第17話 大名会議 世界地図の全体説明
大名会議は、安土城で開かれた。信長が声をかけた相手は八家だった。
佑は広間の正面に立って、大きな地図を広げた。
大名たちが地図を見た。全員、何も言わなかった。一分ほど沈黙が続いてから、佑は口を開いた。
「世界の全体図です。現在判明している限り、これが正確な形です」
最初に口を開いたのは、家康だった。地図を見た瞬間からすでにメモを取り始めていた。
「北米の西岸に港を作るなら、どこが適していますか」
佑は少し驚いた。「いくつか候補があります。海図を売ります」
「値段は」
「後ほど」
家康が頷いて、またメモを取った。
佑(内心):この人間だけ、私の話を全部値段に変換して聞いている。怖い。
伊達政宗が地図を指で叩いた。
「アラスカからグリーンランドまでか。欧州に近いな」
「情報収集の拠点として最適です。欧州との非公式な交渉チャンネルを持てます」
「面白い。もらった」
島津義久は腕を組んで黙っていた。
「兵器を買いませんか」
「要らん。自分たちで作る」
「……鉄の精錬技術が必要では?」
「売れ」
「兵器はどうですか」
「それは作る」
佑(内心):頑固だ。
大友宗麟が静かな声で言った。
「あなたは神ですか」
「違います」
「神の遣いですか」
「……微妙なところです」
宗麟が少し首を傾けた。「微妙、とは」
「神様に作っていただいた経緯はあります。ただ私は商人です」
「神に作られた商人」
「はい」
宗麟はしばらく佑を見てから、「……では、お話を聞かせてください」と言った。疑うでも信じるでもなく、ただ誠実に。
景勝は東シベリアの説明を黙って聞いてから、一つだけ聞いた。
「人が住めるのか、シベリアに」
「住めます。ただ寒い」
「どのくらい寒い」
「人が死ぬくらい寒い」
景勝は長い沈黙の後、「……防寒具を売れ」と言った。
「私は普段宇宙に浮かぶ工作船にいます、連絡が取れないと何かと不便でしょう。各大名家や私とだけ連絡ができる通信機を1つ、カメラを1つとフィルム3箱を無料で渡しましょう。フィルムが欲しくなったら有料で渡します。」
通信機だけは、200年間は明治時代レベルまでの技術に限定するという制限を外れてしまう。だが御用聞きの時だけしか連絡出来ないのは余りにも不便だろう。カメラは明治時代の海外のフィルムカメラだ。
「ほぅ用件がある時は、連絡しても良いのだな?」
「その時は遠慮なく」
「このカメラと言うのは何だ?」
「フィルムを入れて上のボタンを押せば風景や人をそのまま切り取ってフィルムに写してくれます、全部使い切ってから私に渡せば後日紙に印刷して有料で渡します」
「何の為にこのカメラとやらを渡すのだ?」
「どうしても皆さんの笑顔を残しておきたいのです、後世の為に。これは私の我儘です。」
「それと皆さんの入植先に都市を1~4箇所こちらで作らせて頂きます」
「と言うのも寒い場所は普通の家屋では本当に厳しいので、家の中はちゃんと暖かい様にしなければ無駄に苦労する事になるので。」
「それはシベリアに入植する上杉家にとって嬉しいが一体幾らで売るんだ?」
「これは絶対に必要な事なので安くお売りします」
「そうか」
「ありがたい」
会議が終わって、信長だけが残った。
「お主、この計画が上手くいかなかった場合はどうする」
「仲介はしません。見ているだけです。記録は取ります。何かが失敗したら、なぜ失敗したかを分析して、次の助言の材料にします。売ります」
「……冷たい男だな」
「商人なので」
「商人はもっと愛想が良い」
「ただただ必死で、愛想まで手が回りません」
信長が笑った。短く、しかし本当に可笑しそうに。
「まあ良い。今日は飯を食っていけ」




