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神の如き宇宙人は何もしない~ただ売るだけ~  作者: 苺一会
第四章「信長との関係の確立 世界地図の説明」

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閑話「天下より面白いものを見た」

 信長は、怖がらなかった。


 それが佑には少し意外だった。工作船が雲を突き抜ける時、ほとんどの人間は顔色を変える。ある者は吐き、ある者は泣いた。信長は窓に張りついて、「もっと速く飛べないのか」と言った。


 大気圏の外に出た時、船内が静かになった。

 信長が黙ったからだ。


 窓の向こうに、青い球が浮かんでいた。白い雲の渦が、ゆっくりと動いている。縁は薄い光の膜で包まれていて、その向こうは何もない黒だ。星が、音もなく輝いている。

 佑は何も言わなかった。ここに連れてきた時、だいたいの人間はしばらく言葉を失う。それを待つのが、佑の習慣だった。


 信長は十分間、黙っていた。

 これほど長く黙った人間を、佑は見たことがなかった。


「……わしは」

 信長が、ようやく口を開いた。声が、いつもと違った。低く、静かで、奥に何か重いものを含んでいた。


「あの小さな場所で、ずっと騒いでいたのか」

 それだけ言って、また黙った。


 佑は答えなかった。答える必要がないと思った。


 地球が、ゆっくりと窓の中を流れていく。日本列島は、あの光の球の表面に張りついた、小さな形だ。信長が一生をかけて奪い合い、守り、血を流した土地が、この距離からはひとつの色に溶けている。


 信長が、静かに笑った。

 いつもの豪快な笑いではなかった。何かを受け入れた時の、小さな笑いだった。


「天下より面白いものを見た」

 それだけ言った。


 帰りの船の中で、信長はずっと窓の外を見ていた。地球が遠ざかっていくのを、最後まで目で追っていた。


 佑が「いかがでしたか」と聞いた。

「小さかったな」と信長は言った。


「天下が、ですか」

「いや」


 信長は少しだけ間を置いた。


「わしが、だ」


 それから、信長は一度も宇宙の話をしなかった。誰にも話さなかった。ただ、たまに夜空を見上げる時間が、少し長くなった。佑はそれに気づいていたが、何も言わなかった。


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