閑話「北米先住民の記録 1608年」
第二部序、チェロキー族の口伝記録より
長老が語った話を、孫が書き留めた。
祖父の祖父の時代の話だという。
森の向こうから、黒い髪の民が来た。
我々は最初、警戒した。白い肌の民がやって来た時のことを知っていたからだ。白い肌の民は土地を奪った。動物を奪った。水を奪った。我々の言葉を奪おうとした。
黒い髪の民は違った。
最初に来た者たちは、手に武器を持っていなかった。持っていたのは、奇妙な道具と、見たことのない種だった。
彼らは我々の土地に来て、境界線を引かなかった。我々の川に来て、魚を取り尽くさなかった。我々の森に来て、木を全部切らなかった。
代わりに、種をくれた。
丸い、土の中で育つ作物だった。後に我々はそれをジャガイモと呼ぶことを覚えた。育てやすかった。寒い冬でも育った。飢える冬が減った。
彼らの中に、耳の長い者たちがいた。男でも女でも分からない者たちだった。老いなかった。何十年経っても同じ顔だった。
長老は彼らを「森の精霊」と呼んだ。
ただし、精霊にしては変だった。
土の匂いを熱心に嗅ぐ者がいた。我々の漁の方法を熱心に記録する者がいた。我々の薬草の使い方を熱心に聞く者がいた。
奪わなかった。ただ、知りたがった。
ある年、長老が耳の長い者の一人に聞いた。
「あなた方は何のためにここに来たのか」
耳の長い者は少し考えてから答えた。
「土を見に来ました」
長老は意味が分からなかった。
しかし翌年、その者が持ってきた種が、我々の土地でよく育った。
長老は理解した。土を見ていたのは、何が育つかを知るためだったのだ。
黒い髪の民と耳の長い者たちは、その後も来た。来るたびに何かをくれた。奪ったことは一度もなかった。
我々は彼らを「種をくれる民」と呼んだ。
注記:この口伝は、チェロキー族の記録保存者により1891年に書き留められたものである。




