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神の如き宇宙人は何もしない~ただ売るだけ~  作者: 苺一会
第二部「エルフが暴走し、日本が育つ」 第五章「北米 最初の街と、信長の死」

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閑話「変わりましたか?」

 結の髪に白いものが混じりはじめた頃、佑は何も言わなかった。


 言う必要がないと思っていた。人間が年をとるのは当然のことで、佑がそれに言及することは、余計なお世話だと判断していた。結もそれについて話さなかった。二人の間で、老いは話題にならない不文律のようなものになっていた。


 ある秋の夕方、結が工作船の窓際に立って、外を見ていた。


 佑は帳簿を閉じて、黙って待った。結が何かを言おうとしている時、いつもこうやって待つ。


「佑さん」

「はい」


「私は変わりましたか」


 佑は答えた。すぐに答えた。

「はい」


 結が振り返った。何かを期待していたような、あるいは別の答えを半分望んでいたような、複雑な顔をしていた。

「……そうですか」


「最初に会った時、あなたは私の帳簿の誤字を三秒で見つけました。今は、誤字があってもしばらく見守ります」


 結が少し笑った。

「それは、変わったというより、あなたに合わせているだけです」


「最初に会った時、あなたは私に値段の話しかしませんでした。今は、値段のつかない話をよく持ってきます」

「……」


「最初に会った時、あなたは蕨餅を武器として使っていました。今は、ただ持ってきます」


 結は、窓の外を向いた。

「変わったのは、私だけですか」


 佑は少しだけ考えた。

「変わっていない方も、いると思います」


「どちらが変わりましたか」

「……判断が難しいです」


 結がまた笑った。今度は、静かな笑いだった。

「正直に言ってくれてよかった」


「『変わっていない』と言えばよかったですか」

「いいえ」


 結は窓の外に目を向けたまま言った。


「私が変わったことに、あなたが気づいていることが——嬉しいんです。気づいていない方が、楽かもしれないけれど」


 佑は、それに対する帳簿上の返答を持っていなかった。

 だから、正直に言った。


「私は、あなたの全部の変化を覚えています。最初の誤字の指摘から、今日の白髪の数まで」


 結が振り返った。

「白髪の数まで?」


「数えていました。等価交換の記録として」

「嘘をついていますね」


「……少し」


 結は長い間、笑っていた。


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