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神に等しき宇宙人は何もしない~ただ売るだけ~  作者: 苺一会
第一部「とりあえず食い扶持を稼ぎます」 第一章「神様のうっかりと、なんでやねん」

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第5話 安土城 翌朝

 信長に案内されたのは、天守でも広間でもなく、物置に近い小さな部屋だった。


「改めまして、城佑と申します」

「織田上総介信長である」


「最初から天守に通さないんですね」と佑は言った。

「当たり前だ」


 信長の目が変わっていた。昨夜の、計算する目が、今朝は別の質感になっていた。研究する目、だと佑は思った。


「まず聞く。何故昨夜の連中を殺さなかった?」

「彼らにも家族がいます。そして彼らとその家族は皆、貴方の領民です。殺さず無力化した方が恩が売れるでしょ?」


「ふっ、そう言う事にしておこう」

 信長が少し目を細めた。


「お主、わしをどう見ている」

「強い権力者の一人です」


「神とは思わないか」

「思いません。私の方が技術的に上ですが、神ではない。あなたも人間です」


「人間と思うか」

「思います」


 その沈黙が、少し長かった。


 佑(内心):試されている。何を? まだ分からない。


「取引の話をしろ」




「世界の地図があります」


 佑は懐から紙を出した。アジア全域と北米大陸の西岸だけを切り取ったもの。


「一部だけですか」

「全部は今日は渡しません」


 信長が少し眉を動かした。「なぜ」

「残りは次の商品です」


 間があった。それから信長が、わずかに笑った。


「……続けろ」


 佑は地図を説明した。日本の東に大きな大陸がある。まだ大きな国になっていない。日本人が入れる余地がある。


「渡航に今の技術では難しい。私が輸送します」

「値段は」


「銅を買わせてください。それが最初の取引です。精錬すると金と銀が取れます。私の技術なら銅の中に混じっているものを分離できます。あなたには銅の買取値を払います。私は精錬差益で稼ぎます、貴方は金銀の海外流出が止まってお得です。」


 信長が地図から目を上げた。


「それだけか、今日話したいのは」

「あと一つ」

「言え」


「命の恩として──日本の教育システムを変えることを認めてください」




 部屋が静かになった。


「……教育」

「はい。幼い頃から大人になるまでの全ての段階を変えます。農民の子も、商人の子も、試験の成績だけで進める場所を作ります」


「武士は怒るな」

「最初は怒ります」


「最初は?」

「武士の子が農民の子に試験で負ける場面を繰り返し見れば、大体の人間は身分より能力を信じます。時間がかかりますが」


「……二百年後の為に、と言うのか」

「はい。二百年後に日本が世界で生き残れるかどうかは、今の子供たちの頭で決まります。私がずっと守ることはしません。自分で考えられる人間を日本中に育てる必要があります」


「なぜ守らない」

「外の者が守り続けたら、腐ります。人間は」


 また沈黙。


「……正しいな」と信長は言った。「気に入らないが、正しい」


「日の本全部で急にやると反発も大きいでしょうから先ずは尾張から、少しずつ」

「まあ尾張で結果が出れば他所の大名も真似るだろう」


 それから──信長が初めて、本当の意味での質問をした。


「長耳。お主は何が欲しい」


 佑は少し間を置いた。

「和食が食いたいです」

「……」


「十年間、異世界にいました。和食がありませんでした。もう我慢できません。銅の精錬が軌道に乗ったら、食材を黄金で買わせてください。日本のものを。農家から直接、私が値段をつけて」


 信長が佑を見た。長い沈黙の後、今度ははっきりと笑った。


「……そんなことのために、一万三千の軍勢を止めたのか」

「食い扶持のためです」


「同じことだ」


 信長は地図を机に置いた。


「条件を承ける」




 帰り際に、信長は一つだけ付け加えた。


「世界地図の残りは、いつ見せる」

「あなたが面白いことをしてくれたら」


「……条件か」

「商売です」


 信長は少し考えてから、廊下の外に声をかけた。


「結」


 扉が開いて、女性が一人入ってきた。


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