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第33話 開戦
一八五五年、春。
豪州合衆国の艦隊が、九州南岸に現れた。
十八隻。蒸気船と帆船の混成艦隊だった。旗艦の甲板に、司令官が立っていた。
ジェームズ・マクレガー。スコットランド系移民の三世。日本の対欧州戦争の記録を全部読んだ男だった。
観測室から、佑はそれを見ていた。
ライルが横に立っていた。
「介入しますか」
「しません」
「……分かりました」
ライルは何も言わなかった。ただ、観測画面の前から離れなかった。
戦闘は、三日で大きく動いた。
最初の日、豪州側が優位に立った。蒸気機関の出力が、日本の蒸気船より高かった。第一日で日本側が港を一つ失った。
第二日、日本軍が動いた。
田中源一郎が設計した耐圧殻を持つ潜水艦が、初めて実戦に投入された。豪州の補給線が一日で寸断された。
第三日、マクレガーは補給の途絶えた前線を見ながら、少し静かになった。
「……日本の潜水艦の深度、我々の記録より遥かに深い」と副官が言った。
「そうだろう」とマクレガーは言った。静かに。
「どこで——」
「人間が考えた」とマクレガーは言った。「それだけだ」




