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神の如き宇宙人は何もしない~ただ売るだけ~  作者: 苺一会
第六章「日本が育ち始める エルフが同僚になる」

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閑話「国産機械が動いた日」

 知らせを聞いたのは、フィリアからだった。


「佑、見に行った方がいい」

 それだけ言った。フィリアが「見に行った方がいい」と言うことは、滅多にない。


 佑が向かったのは、大阪の外れにある、小さな工場だった。

 工場の前に、人が集まっていた。職人たちだ。皆、同じ方向を見ていた。佑は人垣の後ろに立った。耳が長いので、後ろからでも中が見えた。


 工場の中に、蒸気機関があった。

 佑が二十年前に売ったものと、よく似ていた。しかし、違った。細部が違う。継手の形が変わっている。圧力弁の位置が変わっている。配管の取り回しが、佑の設計よりも合理的だった。


 これは、コピーではなかった。

 佑の機械を分解して、理解して、作り直したものだった。


 レバーが引かれた。

 蒸気が入った。音がした。ゆっくりと、ピストンが動いた。

 職人たちが、息をのんだ。

 動いた。


 佑が作ったものと同じように、いや、一部はより良く、機械が動いた。職人の手で、職人の知恵で、作られた機械が、動いた。

 職人たちが一斉に声を上げた。抱き合う者もいた。泣いている者もいた。


 佑は、声を上げなかった。

 拍手もしなかった。

 ただ、無言で見ていた。


 胸の中に、何かが満ちる感覚があった。値段のつかない何かが。

 これだ、と思った。


 売り続けた理由は、これだった。自分の技術が、自分の手から離れて、人間たちの手の中で生きている。もう佑がいなくても、この機械は動く。この知恵は、人間の中に移った。


 等価交換は、ここで完成した。

 黄金ではなく。土地ではなく。

 人間が自分で動かした機械が、その代金だった。


 佑は人垣を離れた。誰にも気づかれなかった。


 帳簿に、その日の日付だけを書いた。金額は書かなかった。書く必要がなかった。


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