第22話 スペイン艦隊との遭遇・佑は見ているだけ
一六三〇年代。
スペインの艦隊が北米東岸に現れたのは、秋の終わりだった。
佑は工作船の観測室から、それを見ていた。センサーが映し出す映像の中に、大きな帆船が十二隻、並んで来ている。旗はスペイン国旗だった。
「どうしますか」とライルが聞いた。
「何もしません」
「戦闘になります」
「日本人が買った兵器で戦います。私は売った側なので」
フィリアが横から言った。「介入しますか」
「しません」
佑は窓から離れなかった。
海の上で、戦闘が始まった。
スペイン側の提督、ガスパル・デ・レオンは、対峙した瞬間に何かを感じた。
相手の船が、おかしい。形が違う。帆の角度が違う。砲門の位置が——
「……あれは我々の船ではない」
副官が言った。「日本の船です。しかし」
「しかし、あの砲の精度は」
「見たことがありません」
レオンは少し目を閉じた。
「……あの鉄の船——あれはもう我々の時代ではない」
「提督、まだ戦えます」
「戦えるかどうかの話ではない」とレオンは静かに言った。「勝てるかどうかの話だ」
戦闘は四時間で終わった。
スペイン艦隊は撤退した。沈んだ船はない。被害はスペイン側に少ししか出ていない。ただ、引いた。
工作船の観測室で、佑はその全部を見ていた。
「……よかったですね」とフィリアが言った。
「何がですか」
「被害が少なくて」
「……そうですね」
備考:スペイン艦隊が来た。
日本人が買った兵器で撃退した。
私は何もしなかった。
死者は双方合わせて五十名。
多いのか少ないのか、分からない。
ただし私には関係ない。
そのはずだ。




