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神の如き宇宙人は何もしない~ただ売るだけ~  作者: 苺一会
第三章「商売が軌道に乗り始める・各地でエルフが暴走する」

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第15話 モリスと農村 最初の成果

 モリスが農村から帰ってきたのは、月が変わった頃だった。


 土まみれだった。いつも土まみれではあるが、今日は特に、膝から下が完全に田んぼの色になっていた。それでも顔は満足そうだった。農業オタクのエルフが話が止まらなくなる直前の顔だ。


「佑。尾張の土壌について報告します」


「どうぞ」


 モリスが話し始めた。


「木曽川の堆積土で有機物が豊富。ただし排水が課題で、梅雨の時期に根腐れが起きやすい。品種を変えて、施肥のタイミングを調整すれば、今より収量が一・五倍になる」


「モリス」


「はい」


「農業指導料として、信長殿から米を五十石受け取りました」


 モリスが止まった。


「……その米。食べていいですか」


「それが目的です」


「……この土で育てた米が」モリスは少し息を吸った。「食べられる」


「今夜炊きます」


 モリスが佑を見た。農業の話をしている時と少し違う目だった。もっと単純な、ただ嬉しい、という目だった。


「……美味しいといいです」


「美味しいと思います。あなたが指導した土で育てたんですから」




 その夜、工作船の食堂に全員が集まった。


 百人のエルフが一度に集まることは、そうそうない。しかしその夜は、米の匂いがコロニー中に広がって、気づいたら全員が食堂にいた。


 白い米が炊き上がった。


 モリスがそれを一口食べて、少し目を見開いた。何も言わなかった。ただ、また食べた。


 フィリアが「美味しい」と言った。


 ライルが「次はどの路線の測量に行こうか」と言って、全員に無視された。


 ドワリンが「食堂の排水が少し──」と言いかけて、全員に睨まれて黙った。


 佑は自分の茶碗を見た。


 白い米だった。尾張の土で育てて、モリスが指導した農村で収穫されて、信長が対価として払ってくれた米だった。


「……旨いですね」


 誰かが言った。佑自身が言ったのかもしれない。


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