


「……写しです」

「ありがとうございます。黄金は——」

「要りません」と役人は言った。「これは……売るものじゃないと思います。差し上げます」

 佑は受け取った。



 工作船に戻って、名簿を開いた。


 一八四七人。

 全員の名前が、出身地と共に書いてある。農村出身が多かった。職人の子が多かった。大学統合校の卒業生も、何人かいた。


「……一八四七人」

 フィリアが横にいた。


「覚えます」と佑は言った。「五百年生きるので、全員覚えられます」

「……」


「名前を全部読んで、全部覚えます。それだけしか、できないので」


 フィリアは何も言わなかった。

 佑は最初の一ページを開いて、読み始めた。



【1855年・戦後記録】

戦死者:1847名

名簿:取得済み(贈与)


 これは商売ではない。

 商売にしてはいけない。


 1847名、全員の名前を読んだ。

 全員、覚えた。

 エルフの記憶は劣化しない。

 この人たちの名前は、私が死ぬまで消えない。


 それだけだ。


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