表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の如き宇宙人は何もしない~ただ売るだけ~  作者: 苺一会
第二部「エルフが暴走し、日本が育つ」 第五章「北米 最初の街と、信長の死」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
42/92

閑話「信長、八十代の対話」

 安土城が改修されたのは、一六二〇年代のことだった。


 佑が資材を提供して、ドワリンが地下の基礎を補強して、日本人の大工が外観を作った。天守は高くなって、内部の構造が整理された。信長が「住みやすくしろ」と言ったそうで、ドワリンが喜んで水道と排水を引いた。


 その改修後の城に、佑が久しぶりに呼ばれた。

 信長は八十代になっていた。


 顔の皺が増え、髪はもう白い。しかし目は変わっていない。あの、全部を計算しているような、しかし計算だけではない、人間としての深さを持つ目だった。


「長耳、お主は変わらんな」と信長は言った。


 佑は答える前に、少し止まった。

 変わらない。確かにそうだ。五百年生きる宇宙エルフとして作られた体は、四十年が過ぎても何も変わっていない。白髪も、皺も、体の衰えも、何もない。


「変わりません」と佑は言った。

「羨ましいか、と聞かれたことはあるか」


「……ないですね」

「そうか。わしが最初に聞くのか」と信長は言った。少し面白そうに。


 佑は少し考えた、羨ましいか。五百年生きることが。


「……どちらとも言えません」

「正直だな」と信長は笑った。短く、しかし本当に可笑しそうに。


 二人は茶を飲んだ。改修後の城には、以前よりいい茶道具が入っていた。茶の香りが部屋に広がった。


「長耳」と信長は言った。「わしが死んだ後のことを、少し考え始めた」

「……そうですか」


「信忠は真面目に働いておる。孫の信房も悪くない」信長は茶碗を置いた。「ただ、お主のような相手に慣れていない。最初はやり難いかもしれん」

「慣れます」と佑は言った。「時間がかかるだけです」


「時間がかかる間に、損をさせるなよ」

「私が損をさせるのですか、日本側が損をするのですか」


 信長が少し目を細めた。「……どちらでも困る、という意味だ」

「分かりました」


 信長はしばらく窓の外を見た。琵琶湖が夕陽を受けて赤くなっていた。


「日の本を頼む」と信長は言った。


 佑は少し間を置いた。

「それは──難しいです」


 信長が振り返った。


「日本を守るのは日本人であるべきだと思っています」と佑は言った。「外の者が守り続けたら、腐ります。何があっても自分たちで立てる人間にならないと、百年後、二百年後三百年後に困ります」


「……では何もしないと」

「情報と物は、これからも売ります」


「それだけか」

「見守りはしますが、それだけです。でも」


 信長が待った。


「……それだけで、充分だと思っています」と佑は言った。「あとは日本人が自分でやります。できます」


 信長はしばらく佑を見ていた。

「……正しいな」と信長は最後に言った。「気に入らないが、正しい」


 それから信長は少し笑って、「今日も飯を食っていけ」と言った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ