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神の如き宇宙人は何もしない~ただ売るだけ~  作者: 苺一会
第四章「信長との関係の確立 世界地図の説明」

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閑話「心配しましたか?」

 結が過労で倒れたのは、三月の末だった。


 知らせを受けた時、佑はちょうど帳簿の整理をしていた。「所長が倒れました」という言葉を聞いて、帳簿を閉じた。閉じてから、何をすべきかを三秒考えた。医療ポッドを使えば一晩で治る。しかしそれは商売ではない。


 結果として、佑は工作船の医療室から氷嚢を一つ持って、結の屋敷に向かった。


 結は布団の中で、苦しそうに眉を寄せていた。熱は高かった。周りの者が「医者を呼びました」「薬を用意します」と慌ただしくしている中、佑はただ椅子を引いて、布団の横に座った。


「……佑さん」


 結が目を開けた。


「来てしまいました」

「来てしまった、じゃないです。ちゃんと来てください」


 佑は氷嚢を結の額に置いた。


「医療ポッドを使えばよかったのに」

「それは商売ではありません」

「じゃあ、なんで来たんですか」


 佑は少し考えた。帳簿上の理由が、見つからなかった。


「……来なければならない気がしました」


 結は笑おうとして、顔をしかめた。熱のせいで、笑うのも痛いらしかった。


 夜中、医者が帰り、屋敷の者たちも休んだ。それでも佑は帰らなかった。帰る理由が見つからなかった。氷嚢が温まるたびに取り替えて、水を飲ませた。必要だから、という理由ではなかった。ただそこにいた。


 夜明け前、結が目を覚ました。


 熱が少し下がっていた。結は天井を見て、横を見て、まだ佑がいることに気づいた。


「……心配しました?」


 佑は一瞬だけ間を置いた。

「少し」


 結は、今度こそちゃんと笑った。


「『少し』って言える佑さんが、私は好きです」

「どういう意味ですか」


「前は『心配という感情の等価交換を——』って言いかけたじゃないですか」


 佑はそれを覚えていた。三年前のことだ。

「……進歩しましたか」

「しました」


 結は目を閉じた。


「佑さん、帰っていいですよ。回復しますから」

「もう少しいます」


「等価交換は?」

「……対処法、不明です」


 結は何も言わなかった。しばらくして、寝息が聞こえた。


 佑は、夜明けまでそこにいた。帳簿に書く言葉が、見つからないままで。


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