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神の如き宇宙人は何もしない~ただ売るだけ~  作者: 苺一会
第三部「外圧と葛藤・日本が試される」第七章「豪州の台頭・佑の葛藤」

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閑話「設計図の涙」

 田中源一郎が工作船に来たのは、夕方だった。

 いつもは事前に連絡がある。しかし、その日は何も言わずに来た。入ってくる前に、少し間があった。ドアの前で、躊躇っていたのだろう。


 佑はドアを開けた。

 源一郎の顔を見て、何があったかを察した。


 言わなかった。中に入れて、茶を出した。源一郎は茶に手をつけなかった。

 しばらく、沈黙が続いた。


「……玄界灘で」


 源一郎が、ようやく口を開いた。声が、震えていた。


「私の設計した潜水艦が、輸送船を沈めました」

「知っています」


「民間の船でした。……十七人、死にました」

「知っています」


 源一郎は、手を握ったり開いたりしていた。


「私が設計した。私が……」


 そこで声が止まった。


 佑は、源一郎の横に椅子を持ってきて、座った。

 何も言わなかった。


「技術は正しく使われると思っていた。軍事に転用されることは、わかっていた。でも、まさかこんな形で——」


 源一郎は顔を手で覆った。大きな手が、震えていた。


「私は、人を殺したんですか」

「……それは技術を売った私の罪でもある」

 佑は静かに言った。


「あなただけの罪ではない」

「でも、私が設計しなければ——」

「私が売らなければ、あなたに学ばせなければ、という話なら、私の方が先にある」


 佑はそのまま、動かなかった。


 源一郎が泣いた。声を抑えながら、肩を震わせて泣いた。六十を過ぎた技術者が、子供のように泣いた。

 佑は何も言わなかった。何かを言う言葉を持っていなかった。等価交換で解決できることではなく、慰めで消えることでもなかった。

 ただ、隣にいた。


 夜が来た頃、源一郎が顔を上げた。


「佑さんは」

「はい」


「こういうことが、今まで何度もありましたか」

「はい」


「その度に、どうしていましたか」


 佑は少し考えた。


「……隣にいる人間を、探しました」


 源一郎は、それを聞いて黙った。

 やがて、茶を一口飲んだ。冷めていたが、飲んだ。


「ありがとうございます」

「等価交換では、ありません」

「わかっています」


 その夜、二人は長い間、工作船の中で過ごした。話すこともあったし、沈黙の時もあった。どちらが長かったかは、佑の帳簿には残っていない。


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