閑話「汽笛が鳴る 1800年」
第三部、東京駅にて開通式。
1800年・元旦。
東京から京都まで、純国産の最高速度140kmの高速鉄道が開通した。
ライルが設計し、日本人が建設した。日本人が運営する。
開通式の朝、ホームに人が集まった。大名も来た。官僚も来た。商人も来た。子供も来た。全員がプラットフォームの端に並んで、線路を見ていた。
ライルはホームの端にいた。設計図を持っていた。必要はなかった。持っていないと落ち着かなかった。
定刻の三秒前、ライルは懐中時計を見た。
定刻に、汽笛が鳴った。
蒸気機関車が動き出した。ゆっくりと、確実に動いた。煙が上がった。車輪が回った。
ホームの人間が歓声を上げた。
ライルは歓声を聞いていなかった。時計を見ていた。速度を計算していた。予定通りだった。誤差なし。
汽笛がもう一度鳴った。
機関車がホームを離れた。
同じ時刻、北米東海岸の幹線と西海岸の幹線を繋ぐ「大陸横断接続式」が行われていた。
通信で繋がれた式典で、東京とニューヨーク(織田家北米本部)が同時に汽笛を鳴らした。
ライルは東京の汽笛を聞いた。
通信機から、北米の汽笛も届いた。
二つの汽笛が、時差を越えて重なった。
その夜、佑は帳簿に書いた。
【1800年・元旦・記録】
東京〜京都間、純国産高速鉄道開通。
定刻通り。
ライルが時計を見ながら泣いていた。
本人は泣いていないと言った。
備考:泣いていた。




