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閑話「信幸とライル」
時期:1789年
「鉄道を増やしたい」と第九代織田家当主信幸は言った。
「ご予算は?」ライルが聞いた。
「ない」
「却下」
「何とかならないか」
「なりません」
「当代の織田家当主だぞ」
「それと鉄道の予算に何の関係がありますか」
信幸が少し黙った。「……ライル殿は、権威に屈しないですね」
「鉄道は感情で作るものではありません。輸送需要が先にあって、その需要に応じて路線を設計します。需要なき路線は廃線になるだけです」
「では需要を作れば良い」と信幸は言った。
ライルは少し止まった。
「……どういう意味ですか」
「今は需要がなくても、この先百年で何が増えるかを予測して、先に作ってしまう。信長公が領地を広げる前に城を作ったように」
ライルは三秒考えた。時刻表の暗記に使う記憶回路が、別の用途で動き始めた。
「……その考え方は、鉄道計画論として正しいです。採用します」
「では予算の話を」
「別枠です。ロマンと実需の話を混ぜないでください」
信幸は少し笑った。「ライル殿と話すのは、佑殿と話すより疲れます」
「なぜですか」
「佑殿は最終的に和食で機嫌が直るので」




