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神の如き宇宙人は何もしない~ただ売るだけ~  作者: 苺一会
第六章「日本が育ち始める エルフが同僚になる」

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閑話「仙吉の孫」

 仙吉の孫は祖父とは似ていなかった。背が高く、無口で、愛想がなかった。仙吉のような大声もなく、豆腐を押しつけてくることもなく、客が来れば黙って豆腐を出し、黙って代金を受け取った。


 佑が秋に訪ねると、孫は土間で豆腐を切っていた。

 佑は、そこで足が止まった。


 切り方が、仙吉と違った。包丁の角度も、手の位置も、違う。しかし、豆腐をまな板に置く直前の一瞬——右手でそっと支えながら、親指の付け根で柔らかさを確かめる、あの動き——それだけが、まったく同じだった。


 仙吉が三十年かけて身につけた、豆腐への触れ方。

 孫は、それを知らないまま持っていた。


 佑はしばらく動けなかった。


「何か」

 孫が振り返った。

「……いえ」


「豆腐ですか」

「はい」


 孫は黙って一丁切り、皿に乗せた。醤油も生姜も出なかった。「好きに食え」ということらしかった。

 佑は縁側に座って、豆腐を食べた。


 味は、違った。仙吉の豆腐とは違う。大豆の産地も、にがりの量も、少し変わっている。孫なりの豆腐だった。

 しかし、口に入れた時の感触が——あの柔らかさが——どこかに仙吉を残していた。


「おじいさんに教わりましたか?」

「あまり」


 孫は土間で片づけをしながら言った。


「見て覚えた」

「そうですか」


「うるさい爺だったから、言葉より見る方が早かった」


 佑は笑った。仙吉が聞いたら怒るような言葉だが、仙吉が聞いたら喜ぶような言葉でもあった。


 帰り際、孫が「また来い」と言った。


 仙吉と同じ言葉だった。声は全然違うのに、佑には同じ声に聞こえた。

 人間はこうして継承するのか、と思った。

 言葉ではなく、手の動きで。声ではなく、豆腐の柔らかさで。


 それが何かを——仙吉が佑に押しつけた「値段のつかないもの」と同じ何かを——孫もまた、誰かに押しつけるのだろう。


 等価交換の外で、代々受け継がれていくものが、ある。


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