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閑話「瀬川結 蕨餅攻略」
時期:第一部(1590年代)
結が菓子箱を開けたのは、銅の買い取り交渉が膠着した時だった。
中には蕨餅が入っていた。出来立てで、きな粉がたっぷりかかっていた。黒蜜がとろりとかかっていた。
「お裾分けですから、お代は結構です。タダですよ」
「タダ……」
佑の帳簿が、頭の中で止まった。タダ。値段がない。等価交換の歯車が逆回転を始めた。和食。目の前にある。しかしタダで受け取ったら何を返せばいい。黄金か。しかし結は黄金を要らないと言っている。ではどう値段をつければ。
佑の思考が三十秒、完全に止まった。
「……今回の精錬差益の端数、黄金三枚分、負けます」
「ありがとうございます」と結は言った。菓子箱を佑の前に差し出した。「毎度あり」
佑は蕨餅を食べた。
旨かった。
工作船に戻ってから帳簿を開いた。
備考:蕨餅に負けた。
三枚分。
次は負けない。
旨かった。
【瀬川結の手帳・極秘メモより】
『城佑攻略法:手作りの和食を「タダ」で差し出すと、価格設定機能が一時停止する。次回は桜餅で試す』




