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神の如き宇宙人は何もしない~ただ売るだけ~  作者: 苺一会
第三部「外圧と葛藤・日本が試される」第七章「豪州の台頭・佑の葛藤」

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第30話 日本人が佑を超えた瞬間

 一八三〇年代。


 大学統合校の工学部に、若い研究者がいた。

 田中源一郎。二十四歳。農民の子で、試験一本で入学した。父親が「佑の農業指導で初めて米が安定した農村」の出身だった。


 ある朝、彼が工作船に来た。

「潜水艦の耐圧殻についてお聞きしたいのですが」

 佑は少し驚いた。「どうぞ」


「私の計算では、鋼材の配合をこう変えれば深度が一・五倍になります」

 田中が紙を差し出した。数式が並んでいる。佑は受け取って、見た。


 一行ずつ確認した。

 計算は正しかった。というより——


「……この係数の導き方、どこで」

「自分で考えました。先生が以前、材料力学の講義で出した問題から発展させました」


 佑は数式をもう一度見た。

 正しい。完全に正しい。というより、佑が持っているデータより精度が高い部分がある。


「溶接の技術が必要になります」と佑は言った。「売れます」

「ありがとうございます!計算の方は合ってましたか?」


 佑は少し間を置いた。

「……合ってます。完璧に」

「やった!」


 田中が部屋を出て行った。


 フィリアが横に来た。「それは良いことですよね?」

「……そうですね」と佑は言った。「最高に良いことです」


 その夜の帳簿。



【1834年・記録】

 田中源一郎、来訪。

 耐圧殻の計算を持ち込んだ。


 私より精度が高かった。


 農民の子が、農民の土地で育って、

 試験一本で大学に入り、私より良い計算をした。


 二百五十年。

 長かった、だが。

 私は何もしていない。

 売っただけだ。

 教えただけだ。

 選んだのは彼らだ。

 考えたのも彼らだ。


 ここまで来たのは日本人自身だ。


 今夜は一人で、旨いものでも食べよう。


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