閑話「信長、エルフたちを評する 1590年」
第一部、1590年安土城にて信長と側近の会話
信長が側近の森蘭丸に言ったのは、何でもない夜の話だった。
「蘭丸、あの六人をどう思う」
「エルフの方々ですか?」
「そうだ」
蘭丸が少し考えた。
「フィリア殿は、先日また許可なく京の味噌蔵に入ったそうです」
「知っている」
「ライル殿は東海道を無断で測量しています」
「知っている」
「ドワリン殿は堺の港に夜中こっそり排水溝を作っていました」
「知っている」
「アイリス殿は長宗我部の船を勝手に改造しました」
「長宗我部から苦情が来た」
「モリス殿は北条の農地に無許可で実験用の畑を作っています」
「北条から苦情が来た」
「シャリア殿は……特に問題を起こしていません」
「あれが一番怖い」と信長は言った。「静かに動く者が一番広く動く」
蘭丸が続けた。
「総じて申し上げると、全員が独自に動いており、互いに相談していません。にもかかわらず、結果として噛み合っています」
「そうだ」と信長は言った。「儂が一番不思議なのはそこだ」
蘭丸が少し間を置いた。
「信長様は、あの方々を恐ろしいとは思いませんか」
「思わん」と信長は即答した。「便利だが制御不能だとは思う」
「違いが分かりません」
「制御できない者を恐れても意味がない」と信長は言った。「使えるかどうかだけ考えればいい」
「では、使えますか」
「使えない」と信長は言った。「ただし、向こうが勝手に動いた結果を、こちらが使うことはできる」
蘭丸が黙った。
「それが佑との等価交換だ」と信長は続けた。「儂は金を払う。向こうは技術を売る。エルフどもは勝手に動く。その結果を儂が使う。誰も誰かを支配していない」
「……それは、主従ではありませんね」
「そうだ」と信長は言った。「それが面白い」




