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神の如き宇宙人は何もしない~ただ売るだけ~  作者: 苺一会
第二部「エルフが暴走し、日本が育つ」 第五章「北米 最初の街と、信長の死」

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閑話「味噌戦争、そして日本初の駅弁誕生」

 時期:第二部初期(1620年代)


 フィリアが真顔で言った。

「味噌は文明です」

「違います」

 ライルも真顔だった。


「文明を支えるのは輸送です」


「味噌です」

「鉄道です」


「味噌です」

「鉄道です」


 佑は頭を抱えた。

「何を争ってるんですか」


「味噌です」

「鉄道です」


「聞いた私が悪かった」


 その週、フィリアは京都で味噌の研究を加速させた。大量の味噌を全国に届けるルートを考えていた。ライルは大阪で物流図面を描き続けた。鉄道があれば食料を速く運べると計算していた。


 二人は一切話さなかった。

 そして半年後、ライルが沈黙を破った。


「フィリア」

「何ですか」


「話があります」

「……聞きます」


「味噌を大量輸送するには鉄道が必要です」とライルは言った。「乗客より先に、食料を運ぶ鉄道が必要です。その最初の積み荷として、あなたの味噌を使ってもいいですか」


 フィリアは少し考えた。


「鉄道を維持するには、長距離移動する人間の腹が満たせる食事が要ります。保存が利いて、一つで腹が膨れる食べ物が」

「……味噌漬けにした食べ物は、保存が利きます」

「鉄道の車内で食べやすいものを考えてみます」


 佑は後から聞いた。二人が何かを共同で開発していることを。

 

 その年の秋、日本初の「駅弁」が生まれた。

 飯を木の容器に詰め、味噌漬けの豚肉を野菜と一緒に炒めた物を敷いた、お弁当だった。


 ライルが「鉄道の利用者が増えます」と言い、フィリアが「発酵食品が全国に広まります」と言い、二人がそれぞれの動機のまま同じものを作り上げた。

 歴史家は後に、日本の駅弁文化の起源を「詳細不明」と記録する。


 本当の起源は、調味料の冷戦だった。


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